コーヒーとタバコと会話だけ。15分前後のショートストーリーオムニバス映画『コーヒー&シガレッツ』

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│『コーヒー&シガレッツ』

コーヒーを一杯 タバコを一杯 会話を楽しむ 人生を楽しむ

<あらすじ>
“コーヒー”と“タバコ”にまつわる愛すべき11のエピソード。コーヒーを飲みながら、タバコを吸いながら、様々な登場人物たちが、どうでも良さそうで、良くない、でもひとクセある会話を繰り広げていく…。

│ちょっとした“一服”感覚で楽しめる映画

今回ご紹介する『コーヒー&シガレッツ』は題名の通り、コーヒーとタバコを一緒に楽しむ人たちを描いた作品です。11のショートストーリーがオムニバスになっており、それぞれがそれぞれのシチュエーションでコーヒーを飲み、タバコを楽しむ姿が重ねられています。コーヒーも飲まない、タバコも吸わない私ですが、この作品に出てくる人たちは、短いストーリーのはずなのに心にずっと残るほど魅力的なため大好きな映画です。
少し前に紹介した『人生スイッチ』の記事同様、11のショートストーリーの中からいくつかピックアップしてその魅力をお伝えできればと思います!

「変な出会い」
一番初めのストーリーは、タバコとコーヒーは相性抜群なんだ…と話すシーンから。タバコを片手にコーヒーを飲む姿は決まっています。待ち合わせをしていたのか男が合流して来るとたわいもない会話を始める。合流した男は名前を「スティーブ」と間違えられ「(自分の名前は)スティーブンだ」と名乗るけども「いや、だからスティーブって言ってるだろ」みたいな顔でとりあえずうなずくシーンがずれていて面白いです。そもそもこの最初に待っていた男はスティーブンに「ロベルト?」と聞かれているのにうんとも何も言っていないんですよね。この2人はお互いが待ち合わせしている人を間違えているのではないか…? 最終的には、行くのを面倒くさがっているスティーブンの代わりにロベルト(仮)が歯医者に行くという謎の展開で締められます。

「双子」
こちらは男女の双子が仲良くコーヒーを飲んでいます。水を飲むようにぐびぐびコーヒーを消費する2人。
店員さんもすかさずおかわりを入れにきます。(この時にコーヒーをこぼしてしまいソーサーにびちゃびちゃになった際、慌てた店員さんがソーサーを斜めにしてこぼれたコーヒーをカップへ入れようとしているのを私は見逃さなかった…この感じがゆるくていいですね)
「あれ、それ私のシャツじゃない?」「いや、俺のだよ」「その靴も私のじゃない? 絶対そうよ」「違うよ、俺のだよ」というやり取りもとってもほっこりするいいエピソードです。

「ルネ」
こちらではルネ・フレンチが演じる美しい女性が一人でコーヒーを楽しんでいます。手慣れた手つきで砂糖を入れ、スプーンで混ぜ一口すすっていると「コーヒーのおかわりは要りますか?」と店員さんが聞きながら勝手に入れてしまいます。「実はいらなかったの、色も温度もちょうどよかったのに」と言うと申し訳なさそうに去って行きました。
すると店員さんは何かと理由を考えて何度も話しかけてきます。
「さっきはすみません」「あれ、知り合いの友達ですか? 違います?」「コーヒーだけじゃなくて食べ物いらない? ランチでしょ?」
最後は呆れるルネですが、なんともその様子が色っぽくて見入ってしまいます。とても短いお話でタバコを一本を吸っている間のお話です。

「いとこ同士」
続いてケイト・ブランシェットが2役を演じる、いとこ同士のストーリー。ホテルの待合スペースで談笑する2人。同じ人が演じているはずなのにメイクや服装が違っているのはもちろん、話し方や仕草が全く違っていて驚きます。
片や仕事で成功して世界を飛び回るセレブと、片や売れないミュージシャン? としてくすぶっている彼女は、表面上は仲良くしているけれども腹の中ではお互いに距離をとりたいと感じているような絶妙な関係。ギクシャクした空気感がとってもリアルです。

「いとこ同士?」
前のストーリーと対照的? なこちらも、2人がカフェで待ち合わせするシーンから。売れている俳優と、全く鳴かず飛ばずの俳優が会話をしています。
売れない彼がずっとくだらない話を話し倒した後に「実は重大発表があるんだ、僕たちいとこ同士なんだよ! この運命の出会いで映画を作ろう!」と盛り上がりはじめます。売れている彼は「いや〜別にメリットないしな〜」と分かりやすく顔に出しながら塩対応して逃れています。電話番号を聞かれても「誰にも教えないルールだからすまん。」と一蹴。何とも冷たいです。
しかし、売れない彼が実は有名なあのスパイクジョーンズ監督と仲良しと聞くや否や「ばからしいルールだよ、電話番号教えてもいいかな」と態度を一変。
なんて失礼なやつなんだ…と思いつつも、こういうこと考えてしまう時もあるよね〜と共感してしまうお話でした。

│まとめ

最近では『デッド・ドント・ダイ』や『パターソン』などゆるくて唯一無二な作品を制作しているジム・ジャームッシュ監督が2003年に公開した今作も、ゆるく何も考えずにみられる一作です。
あなたもビル・マーレイのようにコーヒーサーバーごとぐびぐびとコーヒーを飲みながら、休日に鑑賞してみてはいかがでしょうか。お休みの日にぴったりの作品です!


コーヒー&シガレッツ

製作年:2003年
監督:ジム・ジャームッシュ
出演者:ロベルト・ベニーニ、スティーヴン・ライト、ジョイ・リー ほか

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【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

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