みる人にトラウマを植えつける!? 伊藤英明さんの怪演に注目『悪の教典』

(C)2012「悪の教典」製作委員会

 

│『悪の教典』

まるで出席を取るみたいに、先生はみんなを殺し続けたんだ。

<あらすじ>
蓮実聖司は、生徒から“ハスミン”という愛称で呼ばれ、絶大な人気を誇る高校教師。学校やPTAの評価も高く、いわば「教師の鑑」とも呼べる存在だったが、それはすべて仮面に過ぎなかった。彼は他人への共感能力をまったく持ち合わせていない、生まれながらのサイコパス(反社会性人格障害)だったのだ。蓮実は自らの目的のためには、それが最善の策であれば、たとえ殺人でも厭わない。学校が抱える様々なトラブルや、自分の目的の妨げになる障害を取り除くために、いとも簡単に人を殺していく。そして、いつしか周囲の人間を自由に操り、学校中を支配しつつあった。だが、すべてが順調に進んでいた矢先、小さなほころびから自らの失敗が露呈してしまう。それを隠滅するために考えた蓮実の解決策。それは、クラスの生徒全員を惨殺することだった…。

│文化祭仕様のキラキラした校内と、そこに忍び寄る殺人鬼の足音

2013年の公開当時は「トラウマになった」という感想があふれていたという本作。

物語の主人公は生徒からも他の先生からも大人気の英語担当 蓮実先生です。
伊藤英明さん演じるこの蓮実先生は、イケメンで生徒の悩み事は何でも真摯に受け止めて一緒になって行動をしてくれる絵に描いたような完璧な先生なのです。

学生のイベントの代表といえば!な文化祭の季節が、この高校にもやってくることで場面は大きく入れ替わっていきます。
泊まり込みで文化祭の準備を進める生徒たちの姿は青春そのもの。仲良く教室の装飾を作ったり、ふざけ合ってなんとも眩しいシーンが続きます。
余談ではありますがこの生徒たちの中には、いまをときめく俳優さんがゴロゴロと出演しています。二階堂ふみさんや染谷将太さんを始め、林遣都さんや松岡茉優さんなど、挙げればきりがないほど多くの俳優さんの制服姿は見どころです。
こうして準備を進めていると、一人が「携帯繋がらなくない?」と言い始めます(ガラケーなところが時代を感じます、いいですね)。

ここからの展開がこの映画を「トラウマ」たらしめる所以です。
本作の魅力の一つといえば、ゴア表現と言われる血しぶきが飛ぶようなシーンの表現のリアルさではないでしょうか。
直近観た中では、韓国映画の『新感染半島 ファイナルステージ』がかなりレベルが高かったのですが、ゾンビものではなく普通の生活の中での事件を扱う作品として、本作は桁違いの力の入れ方を感じます。
蓮実にとってはほんの少しのほころびを直すために起こしている事態ですが、この緊急事態に対する40名ほどの生徒たちの反応は、キャラクターに合わせて細かく設計されていて同じようなシーンが続いているはずなのに全く飽きさせません。

│原作小説にはない挿入歌が出す魅力

前半が終わったあたりから一気に加速して、最後まで駆け抜けるスピード感のある展開は原作小説を大変忠実に再現していると思います。
とは言いながらも、カラスのフギンとムニンとのやり取りや、物理担当の釣井先生、体育担当の柴原先生とのエピソードなど映画では少ししか触れられていない部分がより詳しく分かるので、ぜひ小説も読んでいただきたいです。
特に映画では冒頭でしか触れられていない蓮実の小さい頃のエピソードと、海外にいた頃のエピソードは蓮実という存在を理解することを助けてくれるはずです。

映画という限られた上映時間の中でつくる作品のため、挙げたように描けていない部分はありますが、本作では小説にはない映画ならではのおまけがあります。それは「Mack the Knife」という原作小説に出てくる歌が、この映画のためだけにアレンジされたジャズバージョンで流れるのです。
この曲に合わせて様々な奇行に走る蓮実の姿は映画ならではといえます。

「先生信じて待ってたんだよ?」
生徒の懇願虚しく、淡々と犯行を続けるシーンの伊藤英明さんの目の黒さというか色のなさは演技の域を超えた怖さがあります。
このシーンいる?というシーンも全て伏線となっておりますので、最後の回収に感心すること間違いなしです!


悪の教典

製作年:2012年
監督:三池崇史
出演:伊藤英明、二階堂ふみ、染谷将太、林遣都 ほか

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【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

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