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576人
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456人
昭和初期から戦後まで、一人のどうしようもないけど憎めない男の半生ドラマ。
もっとコメディかと思ってたら、予想以上に哀しく心が苦しかった。
いじめ(パワハラ)、戦争、軍隊にしかない居場所、そんな中で支えになる心の交流、コミカルなところもあったけど、結構重かった。
渥美清さんのヤマショウは、寅さん以上にどうしようもなく、身近にいたら嫌だし好感は持てないけど、嫌いにはなりきれない感じだった。
そういう風にしか生きられなかった男の物哀しさ。
心の友・長門裕之と妻左幸子、安定の小金治、加藤嘉、西村晃も、人間味があってとてもよかった。
藤山寛美さんがイメージと違ったけどとてもいい役でグッときた。
最後、悲しすぎた。
教訓 酒は飲み過ぎてはいけない
寅さんじゃない渥美清さん、似たよおなキャラでよかった。
戦後17年まだまだ兵隊経験者の多かった時代、世相を感じる作品だった。
ヤマショウこと山田正助(渥美清)とその戦友の棟本(長門裕之)の、戦中と戦後の話。
子犬のような目で直情的なヤマショウとインテリタイプの棟本は、『兵隊やくざ』の勝新と田村高廣の関係に似ている。
ヤマショウは3歳で両親と死に別れて以来一人で苦労してきたから、皆が嫌がる軍隊に入っても「ここは雨が降っても三度三度のメシが食えるから天国じゃ」と語り、いったん除隊になった後にも「戦争はまだ終わったりせんじゃろうのう?わしは早いところ赤紙が来てもらわにゃ、かなわんわい」と戦争の継続を希望する。
戦後、棟本にご馳走するためにニワトリを盗んできたヤマショウを棟本は叱るが、軍隊では棟本も何度も盗みをしていたじゃないかと反論され、棟本は何も言い返せなくなる。
ヤマショウは、軍隊の外よりも内が良くて、戦争の終結より継続が良いというふうに常識と真逆の感じ方をするけど、常識的な棟本には無い一貫性がある。
ヤマショウ「わしは内地に帰ってきて腹が立ったんじゃ。内地の奴らは戦争に負けたことなんか何とも思っとらん」
軍隊を天国だと思うヤマショウのキャラクター自体が皮肉なのかもしれないし、ヤマショウの一貫性は常識的な「内地の奴ら」への風刺なのかもしれないけど、作品自体がとてもコミカルで、魅力的なヤマショウという人物をただ楽しんで見ていられる。
消灯ラッパのリズムに合わせて口ずさまれたという歌詞(この映画では字幕)、入隊時の宣誓書への署名、兵隊の流行唄、軍事演習など、細部もリアルで良い。『マダムと女房』などの当時の映画の映像の引用、芥川也寸志の音楽も楽しい。
拝啓天皇陛下様
軍隊に入隊して今まで学もなく食うに困っていた男が軍隊生活がハマっていく話。
渥美清さんの魅力で引っ張る映画で彼を見守る長門裕之さん目線で主人公を見守っていきます。初年兵は先輩にいじめられるけど、まさに純真無垢な主人公はひたすらしたがっていって軍隊生活が天職のように幸せに過ごしていく。そんな主人公に影響されて周りがどんどん変わっていく姿。戦争というヘビーな題材だけど当時の庶民たちはみんなこんな感じなんだろうなというリアルさが伝わってきてよかったです。
そして天皇の姿を見てからすっかり天皇のファンになった主人公は軍隊を出たくないと何とか居続けようとする。盧溝橋事件から終戦までをダイジェストに描きながら主人公の生活を描いていきます。
物語の中盤からは戦後になって、復員兵はみんな貧乏だけど何とか生きていく姿。ここらへんで主人公が「徴発してきた」とニワトリを普通に盗んできたりするのが怒られるとはいえいただけなかったです。
とはいえ、健気に手紙を書く姿で泣けるなんてフラフラ千鳥足で画面の向こうに消えていく姿を見て泣ける映画なんてこの映画しかないと思える作品でした。
寅さんの片鱗
憎めないねえ、山正
タイトルのインパクトも凄いものがあるが 戦争がコメディーになっちゃう1960年代の日本って最高
男はつらいよの原点
見てビックリ。なんだ「男はつらいよ」の第一作目か、と思うくらいの、とらさんがいた。
軍隊が明るく健全な感じで描かれていて、どっかのクラブ活動みたいだった。戦地が一箇所出てくるけど、腕を焼いているシーンの割には、なんか反戦的主張はなかった。
とらさんにとっては、戦中から戦後が地続きなのね、というかわらなさっぷり。激動の時代をいきながらも、政治とか、人の生き死にとかを何も考えずに、ここまで生きられるのかというのは、ある意味感動。目の前を生きるということの尊さを描いているのかしら。
こういう戦争映画もあるのね。面白かった。
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