死にたかったけどやっぱり止めた! 契約した暗殺者に殺される前に逃げろ! 映画『やっぱり契約破棄していいですか!?』

(C)2018 GUILD OF ASSASSINS LTD

 

│やっぱり契約破棄していいですか!?

最後に笑うのはどっちだ!? Wシチュエーション痛快エンターテインメント!

<あらすじ>
小説家志望の青年ウィリアムは、真っ暗な橋の上で人生に別れを告げ、落ちる覚悟を決めた。その瞬間、年老いた男が声をかける。自分が必要になった時連絡するようにと名刺を差し出された。ウィリアムは仕方なく受け取ったが、その助けは要らないと橋から落ちていった。一方レスリーは、英国暗殺者組合の会員として誇らしいキャリアを持っているが、今や暗殺件数のノルマを達成できずクビ寸前。自殺スポットに出向いては自殺志願者と契約し、引退を先延ばしにする日々を送っている。翌日、運悪く生き延びてしまい絶望するウィリアムは、昨晩受け取った名刺を思い出す。名刺に書かれた番号へ電話し、契約を交わす。その内容は「ターゲットを一週間以内に殺すことができなければ返金する」というものだった。ウィリアムは自らをターゲットに設定し、レスリーに暗殺の依頼をしたのだった。契約成立後、ウィリアムは出版社のエミリーから電話を受ける。なんと、自分の書いた小説を出版したいというのだ。ウィリアムとエミリーは出版に向けて話合うが、二人は急速に惹かれあい、ウィリアムに生きる希望が湧いてしまう…
「やっぱり契約破棄していいですか!?」―ウィリアムとレスリーの人生を懸けた一週間が、今始まる!

│イギリス映画ならではのブラックな設定

いつも日本の映画より外国の映画を好きで観ているのですが、その時の気分に合わせて制作国を変えることがあります。アクションやラブストーリー、学園ものが観たければアメリカ。静かでおしゃれ、淡々とした展開が観たい時はフランス。現実にありそうなホラーが観たい時は韓国。というように、他にもインドやドイツ、最近では中国・台湾の作品も目が離せません。様々な国のその国らしい作品を求めて、気分に合わせて「今日はおしゃれなものを観たいな〜」「じゃあフランス映画見るか〜」…ということをしているのですが、その中でも「今日はブリティッシュ映画が観たい!」となる日は少なくありません。そこまで展開がパキパキしているわけではなく、どこかパンクでブラックな笑いが散りばめられているような、イギリスの作品は元気が欲しい時にみると最高にフィットすると個人的に思っています。

今作の主人公は作家志望の青年のウィリアム。小説家を目指して、本を書いては出版社に送っているのですがどの会社からも「複雑すぎて訳が分からない」と突っぱねられてしまい、出版まで至りません。そんな毎日に嫌気がさしてしまい、ついには大きな橋から川に飛び降りて死んでしまおうと橋の縁に立って悩んでいました。するとその時、どこかから「押そうか?」と声が聞こえてきました。驚いたウィリアムは危うく落ちてしまいそうになりながら後ろをみると、1人の紳士が「気をつけないと死ぬぞ」と話しかけてきていました。ウィリアムの自殺を止めようとしない男性は、橋でドギマギしている様子を少しばかり見た後に「それよりも楽な方法があるよ、名刺を渡しておくね」と名刺を渡してどこかに行ってしまいます。

ウィリアムはありがたいけどこれから死ぬし……という感じで名刺を受け取りはするものの、そのまま橋からダイブ。しかしそこにちょうどパーティーをしている小型の船が通ったため、ウィリアムは死ぬことなく船の屋根が緩衝材となり、手の指を少し痛めただけで帰ってくるのでした。そう、彼は自殺をしようとしても絶対に死ねない青年なのです。度重なる自殺未遂のせいでプールの監視員の仕事もクビになり、今までの自殺遍歴をまとめた執筆活動もうまくいかず、家のキッチンコンロから出てくるガスを吸って自殺しようとしても支払いが滞っていたからなのかガスも出てこず、どうしようもなくなっていた時、あの名刺を思い出しました。

