不思議な力を持つ子どもたちを守れ! ティム・バートン監督が贈るダークファンタジー…映画『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』

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│ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

ティム・バートン史上、最も奇妙。

<あらすじ>
ジェイクは、幻想と現実が交錯するなか、時を超えた謎の手がかりを見つけ、「奇妙なこどもたち」の秘密の隠れ家“ミス・ペレグリン(はやぶさ)の家”を発見する。そこで暮らす子供たちと知り合い、彼らの不思議な能力を知ったジェイクは、彼らが1943年の9月3日を毎日繰り返していることとその理由を知る。だが、目に見えない危険が迫っていることに気づく。
一方で、ジェイクには解明しなければならない疑問があった。誰が現実に存在し、誰を信じられるのか、そして自分がこの世界に送り込まれた役割とは何なのか。真実が明らかになったとき、永遠に続く1日と奇妙なこどもたちに大きな変化が訪れる…。

│洞窟をくぐるとタイムスリップ?

ちょっと怖いけどストーリーもキャラクターも魅力的で観ちゃう、ダークファンタジーといえばティム・バートン監督の作品ですよね! 大人から子どもまで楽しむことができる作品をたくさん生み出していて、日本でも作品展が開かれるとたちまち来場者が殺到するほどの人気です。近年では『アダムス・ファミリー』に登場するウェンズデーを主役にしたドラマを撮影して話題になっていましたが、映画作品でも挙げればキリがないほどその度に話題になっています。

今回ご紹介する『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』は映画作品だけでいえば2019年のダンボの次に新しい作品で、日本での公開は2017年。同名小説の映画化で小さな子ども向けというよりは、大人向けのおとぎ話のようなストーリーとなっています。

主人公の男の子は冴えない雰囲気の高校生ジェイク、学校の陽キャに笑われる日々を送っているようです。そんなある日、突然の連絡でおじいさんに会いに行くことになります。認知症の疑いがあるおじいさんですが、息子であるジェイクのお父さんは忙しくて会いに行けないということでジェイク1人で様子を見にいかなくては行けません。(結局バイト先のスーパーのマダムが車を出してくれて一緒に行ってくれるのですが、その姿が何だかかっこよくて惚れてしまいます。)

道すがらおじいさんに電話をすると「ここに来てはいかん、銃を入れていた保管庫の鍵がなくなっている!」と何やら焦っている様子。「銃は父さんが心配して預かっているから大丈夫だよ」と伝えると「銃なしで奴らと戦えと?」と返ってきます。また認知症で変なことを言ってるのかな…という諦めモードになりつつも、ジェイクが家に着くとおじいさんの家が何者かに荒らされています。おじいさんの姿がないため周りを見渡すと家の裏のフェンスがボロボロになっていて懐中電灯が落ちているではありませんか。

フェンスの近くを探し回っていると、おじいさんが倒れているのを発見。なんと目玉だけくり抜かれています!救急車を呼ぼうとすると「島に行け、鳥が全てを説明する、ボケ老人だと思うな。」とだけ残して亡くなってしまいます。なんのことやらと思っていると、突然巨大な怪物が迫ってきます!

そのまま場面はカウンセリングのシーンに移り、ジェイクはおじいさんが倒れていたショックで怪物が出る悪夢をみたということで精神的な病気になってしまったと思われてしまうのでした。

小さい頃からおじいさんに不思議なお話を話してもらっていたジェイクはおじいさんが大好きでしたし、そのお話に出てくる奇妙な人たちの証拠写真も見せてもらっていたことから大きくなるまでその話が本当だと信じていました。しかし徐々に大人になると周りからインチキだと言われおじいさんの話が全て作り話なんだと思うようになってしまいます。カウンセリングではこの思い出を倒れたおじいさんを見たことで思い出し、勝手に悪夢をつくっているとされてしまいましたが「夢と現実を区別するためにそのおじいさんの言う島に実際に行ってみるのは効果的かもね」ということで、ジェイクは父と一緒にウェールズのある島へ向かいます。

島に着いてすぐに探検を始めたジェイク。おじいさんが話していた建物を探し回っていたところ、そこは第二次世界大戦の際にドイツ軍の砲撃で粉々に壊されていた。手がかりがないと思っていた矢先、急に現れた子どもたちに驚く。気づけば、ジェイクは1943年にタイムスリップしていた。なぜタイムスリップしているのか?この子どもたちは何者なのか?おじいさんが話していた鳥とは何か?島にある不思議な洞窟から、奇妙な物語が始まる。

│おしゃれで、きちんとホラー要素も

本作はティム・バートン作品に何を求めるか?によっては少し不完全燃焼になってしまうような感想も見られたりしているのですが、なんといっても監督の代名詞でもある独特の雰囲気は健在です!例えば冒頭のシーンはよくあるティーンムービーのようなスーパーでの一幕ですが、おじいさんの家に着くころにはもう霧がかかったような薄暗いトーンになっていてここから島に向かって探検して…という物語の前半はずっと不気味に演出されています。と思えば、過去にタイムスリップした後の奇妙な子どもたちが暮らす隠れ家のシーンではファンシーな庭や、キャラクターのファッションで一気に世界が可愛らしい方向へシフトしています。『チャーリーとチョコレート工場』のようなぶっ飛び感はありませんが、レトロでおしゃれな雰囲気はさすがのクオリティです。

他のティム・バートン監督の名作である『スリーピー・ホロウ』や『スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』のような本気のダークさを期待してしまうと、今回は高校生くらいの年齢向けの小説が元になっているので物足りないかもしれません。ですが、いつもの本気ホラーの要素も忘れずに散りばめられていて作中のスパイスになっています。

例えば敵対勢力となるホローという怪物のビジュアルが最高にかっこいいのです。目がなく、顔には無数の触手が飛び出ている口だけがあり体は細長い蜘蛛のような鋭い手足。その姿は普通の人には見えないので無言で近づいてきて、その触手で相手の目だけをくり抜いてちゅるりと食べてしまいます。この見えない敵と戦うシーンは見応え抜群ですのでぜひお楽しみに!

他にも子どもたちの中に、心臓の模型?を入れるとまるで命を吹き込んだかのように人形を自在に動かすことができる能力が登場するのですが、この人形の見た目が全体的に怖いのです。最初に出てくる殺し合い人形もそうですが、象の大きな人形を動かしているときは昔、夢に夢にみたことがあるようなゾワゾワを感じました。ギョロリとした目とふわふわ近づいてくるギャップが怖さをより引き立てています。

こうしたキュートさとダークさを混ぜ込んだ雰囲気は、この小説の奇妙な能力を持つ子どもたちとティム・バートン監督との相性がバッチリあったからこそ生まれたのだと思います。ぜひお楽しみください!


ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

製作年:2016年
監督:ティム・バートン
出演:エヴァ・グリーン、エイサ・バターフィールド、クリス・オダウド、アリソン・ジャネイ ほか

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【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

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