解剖して暴かれる彼女の秘密とは? 嵐の夜に転がる死体が増えていく…映画『ジェーン・ドウの解剖』

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│ジェーン・ドウの解剖

この身元不明の死体にメスを入れてはならない

<あらすじ>
ベテラン検死官トミーは、同じく検死官の息子オースティンと遺体安置所を営んでいる。ある嵐の夜、警察から緊急の依頼が入る。それは、謎の惨殺事件の現場から全裸で見つかった身元不明の美女“ジェーン・ドウ”の死体の検死解剖だった。通常の検死だと思われたが、メスを入れ解剖を進めるにつれ、体内が焼かれ切断されているなど、異常な状態が判明。やがてあり得ない物の数々が体内で見つかり、起こり得ない現象が次々と発生、衝撃と戦慄が走る。外は暴風雨、通信も途絶えていた。隔絶され、閉ざされた空間で、逃げ場のない恐怖が始まる…。

│解剖ホラーという新ジャンル

みなさんは最近ホラー映画を観ていますか? 私は週に大体1本は観ているのですが、最近はミステリー寄りだったりアニメーションものだったりとちょっと変わったものを観ていました。そこでこの間、久しぶりに本格的に怖い作品を観ようかな…と、いつか観たいホラーリストでずっと温めていた『ジェーン・ドウの解剖』を観たわけなのですが、なんとまあ怖い! 変化球なしの直球、震える怖さでした! 1年前くらいに『死霊館 エンフィールド事件』を観た時に感じた恐怖と同じです。

今回はその恐怖を少しでもお伝えできればと思います!
検視官のトミーと、息子オースティンの元にはいつものように警察から死体が運ばれてきます。彼らの仕事は死体を解剖し死因を特定すること。それを調査書にまとめ、警察に提出をするのがお仕事です。息子のオースティンはこの仕事を続けたくないと思いながらも、父だけに仕事をさせることができず修行のようなかたちで一緒に仕事を手伝っています。「この死体の死因はなんだ?外傷だけで判断せずにちゃんと全部の部位の状態から判断するんだ!」などと指摘されながら。

今日もまた新しく運ばれてきた死体。この事件は緊急で明日の朝までに結果がほしいらしく、着いて早々片付けようと解剖を始めていきます。見た目はとても美しい女性、全く外傷がないにも関わらず両手首と足首を複雑骨折していました。口腔内を調べてみると、なんと舌がありません。誰かにちぎり取られていました。こうした結果から、以前に起こった性被害事件の関連なのでは? と当たりをつけるトミーとオースティン。動けないように手足を縛られ、話せないように舌を取られるならなんとなく筋が通ります。

続いてメスを入れて内臓を詳しくみていこうとすると、ラジオが急におかしな曲を流し始めたり、保管していた解剖結果の一部から血が噴き出していたりと異常現象が多発します。
嫌な雰囲気を感じて「これ明日にしない?」と聞くオースティンに、「朝までに死因を特定しなくちゃいけないんだからやってしまおう」と進めるトミー。しょうがなく内臓の解剖ステップに進みます。
内臓を調査していくと明らかに変な点がいくつも見つかっていきます。外傷がなく肺や心臓がこれだけ傷つくのはあり得るのか…? なんでお腹の中から布が? 嵐が激しくなっていく中、トミーとオースティンの解剖は徐々に知ってはいけない真相に近づいていくのでした。

│1つの建物の中だけなのに無限の怖さ

驚きなのが、この作品は86分しかないのです。1時間半もなく起承転結がしっかり行われ、恐怖演出も最高という文句なしの作品です。さらには舞台となるのが解剖が行われている建物のみ、のためシーンをガラッと変えたりすることができず単調になりがちな設定のはずなのに全くそれがありません。セットやロケーションにはあまりお金をかけていない作品のはずなのに、なぜこんなにも恐ろしいのでしょうか…。

その理由の1つに、私はジャパニーズホラーの恐怖と通ずるものを感じています。
例えば序盤に登場する死体の足首に取り付けている死亡確認用のベル。これは、昔は昏睡状態と死亡が区別できなかったため、一定の期間は足につけて鳴ったら分かるようにしていたもので、今となってはただの慣習でつけているものとトミーは言っていました。このただの飾りのベルがいい仕事をするのです。以前に私の記事でもご紹介した『シライサン』では日本らしく鈴なのですが、こうした音が鳴るアイテムはホラーとめちゃくちゃ相性がいいですね。

他にもジャパニーズホラーみを感じるのは、中盤に嵐で停電をしてしまったシーン。画面は真っ暗になり暗視カメラを使うわけでもなく、同じ空間にいながら一緒に肉眼で見ているような暗さです。そこで登場するのがオースティンの持つ懐中電灯です。ホラーゲーム御用達アイテムですね。勝手な主観なのですが、懐中電灯の灯りのみで動くのは日本のゲームらしさを感じてしまいます。ここから急にPOV視点(一人称視点)になったりと、それまでと違った演出を入れつつ暗闇の中で奮闘する様子は格別です。

『ジェーン・ドウ』とは日本語で言うところの「名無しの権兵衛」ということらしく、身元不明な人の呼び名として使われているようです(ちなみにこれは女性で、男性はジョン・ドウらしいです。日本には女性版はないのかな)。身元や死因など全てが不明の彼女は一体何者なのか? どこから来たのか? 皆さんも心を開いて、笑顔で! 解剖されながら解明される真実をみてください!(心を開いて〜笑顔が一番〜というラジオから流れる曲が不穏でとても好きでした。)
本気のホラーが足りていない人にはオススメの作品です! ぜひご覧ください!


ジェーン・ドウの解剖

製作年:2020年
監督:アンドレ・ウーヴレダル
出演者:エミール・ハーシュ、ブライアン・コックス、オフィリア・ラヴィボンド ほか

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【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

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