名刺を渡してきた男の名前はオニール、なんとプロの暗殺者。カフェで待ち合わせをして話を聞くと、自殺しようとしている人を安全に楽に殺すために暗殺を請け負っているとのこと。暗殺者にもノルマがあり、そのノルマがあと1人なのでウィリアムに契約してほしいというお願いでした。ウィリアムの有り金では豪華な暗殺(役者を呼んだりして、かっこよく死ぬこと)はできないので、予告なしに狙撃する即死プランを提案されます。首吊りをしようとしたら縄を結んだ電灯が取れたり、道に飛び出して車に轢かれようとしたら轢かれたのが救急車で助けてもらったり。今まで10回自殺を試みてもなぜか死ぬことができなかったウィリアムはオニールに頼んで狙撃してもらうことを契約します。じゃあ入金から1週間以内に狙撃するからよろしくね〜ということで解散します。

数日が経ち、入金もしてもうあとは殺されるだけ、というウィリアムの元に1件の電話がかかってきました。「自殺未遂の本なんてイカれてて面白いじゃない、一度会って話さない?上司と一緒に来週なんてどうかしら?」と編集者からの連絡だったのです!来週では遅すぎる、殺されてるかもしれないと考えたウィリアムは「明日のランチで!」とすぐの約束を決めつつ、オニールに狙撃の延長をお願いしました。「いいよ〜」とオニールは承諾しつつもランチの場所と時間をメモしつつ、その場所で狙撃してやろうと計画をするのでした。

暗殺される寸前に、まさかの念願だった出版の夢が叶うかもしれない……!契約をしてしまった後に破棄することはできない決まりだが、やっぱり暗殺はやめてほしいウィリアム。オニールはこの1件の暗殺ができないとノルマ未達成で引退をさせられてしまう。死にたくない契約者と、殺したい暗殺者の追いかけっこが始まります。

│やはり一番は母強し! 個性的なキャラクターたち

なんとブラックジョークが効いた設定のなんでしょう。自殺しようとすることをコメディにして、暗殺者との契約に結びつけるというありそうでないストーリーになっています。「コメディ」というジャンルではありますが、そんなにたくさん笑えるというものではなくクスッと漏れてしまうようなブリティッシュな笑いが終始続いています。

今作の監督は、この映画が初監督のようで(septmersfilms調べ)他の作品はヒットしなかったのですが、出演している俳優陣はとても豪華です。オニール役のトム・ウィルキンソンは近年はバイプレイヤーとして数々の作品に出演をしていて、ウェス・アンダーソン監督作品『グランド・ブダペスト・ホテル』では作家役として参加をしていました。

ウィリアム役のアナイリン・バーナードはクリストファー・ノーラン監督作品『ダンケルク』で話さない兵士ギブソン役で見たことがある方も多いのではないでしょうか。きれいな目の色に吸い込まれてしまいそうになります。

編集者エミリー役のフレイア・メイヴァーはティーン向けのドラマに出演し、映画にも近年参加しているようです。今回の作品では個性的なメイクとキャラクターでとても魅力的でした。

どのキャラクターも素敵ですが、私が一番好きだったのはオニールの奥さんペニーです。暗殺者の奥さんということでどんな強そうな人が出てくるのかと思いきや、趣味は刺繍とインコのお世話をすることで、お家のデコレーションもとってもファンシーな花柄が多くとても可愛い奥さんです。いつも家事をしながらニコニコお話をして、暗殺をして帰ってきたオニールにとっての癒しになっているのでしょう。鑑賞しているこちらも癒されるほどの魅力です。趣味の刺繍のコンテストに夢中になっていたり、オニールには早く引退してもらって2人で世界一周旅行に行くことが夢だと話している姿はぜひ見ていただきたいです。

「エンディングまで手が込んでいる作品は良い作品である」という自説の法則があるのですが、この作品もエンディングシーンではペニーが刺繍した設定なのか全て細かな刺繍で作られていてとっても素敵です。拳銃であったり吹き出している血であったり、明らかに可愛い刺繍とはミスマッチなモチーフばかりですが、そこがこの作品を表しているようでした。

派手なアクションや謎解き、幽霊の登場などがあるわけではないですが、とてもユニークな設定と細かな駆け引きの模様などは観ていて飽きません。テンポのいいブラックコメディが観たい方はぜひご覧ください!


やっぱり契約破棄していいですか!?

製作年:2018年
監督:トム・エドモンズ
出演:出演:トム・ウィルキンソン、アナイリン・バーナード、フレイア・メイヴァー、マリオン・ベイリー ほか

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【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

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