【アカデミー賞で短編アニメーション賞を受賞】12分で心がぎゅっとして、ほっとするショートムービー『つみきのいえ』

(C)2008 ROBOT

 

│pieces of love Vol.1 つみきのいえ

<あらすじ>
海面が上昇したことで水没しつつある街にひとり人残り、まるで塔のようにそびえ立った家で暮らしている老人がいた。彼は家が沈みかけるたびに、積み木のように上へ上へと家を建て増しすることで難をしのぎつつも穏やかに暮らしていた。そんなある日、彼はお気に入りのパイプを海中へと落としてしまう。

│海の真ん中でひとりぼっちのおじいさん

今回は初めてショートムービーをご紹介しようと思います! 12分という短い時間の中で、人生を考え直してしまう作品です。

『つみきのいえ』では海面上昇に合わせて、家を積み木のようにどんどん重ねていく不思議な場所に住んでいるおじいさんが主人公です。
登場人物には名前もなく、台詞もなく、あるのは生活音のみ。
おじいさんは自宅の床にある扉を開けて、釣りをして魚をとり、それをご飯にして過ごしていました。毎日パイプを蒸し1人で過ごす日々はどこか悲しそうです。

ある日、朝起きると水位が上がってくるぶしのあたりまで水が来てしまっていました。このままではじきにこの家の高さまで水が上がってきてしまうため、おじいさんはこれまでと同じように家の上にまた家を積み上げて建てます。土台となる家の上に、家を建てるのでどんどん細くなり住む場所は狭くなっていってしまうのはしょうがないことなのかもしれません。
やっと建てた上の階へ引っ越しをする時、いつも蒸しているお気に入りのパイプを水の中に落としてしまいます。覗いてみると、釣りをしていた床の扉が開いていてどんどん下まで落ちてしまったようで素潜りでは到底取れない場所まで沈んでしまいました。
それまで通り淡々と過ごしますが、やっぱりパイプがないと寂しい…。船で物を売りにきてくれるお店で他のパイプを見てもしっくり来ません。
どうしたものかと思っていると、お店にダイビングスーツがあるではないですか!「あのパイプ」を探すためにおじいさんはダイビングスーツを着て、水の中へ飛び込んでいきます。

│1つ1つに思い出が詰まっているつみき

近くに住んでいたみんなは船でどこか遠くの、きっと海面上昇などない住みやすい場所へ行ってしまったのでしょう。もう周りには誰もいなくなってしまいました。それでもおじいさんは愛する妻や家族との思い出が詰まったこの場所から動きたくないのか引っ越しはしない様子。1つ1つ積み重ねてきた積み木のような家の中をダイビングスーツを着て進んでいくごとに、今までの記憶が蘇ります。

日本人である加藤久仁生さんが監督・製作をしている今作はどこか海外らしい不思議なタッチのアニメーションであり、とても素敵です。第81回アカデミー賞で短編アニメーション賞を受賞されるなど海外からも高く評価されていて、その雰囲気は万国共通でウケるようですね。

監督は作品に関するインタビューで、『つみきのいえ』は一枚の絵のイメージから生まれたお話なんだと語っていました。メインビジュアルを製作し、それを脚本家の平田研也さんに見せたところ「沈んでいる家の層にはその時代の思い出が沈んでるんだ」という話になり今回のお話が生まれたんだとか。
全編鉛筆で描かれており、製作期間は1年ほど。12分のアニメーションですがなんとも気が遠くなるような作業です!

いつもは長編映画を観ているのですが、たまにこうした短編や短めのアニメーション作品を観ると、時間が短い中にもストーリーが詰まっていて新しい発見があります。
この『つみきのいえ』は特に、サクッと観られてしまうのに終わった後も心から離れません! 出会いと別れの季節である春を前におすすめの一作です。


pieces of love Vol.1 つみきのいえ

製作年:2008年
監督:加藤久仁生
受賞記録:2008年 第81回 アカデミー賞 短編アニメ賞

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【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

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