現実と精神世界を行き来する、サスペンスジャンルを飛び出した魅力! 映画『ザ・セル』

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│ザ・セル

脳(セル)へ−

<あらすじ>
先進的な医療施設キャンベルセンターで働く小児精神科医のキャサリンは、昏睡状態の少年エドワードの内面世界に特殊な機器を使って入り込み、内なる彼とやりとりしながら意識の回復を目指す治療に携わっていた。結果は芳しくなく、キャサリンは自分の内面にエドワードを招き入れる方法を考慮しつつあったが、それは未知の領域でリスクがあった。

│相手の心の中へ侵入できる世界

大迫力アクションシーンや、夢のようなラブロマンス。背筋が凍るようなホラーも良いし、息もできないくらい笑えるコメディも好き。日々いろいろな映画を観ていると少し変わった作品が観たくなるときはありませんか? 私はそういう時に「画力があって、細部の解釈は委ねられる」系のものが観たくなります。不思議な舞台設定でどのシーンを切り取っても絵画のように美しく、かつストーリーは1から10まで語るのではなく余白を残してくれるようなそんな作品です。

そんな映画を観たい時にぴったりなのが、今回ご紹介する『ザ・セル』です! まずはその不思議な世界のあらすじをお伝えしていきます。

物語の主人公はキャサリンという精神科医の女性。彼女は患者さんの心の中の「秘密の世界」に入り込むことで、その人の潜在意識と会話をして診療をしていました。この秘密の世界に入るためには全身スーツを着て特別な部屋に入り、体を鎖で繋いで浮かして準備を整え、精神世界へと入っていく必要があります。建物や街並みは現代と変わりませんが、この研究はかなりSFチックな設定と言えそうです。
冒頭でキャサリンは1人の男の子の秘密の世界へと入っています。この世界では男の子の思いのまま物を出したり、舞台を変えることができます。移動するために馬が出て、海に行こうといえば船が現れるようなそんな世界です。その中にポツンといる男の子との対話を試みますがなかなか上手くいかず、この研究も続けるのが難しい状況になってしまいました。

そんなある日、連続殺人の容疑で逮捕された男が施設へやってきました。なんでもまだあと1人どこかに監禁されていてこのままではその人も死んでしまうため、犯人の精神世界に侵入し手がかりを探してほしいという依頼でした。キャサリンは迷いながらも承諾し、事件解決に向けて秘密の世界へ飛び込んでいきます。
やはり殺人犯の心の中ということもあり、異常極まりないイメージが次々と浮かんできます。人形のように加工された女の人たち。生きたままスライスされて標本にされてしまう馬。ムキムキの男性が闊歩しています。そんな中でキャサリンは小さな男の子を発見し、その子が犯人の良心の部分なのではないかと考え、事件のヒントをもらえるように話しかけます。しかしその後ろには怖い顔をした男性が…。精神世界の中で起こったことは、現実世界でも同様に起こってしまいます。怪我をしてしまったらその怪我は現実にも現れ、死んでしまうと本当に死んでしまうのです!そんな中でキャサリンは殺人犯の狂気の部分に捕まってしまうのでした。この後は一体どうなってしまうのでしょうか…。

│日本人も支える監督の作品世界

こうしたストーリーの近未来的設定もさることながら、精神世界の映像が不思議で他にない雰囲気を創り出しています。こんな場所が地球にあるのかという砂漠や荒野もあれば、地下世界のような入り組んだ構造の場所もありました。
この唯一無二な世界を創っているのが、今作で初めて映画監督を務めたターセム・シン監督です。2000年に公開されたので20年以上も経っているのに全く時代の影響を感じません。この監督の作品といえば『落下の王国』や『白雪姫と鏡の女王』などがあり、こちらを観た方も多いのではないでしょうか。

さらにこの監督の作品の魅力として忘れてはいけないのが、登場する衣装の数々。なんと日本人のデザイナーさんが担当をしているのです! 石岡瑛子さんが手がける衣装はターセム・シン監督の作る映画では欠かすことなく、監督の全ての作品に携わっていました。
監督はとあるインタビューで「決して『この映画みたいに』『あの映画みたいに』と細かく指示したりせずに、僕が作りたい世界観だけを説明した。彼女は自分自身を作品に持ち込んでくれ、それが彼女を特別な存在にしていた」と語っていました。それだけ監督の世界観を理解し、共鳴し合える存在はなかなかいないですよね。特に不思議な世界を表現するために衣装は必須ですから、この二人が出会えたことは奇跡のようです!

他にも監督の作品に影響を与えた要素として、劇中に出てくる『ファンタスティック・プラネット』という作品も挙げられます。全身が真っ青で目だけ真っ赤な宇宙人が人間を支配し、家畜同然に扱う世界を描いたこの作品のシーンが、『ザ・セル』ではキャサリンの家のテレビで流している場面でちょっとだけ挟まっていました。どちらの作品もビジュアルが強く、SFチックでありながらも現実に起こりそうな不気味さが共通していてこの作品が出てくることで気持ち悪さが加速されていました。
気持ち悪いシーンといえば、殺人犯の心の中の映像は、序盤の少年の心の中よりもファンシーな要素はなくどちらかというとホラー寄り。特に女が3人同じポーズで並び、口々に「私の息子を見なかった?」と話しては上を向いて止まるというシーンがとても不気味なのでぜひ注目していただきたいです。

今作のジャンルを決めるのであれば、私は「ドリーミーホラー」を推します。分類としてはサスペンスらしいのですが、サスペンスというには余りある作品世界でした。殺人犯との対話やストーリーの雰囲気はホラー要素満載で、そこにサイケデリックなビジュアルも加わりドリーミー感もあります。
一癖も二癖もある『ザ・セル』、ぜひ鑑賞してください!


ザ・セル

製作年:2000年
監督:ターセム・シン
出演者:ジェニファー・ロペス、ヴィンス・ヴォーン、ヴィンセント・ドノフリオ ほか

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【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

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