一人、また一人と死んでいく…一体誰が犯人なのか?年末におすすめの推理が楽しい映画『そして誰もいなくなった』

│そして誰もいなくなった

<あらすじ>
島に集められた客と使用人、合わせて10人が「インディアンの歌」の歌詞通りに次々と殺されてゆく、というストーリー。

│次々と壊されるインディアン像の意味は

12月も中旬になり年末年始にどんな映画を観ようかな~と考える時期になってきたのではないかと思います。こういったのんびり映画を観る時間がとれるときにはなぜか「不朽の名作」と呼ばれる古くからある作品を観たくなるのは私だけでしょうか!

今回はミステリーといえば、のアガサ・クリスティ原作『そして誰もいなくなった』をご紹介いたします。刊行は1939年ということでなんと80年以上も前に出版された原作小説ですが、現代でも知られた名作ですよね。映画は1945年に制作され、アガサ・クリスティー小説初の映画化ということもあり当時の盛り上がりを閉じ込めたかのように、数々の作品に出演する役者が集まっています。まずはあらすじから、そしてまさかの原作と違うオチ!という部分をご紹介いたします。

舞台はイギリス南西部のデヴォン、インディアン島と呼ばれる島に8人の男女が船で向かっています。みんな共通してオーウェン夫妻との関わりがあり、そのオーウェン氏に呼ばれて今回集まったのでした。島には一軒の豪邸が立っており、そこにはロジャース夫妻がお手伝いとして雇われ働いていました。

船旅を終え、早速オーウェン氏と話そうとする一行ですがなぜか姿を現しません。不思議に思いながらも全員で食卓について晩餐の時間となります。お手伝いとしてロジャース夫妻が食事の準備をして、それぞれが自己紹介をしながら思い思いの話をして盛り上がります。歳をとった方が多いですが、元判事、元警部、元将軍の他にも現役の医師がいたりとかなり濃いキャラクターが揃っています。その中で女性は3人で、前述したロジャース夫妻の奥さんと、秘書として雇われた若いヴェラと、品行方正な老婦人のエミリーです。

食卓には綺麗な飾り付けがされており、テーブルの真ん中には10人のインディアンの像が丸く配置された置物がありました。それを見ながら「こんな童謡があったわ…」と10人のインディアンが順番に死んでいってしまうという不気味な歌詞をヴェラが話し始めます。「その曲の楽譜がちょうどピアノの上に置いてありましたよ」とヴェラは続けます。

食事も終わり、各々グラスを片手にのんびりしていると突然、蓄音機から「今日集まった人たちはそれぞれこんな罪を犯している、まずは…」と参加者10人が過去に犯した殺人に関する情報を1人ずつ流されます。「なんだこの音声は?何を言っているんだ?」みんながどよめく中、このレコードを流したのはお手伝いのロジャース夫妻の夫だったことが判明します。なんでも指定の時間になったらこのレコードをみんなのいる場所で流すようにと事前にオーウェン氏からお願いをされていたのだとか。レコードを見ると「白鳥の歌」と書かれていましたが、内容については何も知らなかったのだそう。

「ま、こんなの何かのおふざけだよね〜」という空気の中、ピアノでインディアンの童謡を弾いていたマーストンがウィスキーを飲んだ瞬間に苦しんで倒れてしまいます。周りにいた人たちは「いやいや、飲み過ぎですよ〜」と起こそうとすると、し、死んでいる!!突然のことに動揺する人たち、気分が悪くなったと言って部屋に戻るロジャース夫人。その日はマーストンが薬を飲んで自殺したのでは?と場は落ち着き、そのまま部屋に帰って休みます。

その次の日、朝になっていくら待ってもロジャース夫人が降りてきません。夫人がいなければ朝食の準備もできないので宿泊客は様子をうかがいます。すると、なんとロジャース夫人が寝たまま死んでいることが発覚しました。

