草食動物のはずなのに…ニュージーランドの広い牧場で起こるもこもこゾンビの大逆襲!映画『ブラックシープ』

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│ブラック・シープ

4000万頭…怒れる羊たち!

<あらすじ>
子供時代を実家の牧場で過ごしていたヘンリーだったが、とある事件や親の死が重なり羊恐怖症に陥ってしまい実家の牧場を離れていた。それから15年後、兄のアンガスから農場を売るため、呼び出され、里帰りをする。しかし、牧場ではなにやら羊を使って秘密の遺伝子研究がされていた。その秘密を暴こうと、環境活動家グラントは1頭の狂暴化した子羊を盗み出すのだが、子羊に噛まれたグラントもまた狂暴化してしまい…。

│もこもこゾンビに気をつけろ!

ゾンビ映画というと人間のゾンビがウロウロする中を生き延びる!というような作品を思い浮かべる人が多いですよね。今回はそんな常識を覆す、「ゾンビ羊」たちがメインのゾンビ映画をご紹介いたします!

『ブラックシープ』はニュージーランドが製作した作品です。やはりニュージーランド、人より羊の数が多い国なだけあってとんでもない羊ムービーを作り出しておりました。(なんと人口1人に対して7頭の羊がいる計算なのだとか……まさに羊大国です!)

主人公はヘンリーという男性で、小さい頃は羊牧場をしている実家でお手伝いをしながら過ごしていました。小さい頃の回想から始まり、牧羊犬と一緒に協力して羊を追いやって移動させる場面はなんともほっこりするシーンです。そしてヘンリーには歳の離れたアンガスという兄がいました。なにやらあんまり仲は良くなさそう……。

ある日、いつものようにお手伝いをしていた子どもの頃のヘンリーがダドリーという一番可愛がっていた羊がいなくなっていることに気が付きます。「ダドリー?どこ〜?」と探し回るヘンリー。納屋に入って行くとなんとダドリーと思しき肉がぶら下がり、兄はその皮をかぶって脅かしてきます。この兄ヤベェな…と鑑賞者の誰もが思ったところで、お手伝いさんから「子どもたち、あなたたちのお父さんが事故にあったわ」と報告がありました。

この兄の謎行動と、父の死の思い出が重なりヘンリーは大人になった今でも羊恐怖症になってしまい、羊を見るだけで全身が硬直してしまって動悸が止まらないようになってしまうのでした。そのため子どもの頃から牧場を離れて暮らしていたのですが、兄が牧場の土地を売りに出すとかで牧場へ向かうことになります。土地の契約を交わしている兄弟2人と時を同じくして、なにやら怪しい男女が牧場へ忍び込んでいました。

牧場に侵入していたヴィーガンで動物愛護団体のメンバーであるグラントとエクスペリエンスは、この牧場で違法な遺伝子操作実験がされていると聞きつけ証拠となる写真を撮りに来ていました。牧場の敷地内にある建物を草陰から覗いていると、なんと放射線廃棄物を違法に廃棄しようとする様子を発見!冷静に写真を撮るエクスペリエンスを他所に、感情的になったグラントは職員が離れた瞬間をついて廃棄物をヒョイっと取って「逃げるぞ〜」と暴走。絶対にバレないようにが目標だったのに、この行動で作戦は大失敗。グラントは奪ったものを持ちながら森の中へと走って逃げていき、途中までは一緒に行動できましたが彼の異常な行動について行くことができず、エクスペリエンスは分かれてしまいました。

追手を必死に振り切ろうと走っている時に、派手に転んでしまったグラントでしたがそのおかげで撒くことに成功。喜んだのも束の間、転んでしまったせいで奪ったカプセルのようなものは割れてしまい、中身がなくなってしまいました。弱った子羊のような生物が入っていたようですが、どこに行ったのでしょう?……なんとその羊、ゾンビのように攻撃的になってしまうウイルスに感染しているゾンビ羊でした!気づいた時にはもう遅い、グラントは首元を噛まれ叫んでいるカットで場面は変わってしまいます。

契約も終え、もう用事は住んだというヘンリーに対してお手伝いの婦人から「せっかく来たならあの丘を見てきたら?」と提案されます。あの丘、とはお父さんが事故で亡くなった場所。事故以来トラウマになってしまい行っていなかったヘンリーですが、大人になった今なら大丈夫かもしれない、とタッカーというずっと牧場仕事を一緒にやっていた幼馴染であり、現在の牧場責任者と一緒に向かいます。

丘へ向かう車に乗っていると、一頭の羊が道に立ち止まっています。クラクションを鳴らしても退かず、脅かしても退かず。不思議に思った2人は車から降りて近づいてみると鼻の辺りを怪我しているようです。

怪我は特に気にせず羊をどかそうとしていると、いきなりエクスペリエンスがやってきて銃を奪い「手を上げて!」と脅してきました。この時、人間たちが揉めている間に鼻を怪我している羊はのそのそと他のところへ行ってしまいます。まさかここから羊たちの逆襲が始まってしまうとは夢にも思いませんよね。

│ゾンビ羊ならではのキュートな見た目

序盤はなんといっても牧場の広大さと、羊たちのもこもこさを堪能してください。緑色の大きな丘にポツポツと白いもふもふがいるシーンはとても癒し効果があります。

中盤に差し掛かってくると、もふもふではありますがとても凶暴で血まみれな羊たちに早変わり。メェ〜という鳴き声がこんなに怖いことってこの作品だけなのではないでしょうか。バッサバッサと人間を襲っていく羊は、奥歯は上下ともありますが、前歯は下顎にしかないそうで人を噛み切ったりできないやんというツッコミもありますが、そこはゾンビ映画補正ということで。歯茎で噛み切ってるんだよね〜。この矛盾を断ち切るかのように、噛み切られてしまう人間たちのゴア表現も然り、ゾンビ羊たちも然り特殊メイクがとてもリアルなので迫力は満点です!

登場するキャラクターたちも個性派ばかり。羊牧場の息子なのに羊恐怖症のヘンリーや、効率化命!科学大好き!な兄のアンガス、そして牧場に侵入してきたエクスペリエンス。彼女は動物を大切にして!という素晴らしい思想のキャラクターであり、チャクラや呼吸法、占いを信じている少しスピリチュアルなキャラでもあります。すごく張り詰めたシーンでも彼女の一言でクスッと笑えるような台詞はこの個性ならではのとてもいいスパイスになっています。洋画によくある無理矢理なラブシーンも少なく、メインはあくまでゾンビなのもこの登場人物の個性ゆえなのでしょうか。

冒頭でもお伝えしましたが、人間ではなく羊のゾンビというのが特徴的な作品ですよね。特にお気に入りのシーンは、ゾンビ羊が車を奪い、運転するも崖から「メェ〜」と叫びながら落下していく流れです。遠巻きに落ちていく様子を映しているシーンはかわいすぎるので必見です。その他にもシャイニング羊がいたり、急所狙い羊がいますのでいろいろな羊の攻撃を楽しみにしてください。

ニュージーランドの映画、というのが個人的には珍しかったのですがクオリティは至高の域に達する作品でした。牧羊犬ってかわいいな〜という感動と、羊の目って意外と怖いな……という発見と。普段なかなか知ることのできない牧場が舞台の作品はいかがでしょうか。


ブラックシープ

製作年:2006年
監督:ジョナサン・キング
出演:ネイサン・マイスター、ピーター・フィーニー、オリヴァー・ドライヴァー ほか

septmersfilms

【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

Twitter(@septmersfilms)

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