誘拐されたら幽霊を頼れ!ジュブナイル系ホラーファンタジーの最新作…映画『ブラック・フォン』

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│ブラック・フォン

密室に鳴り響く、「死者からの電話」

<あらすじ>
本作の舞台は、子供の連続失踪事件が起きているコロラド州のとある町。気が小さく独り立ちできない少年フィニー(メイソン・テムズ)は、ある日の学校の帰り道、マジシャンだという黒風船を持った男(イーサン・ホーク)に出くわす。「マジック見るかい?」の一言を発したかと思うと、フィニーは黒いバンに無理やり押し込まれ、気が付いた時には地下室に閉じ込められていた。壁に囲まれたその部屋には鍵のかかった扉と鉄格子の窓、そして「断線している黒電話」。だが、その断線しているはずの電話のベルが突如鳴り響く・・・!それは、この部屋の恐怖と真実を知る”死者からのメッセージ”だった!一方、妹のグウェン(マデリーン・マックグロウ)は兄の失踪に関する不思議な予知夢を見たという。夢の記憶を頼りに、必死に兄の行方を探し始める―。

│幽霊からの電話をヒントに抜け出せ

今回は前回記事からの電話つながりで!? 新しめのホラー作品をご紹介!私の愛するブラムハウスプロダクションから2022年に公開された『ブラック・フォン』です。
ブラムハウスプロダクションといえば過去にご紹介した『パージ』シリーズや『ザ・クラフト レガシー』、『ヴィジット』の他にも、『ハッピー・デス・デイ』のようなコメディホラーから『セッション』のようなアツい熱血ムービーまで。ホラーをメインにしていますが、制作する作品のジャンルは様々でとても幅広く手掛けています。どの作品もとても面白く、このプロダクションから出される作品は迷わず観たくなるほどブラムハウスを信頼している私です。
そんなブラムハウスから生まれた今回の作品はどことなくファンタジーも感じられるストーリーとなっているので、まずはあらすじから。

アメリカのとある町にいるフィニーはいつもいつもいじめられている男の子。反対に妹のグウェンは喧嘩っ早い勝ち気な女の子です。兄がいじめっ子に捕まって殴られているところに妹が登場して代わりに石で殴り始めるような兄妹でした。お母さんは早くに亡くなっていますが、幽霊が見えたり正夢をみる力がフィニーとグウェンに受け継がれているという不思議な兄妹でもありました。

変わり映えのしない日々を過ごしていると、仲良しだった友達や野球の試合で以前に戦った対戦相手の子など周りで同じ年代の子どもの失踪事件が頻発するようになります。掲示板には連日新しい子どもの捜索願いのポスターが貼られ、学校でも警察でも犯人を捕まえようと大人たちが奔走しています。しかし犯人の方が一枚上手、ついにフィニーも下校中に1人で歩いているところを誘拐されてしまいます。

犯人はマジシャンだと名乗り、仮面を付けており顔が見えません。フィニーの前でわざと荷物を落として拾うのを手伝ってもらうようにしつつ、車のトランクから黒い風船を取り出します。「黒い風船?」フィニーが車に近づきながら話しかけるとあっという間にガスを吸わせてトランクに押し込み、そのまま車で走り去ってしまうのでした。皆さん、特に女性の方は明るい時間でも車の近くを通らない、通る必要がある時はなるべく人が多い方の側(路上駐車で陰になって狭くなっている方ではなく)を通るようにしてくださいね!これ約束!

こうして攫われてしまったフィニーは地下室で目を覚まします。犯人は常に仮面をつけたまま話しかけてきますがすぐに何かをしてくる様子はなさそう。しかしこんなところでのんびりしているわけにはいきません。なんとか脱出できないか部屋の中を見て回るとトイレの便器と丸まったマット、布団が一つと壁に黒電話。高い場所に窓がありましたがジャンプしても届きません。諦めかけているとリリリリンと電話が鳴り響きます。あれ、でもさっき見た時は電話線が切れていたのに……?恐る恐る出てみると無言。特に何も聞こえず受話器を戻します。少し経ってまたリリリリンと鳴る電話、再度とってみると「フィニー?」と名前を呼ぶ声が。電話線が切れていて何年も使っていない電話から聞こえるのは、なんと幽霊の声だったのです。

│黒電話ってなんで怖いんでしょうか

お母さんから授かった幽霊が見えたり話している声が聞こえたりする力を持ったフィニーと、予知夢や正夢といわれるような夢で現実に起きていることをみることができる妹のグウェンが、力を使って誘拐犯から助かる/助けようとするストーリーは胸が熱くなってしまうラストです。

この子どもたちだけで事件を解決しようとする姿は同じ子どもの誘拐を扱った『イット』シリーズや、『サマー・オブ・84』を彷彿とさせるジュブナイル感のあるホラーに仕上がっています。自転車を漕ぎながら町を探すシーンはこの年齢ならではで欠かせないですね。

特に驚いたポイントひとつ目としては、主演の兄妹役の子どもたちの演技力の高さです。前半の日常のシーンから話し方、キャラクターの個性の出し方など自然にやってのけているのがさすがです。特に泣きの演技は本当に痛くて辛くて泣いているようで見ているこっちが「かわいそうに〜」ともらい泣きしてしまいそうなほど。メイソン・テムズさん、マデリーン・マックグロウさんはネクストブレイク間違いなしなのではないでしょうか。今後の活躍に注目したいと思います!

驚きポイントふたつ目は、ストーリー全体の謎解きゲームのような伏線回収の見事さです。地下室に閉じ込められてから何度も電話を通して作戦を練って、脱出できるように実行しますがどれもうまくはいきません。ところが最後の最後で、全ての要素の回収が行われるのです。掘って登って壊して……今までやったことが無駄にならない、推理ゲームを進めた時の「そことそこ繋がるのか!」という体験がこの作品でもできます。

ちなみに余談で、なんで黒電話ってこんなに怖いの?と思って調べてみたのですが、日本ではホラー映画によく登場するからその刷り込みのようで怖いものになってしまったようです。かわいそうではありますが、音からして怖いですもんね、1人の時にあの電話が鳴ったら怖くて本当に嫌です。

また、日本では田舎にあるようなイメージがありますが、実は黒電話の元はアメリカの電話会社がデザインした外国製。海外でも古くから黒電話は使われていたようですね。この作品はジョー・ヒルという方が原作の小説『黒電話』を書かれていて、その父はホラー界のレジェンドとも言われるスティーブン・キングです。ホラー界の新鋭が描く作品にも登場する黒電話は万国共通「なぜか怖いもの」の代表なのかもしれません。

ただの誘拐事件では終わらない、ファンタジーなストーリーをお楽しみください!


ブラック・フォン

製作年:2021年
監督:スコット・デリクソン
出演:メイソン・テムズ、マデリーン・マックグロウ、ジェレミー・ディヴィス、ジェームズ・ランソン ほか

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【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

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