12時間で2人も死んでいる……さすがに事件性を感じる一同は、昨日のインディアンの歌を思い出しました。

「一人が喉をつまらせて、九人になった」「一人が寝すごして、八人になった」

どうもこれは歌詞に合わせて殺されているのでは?歌詞のインディアンも10人、この島にいるのもちょうど10人。島を離れる船は週末に来ないので、まだあと丸二日もあります。誰が犯人なのか、次は誰なのか、どうやって殺されるのか。謎は深まるばかりです。

│ニクい演出と怖~い歌詞

制作が1940年代ということで、白黒画面に白飛びもしていてとても年季を感じますが撮影の方法の工夫を感じたり、魅力的なシーンが多く観ていて飽きません。

例えば、殺人が続いて残されたメンバーが疑心暗鬼になっていくシーン。ある人が別の人の部屋の中を覗いている姿をその後ろで、また別の人が覗いているという構図ができるのですが、これを鍵穴を使ってうまく表現していました。鍵穴の中を覗いている姿を、また別の鍵穴から覗かれて手作りの鍵穴を模した枠を使って撮影しているのが昔っぽいですがカット割りへのこだわりを感じます。

他にも猫好きの人にはちょいちょい出る猫ちゃんにも注目して観ていただきたいです。宿泊客と一緒に廊下を歩いていたり、編み物するエミリーの毛糸玉にじゃれていたり、抱っこされて膝に乗せられている姿はとっても可愛いです。

とっても可愛いといえば、朝方に事件が起きたときにみんなが寝巻きで部屋から急いで出てきた朝も印象的です。女性陣はネグリジェに髪の毛にはリボンとファンシーな雰囲気で、男性陣はゆるいシャツ姿でいつものかっちりした格好とのギャップがあります。殺人事件が立て続けに起こる今作ですが、あまりドロドロした雰囲気にならないのは死体や殺人のシーンがあるわけではなく間接的な表現であることもありますが、こうしたホッと気の抜けるようなシーンが挟まっているのも理由かもしれません。

今作に登場する「インディアンの歌」のように歌詞が怖い童謡って日本にもありますよね。子どもの頃、遊んだことがある方も多いであろう「花いちもんめ」は花を売り買いするのではなく、実は子どもを売っていた様子を描いた曲という噂もあったり!「てるてる坊主」の歌では、雨が降ったら首をちょん切るぞなんて歌詞があったりしました。「かごめかごめ」は有名ですが、こうした子どもが何気なく歌っている歌の由来が実は怖い…というのはより一層不気味ですよね。

海外でもマザーグースのような子どもに歌って聞かせる童謡に怖い歌詞のものがあるということがあるそうで、童謡に隠された意味を考えてみるのは面白いかもしれません。「インディアンの歌」はもともとアメリカやイギリスで広まっていた「10人のインディアン」という曲を、作者であるアガサ・クリスティーがアレンジをして作ったオリジナルということで、こうした小説への影響も童謡ならではです。映画でもピアノで楽しそうに歌っているシーンがあるのでぜひご確認ください。

最近では『オリエント急行殺人事件』に続いて、『ナイル殺人事件』が映画化されているアガサ・クリスティーのミステリー作品ですが、今回の昔からある作品も味わい深くてとても楽しめました。私はポアロではなくマープル作品が実家に大量にありそちらにばかり親しんでいたので、今回挙げたどの作品も原作はきちんと読んでいないのですが映画を観た後に原作を読むことで得られる感動というものもありますので、これから読むのが楽しみです。『そして誰もいなくなった』の映画は、原作のオチとは異なっているそうなので、二度おいしいですよね。

いかがでしたでしょうか。年末に向けて観たい映画をリストアップしているそこのあなた!古くからある作品をこの機会に観てみるのはいかがでしょうか。少しでも皆さんの映画選びの助けになれば幸いです。

今年の私、septmersfilmsの記事更新も今回で最後となります。拙い文ですがここまでお読みいただきありがとうございました。また次回の更新までに映画をたくさん観て紹介できればと思いますのでよろしくお願いいたします!少し早いですがメリークリスマス&よいお年を!


そして誰もいなくなった

製作年:1945年
監督:ルネ・クレール
出演:バリー フィッツジェラルド、ウォルター・ヒューストン、ルイス・ヘイワード ほか

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【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

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