│逃げ場のない飛行機で会ったのは感じのいいテロリスト

最近は幽霊や怪奇現象の恐怖を描く作品ばかりを観ていたのですが、久しぶりに人が怖い、いわゆるサイコスリラージャンルの作品で面白いものを見つけたのでご紹介いたします！

『パニック・フライト』は2005年にアメリカで制作されたもので、飛行機の中で巻き起こる脅迫事件をテーマにした内容となっています。

主人公のリサはホテルのフロントで働くキビキビとした女性。見たところフロント業務をかなりやり慣れているようで、要人からも「彼女がいうなら間違いない」と厚い信頼を得ているスーパーウーマンです。今日は祖母が亡くなったため仕事を休み葬儀に出た後、飛行機に乗って帰る予定です。夜には戻る予定でしたが飛行機が遅れてしまい、最終便（レッドアイ）に乗ることになってしまうのでした。原題になっているこの「レッドアイ」は深夜フライトのため寝不足になり、目が充血して赤くなることから英語圏では最終便のことをレッドアイと呼んでいるのだそうです。時差や機内の乾燥もあって目が赤くなりそうですよね……面白い言い換えです。

さて乗る飛行機が遅延して航空会社のグランドスタッフがバタバタの中、リサは乗客の列に並んで待っていると「早く飛行機に乗せてくれ！早く帰りたいんだ！」と駄々をこねる男性が1人。この忙しい状況でグランドスタッフの女性に詰め寄っています。みんなも黙って並んで待っているのにそんなこと言っても意味ないじゃないか…と飽きれてしまいそうなところを、リサは「その女性は悪くないんだからそんなこと言わないで。」とピシャリ。自身がホテルスタッフをしているためこうした苦情の対応には敏感になってしまうのでしょう、周りの人は知らんふりをしている中で立ち向かいます。

「君には言ってないんだから黙ってろ。」と男性が逆ギレしてくると、リサの後ろに並んでいた男性が庇ってくれます。なんとかその場がおさまったので、リサはこっそりありがとうとお礼を伝えます。すると「そんなことはいいんだけど、あそこのバーで一杯一緒にどうですか？」とストレートにお誘いを受けます。さすがにそんな急に……と考えたのか一度は断るリサでしたが、バーで1人佇む彼の姿を見かけて声をかけることに。フライトまでの少しの間、楽しく会話をして別れを告げるのでした。

このリサが飛行機に乗り込むまでの冒頭15分くらいのシーンに登場する人物たちがその先ずっと出てくるので注目です。例えば列でリサの前に並んでいて、リサが読んでいる本をあげたマダムはその後も「今１章を読んだわ〜」と機内ですれ違っても報告してきたりしておちゃめです。他には家族旅行なのか兄弟で飛行機に乗っていてずっと喧嘩をしている男の子2人。そして小さな女の子が1人で飛行機に乗る姿も登場していました。

こうした登場人物たちが次々と乗って飛行機は無事離陸。リサはなんと先ほどのジャクソンと名乗る男性が隣の席に座っていてびっくり！バーでお別れしたはずがお話続行です。飛行機が苦手なリサは乱気流で揺れるのに耐えられず目を閉じて苦しい顔をしていましたが、優しく気を紛らわせるような話題を振ってもらいなんとか耐えていました。ジャクソンは他の乗客の荷物を持ち上げる手伝いもしていたし、なんていい人なんだろう……そう思っていましたが話しているうちに雲行きが怪しくなってきます。「僕がこの飛行機に乗っている理由は君なんだよ。」口説き文句としてはちょっと行き過ぎです。リサが？？となっていると「君はあのホテルに勤めているよね？」と続きます。

実はこの男、リサが務めるホテルに宿泊予定の要人の殺害を狙うテロ組織のメンバーだったのです！計画を予定通り遂行するためにリサを脅して泊まる部屋を変えるように迫ります。「飛行機から降りる前に部屋を変えさせなければお前の父親を殺す。」と周りに聞こえないように言われ戸惑うリサ。お客さまにそんなことはできない、でも父親が危ない。一体この事件はどうなってしまうのか、リサの判断はいかに！

│最後まで目が離せないスリラー展開

兼ねてから大好きと言っていたレイチェル・マクアダムスの主演作とあって、期待をしていましたが彼女のまた新たな一面を見ることができて大満足でした。車に乗ったまま家に突っ込んだり、棒を使ってフルスイングで犯人をぶん殴ったりとアクティブな面がちらほら。ホテルマンは常に異常事態を考えて行動できるようにしているからなのか？犯人への抵抗もバリエーションがたくさんで観ていて飽きません。

密室のシチュエーションだとどうしても単調になってしまったり、あまり動きがないように感じてしまいます。ましてや飛行機の中で隣の席というだけなので難しいところですが、冒頭シーンの登場人物たちを小出しにしたり、お手洗いに行ったりと少しの変化でハラハラさせる工夫がしてあり「どうなっちゃうの〜〜」と鑑賞者をドキドキさせっぱなし。リサの戦いっぷりも、同じレイチェルさんが主演した『ゲームナイト』のアニーの時のようなグダグダ感は一切ありません！とても綺麗なフォームで走る姿にまた惚れてしまいました、かっこいい。

本作はフレディでお馴染みの『エルム街の悪夢』や白い歪んだ顔のマスクで有名な『スクリーム』シリーズの生みの親であるウェス・クレイヴン監督が手がけています。挙げた２作品のような殺人鬼は出てきませんが、徐々に恐怖が明らかになって主人公に襲ってくるステップはホラー映画の定石を外しません。

さっきまでいい雰囲気の青年だったのに今見たらめちゃくちゃ怖い顔してるじゃん？？という変貌っぷりはジャクソン役のキリアン・マーフィーの演技力に驚きます。この監督さんとこの俳優さんで撮ったら、そりゃ殺人鬼は出てこないけど怖いよねという黄金セットでした。初めはハッピーなロマンティック映画顔負けの出会いをした2人が、全力疾走で追いかけっこしあって、殺し合う展開を想像できたでしょうか。

幽霊が怖い、殺人鬼が怖いという作品も魅力的ですが、こうした隣に座った人が実は…という作品は現実にもありそうでまた違った良さがあります。ホラーの中でもサイコ・スリラーがお好きな方におすすめの一作です！

パニック・フライト 

製作年：2005年
監督：ウェス・クレイブン
出演：レイチェル・マクアダムズ、キリアン・マーフィー、ブライアン・コックス　ほか

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作品詳細

【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます！ ぜひチェックしてください！

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