10代しか出てこない新しいティーンホラームービー、恐怖はゆっくりと近づいてくる…映画『イット・フォローズ』

(C) 2014 It Will Follow. Inc,

│イット・フォローズ

”それ”はずっとずっと憑いてくる

<あらすじ>
19歳のジェイはある男と一夜をともにするが、その後男が豹変。縛り付けられたジェイは「それ」に殺される前に誰かにうつせ、と命令される。ゆっくりと歩いてくる「それ」はうつされたものにだけにだけ見える。「それ」はゆっくりと歩いて近づいてくる。「それ」は人にうつすことができる。「それ」はうつした相手が死んだら自分に戻ってくる。「それ」は他の人には見えない。そして、「それ」に捕まったら必ず死が待っている。果たしてジェイは、いつ、どこで現れるか分からない「それ」の恐怖から逃げきることができるのか。

│観客置き去りの恐怖がひたひたと近づく

前回に引き続き、(悪い意味で)心に残るホラー映画をご紹介!今回は音やシーンの切り替えでドキッとさせるのではなく、じわじわとゆっくり怖さが襲ってくる『イット・フォローズ』について語っていきたいと思います!

始まりは、アメリカのとある住宅街でほぼ下着姿のような格好で家を飛び出した女の子から。下着姿なのに靴はピンヒールで何かから逃げている様子です。道沿いにいた女性も不思議がって「大丈夫?何かあった?」と聞いています。
「大丈夫、なんでもない」と答える女の子ですが、表情は明らかに大丈夫ではありません。「本当に大丈夫?」と聞く女性を振り切って走り出した女の子は道をぐるっと回ったかと思うとまた家に戻って行きました。オープニングから「なにごと…?」と観客を疑問の渦に落とし込んでいきます。
場面は変わってその後、家から飛び出した女の子は海辺にいました。電話で家族に「今までありがとう、愛してる」と愛を伝えているかと思ったら、次のシーンにはもう全身がバッキバキに折れて死んでいるのでした。観ている側としては「もう本当になにごと!!??」という感じです。この女の子は何に怯えていたのか、なんでこんな死に方をしているのか、謎が深まるばかりです。

そしてやっとこの物語の主人公であるジェイが登場します。プールで泳いでいたジェイは最近付き合い始めた彼氏と映画館へデートに行くために髪を整えおしゃれをしています。上映までの待ち時間に仲良くお話をしていると、彼氏が急に「あそこにいる黄色い服の女の子が見える?」と言い始めます。「…え?どこ?見えないけど?」とジェイが返すと、彼氏は顔を真っ青にして「今すぐ出よう、気分が悪い」というのでした。
その後ジェイが安全であるはずもなく、この「何か」に追われる側になってしまうのですがこの「何か」がとても怖いのです。それは必ず歩いてついてきて、見た目は知人にも他人にもコロコロ変化するので見ただけで判断することはできません。特徴としては周りの人には見えないので、自分だけが見えている場合は判断できますがどこから来るのか分からないので常にキョロキョロしなくちゃいけないので大変です。この訳が分からない、何を怖がればいいのかも分からないという恐怖が全く新しく、新体験の恐怖を味わうことができます。

│おしゃれ映画の皮を被った直球ホラー

この作品を撮っているデヴィット・ロバート・ミッチェル監督が制作している作品は全てチェックしているのですが、どの作品をみても「撮り方がおしゃれだな〜」という印象があります。
『アメリカン・スリープオーバー』や『アンダー・ザ・シルバーレイク』などホラーとは違った作品も撮っていますが、特に暗闇を撮ることに長けているように感じています。ホラー映画はその性質上、暗いところで何かしら起こることが多いため暗闇のシーンというのは切っても切れない関係にあります。暗くて何が何だか分からない、ではせっかくのシーンも台無しですよね。この監督はそれがなく、暗闇にある光をうまく使ってよく見えるようにかつおしゃれに撮っていて、この『イット・フォローズ』もホラージャンルのはずなのに映像はおしゃれ映画顔負けのクオリティです。

この映像にやられて「おしゃれスクール映画かな?」と錯覚していると、ひたひたと「それ」が画面に現れるので怖さが倍増していきます。自分以外のみんなには見えていないから「どこにもいないよ? 大丈夫だよ?」という言葉が全く意味なし! というのが怖いですよね。大丈夫かどうかは自分で確かめないとダメなのです、いると分かっていながら扉を開けるホラーゲームのような気持ちですよね。
元々は監督が小さい頃にみた「誰かにゆっくり追いかけられる」という悪夢から着想を得て制作をしたらしく、他のホラー作品によくある急に出てきたり、すごい勢いで追いかけられたりということが少なく、代わりにゆっくりゆっくり迫ってくるのが他にありません。

「ラストシーンが怖い映画」といえば、最近観た映画の中でダントツこの『イット・フォローズ』が挙がるほど、最後の最後のシーンまでぜひ注目してみていてほしいです。
監督曰く、「この映画の解釈は1つではない」のだそう。観た通りではない別の解釈なども含め、アツい考察記事がたくさんあるのでぜひ皆さんもご覧になって様々な結末を想像してみるのはいかがでしょうか。


イット・フォローズ

製作年:2014年
監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
出演:マイカ・モンロー、キーア・ギルクリスト、ダニエル・ゾヴァット、ジェイク・ウィアリー ほか

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【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

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