稲妻のクチコミ・レビュー

クチコミ・レビューFilmarks

4.0

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投稿者:H 2020年10月18日

 ピアノの旋律が清子の救いの象徴である。最初にメロディが流れるのは、二階の女性のレコードからだが、その音が綱吉のスクーターのエンジン音に対抗する。ピアノの旋律にエンジン音が割って入ってくるが、レコードのおかげで綱吉を追い払うことができる。音楽とともに、憧れの女性がサッパリと清子の代わりに綱吉を帰らせるのも、象徴的だ。理想的な兄弟もピアノを嗜む。だらしない出来事を中和させるかのようにピアノのメロディが何度か劇伴として流れるが、ラストの親子の会話でメロディが盛り上がる。稲妻を目撃した清子が母に声を掛ける時、メロディが美しくなる。たまたま稲妻を見たことで吹っ切れる、この言葉にしづらい心情を、ピアノの旋律が代弁しているようだ。
 「幸福はハイカラ」と母は言ったが、その言葉の通り、清子の思う幸福はハイカラだ。救いの象徴であるピアノもハイカラだし、引っ越した先の大家の趣味もハイカラ、二階の友だちや清い兄弟もハイカラだ。生活でいっぱいいっぱいになると、幸せも不幸せも関係なくなる。あの家族の中で唯一ハイカラな本物のルビーの指輪が、清子の希望のしるしだ。

投稿者:YasutakaOtsuka 2020年10月09日

稲妻が走り、親娘が涙ながら会話する場面。母親を思い出した。最後に連絡くれたとき泣いてたな。元気かな。こんな会話してたな。でもこうして最後には笑いあって。切り替えてかないとな。固執することに意味はない。

投稿者:くろいひと 2020年09月16日


絵に描いたようなろくでもない兄妹関係のなかで、ひとり自分を持って生きる清子。
だが清子はものがたりの主人公というより、この醜い人間関係をみすえるカメラの「眼」の役割をになっている。
だからこそその「眼」が夕立の稲妻のように突如として吐く本音が、観るものの共感を呼ぶ。

なんとも鬱々とした話だが、雨上がりのラストシーンに、ジョン・フォード的な希望あるヒューマニズムさえ感じさせる秀作。

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戦後の復興時の人々の風景

投稿者:懐かしいが好き 2015年02月10日

戦争から帰って来た思える息子や婿を「だって仕方ないじゃない」と許す浦辺粂子さん演ずる母が自分の母と重なりせつなくなりました。娘役の高峰秀子さんと浦辺さんが歩きながら話すラストシーンの表情があまりに自然に見えて感動と最後の落ちの話に苦笑いしてしまいました。

いまのところ成瀬のベスト1

投稿者:zeta2 2010年09月29日

評価18点
脚本★★★★☆ カメラ★★★★★ 演技★★★★☆ 興趣★★★★★

成瀬巳喜男のホームドラマ。
林芙美子の原作を田中澄江が脚色(成瀬が作った林芙美子ものの6本のうち、4本が田中澄江)していて、私はとてもよく出来ていると思う。
母(浦辺粂子)と4人の子どもたち。主人公の高峰秀子は末っ子で、長姉(村田知英子)と次姉(三浦光子)と兄(丸山修)、それぞれ4人とも親父が違うという設定である。原作では次姉と高峰秀子は同じ父親ということになっているらしく、映画でもこの二人が仲がよい。
物語は姉二人の男模様を中心に展開し、女の身勝手さ、危うさ、男の計算づくの欲得、だらしなさに、高峰秀子がいわば全面的にNO!と言う話だ。
登場人物のキャラクター造形、個々の演技が素晴らしい。男の頼りなさ、不甲斐なさ、強欲さが見事な演技で表わされるのに対して、女は絵的に色気として強調される。成瀬のサービスでもあるのだろうが、村田知英子(長姉)と中北千枝子(お妾)のシュミーズ姿がじつに崩れていていい(比ぶれば、溝口映画「祇園の姉妹」の山田五十鈴のシュミーズの可憐さよ。って、オヤジだよ俺は)。三浦光子(次姉)のなよなよ感も絶品である。そしてそれらの男優、女優の芸達者たちを事実引き立てているのが、アイドルスターである高峰秀子なのである。小津の「宗方姉妹」で初めて高峰秀子を見たときは、その輝いているのにびっくりしたものだが、この人はやっぱり実力派なんだと改めて思った。
忘れてならないのが、浦辺粂子。ラストのシークエンス、新しい下宿先での高峰秀子と浦辺粂子の掛け合いは、私は最高級の評価を与えたい。原作では主人公は三口ということになっているそうだが(現在では簡単に整形できる)、そのようなハンディは一応引っ込めて、高峰秀子の上昇志向としたこの映画の線でも、原作の味は十分出せたのではないかと思う。
ちなみに、浦辺粂子の「なんだ五十銭銀貨かと思ったら、ビールの口金だよ」は、成瀬が仲のよかった小津の映画「麦秋」(だと思うが)で、杉村春子が笠智衆に言う「兄さん、ガマ口拾っちゃったわよ」へのプライベートエールだろう。くすっ、のダメ押しである。
抑制のきいた効果的な音楽(齊藤一郎)、縦横に動き回りながら、なおかつ複数の演技者をピタッととらえるカメラ(峰重義)、映画の入り方がストーリー的に煩雑なのを除けば、文句のつけようがない秀作だ。

地味ではあるが永遠の名品。

投稿者:彩雲飛燕 2009年06月13日

小津ばかりが長い間もてはやされて来たけれど、総合的な意味において映画監督としては成瀬の方が優れているのではないか、と私は日頃から考えているのだが、この作品も成瀬のDVD-BOXなどには納められていないにも関わらず、主演の高峰の美しさと魅力を完璧なかたちで引き出した、完成度の高い名品であると思う。小津の作品には観る者を退屈させる要素があるが、成瀬の作品には少なくともそれが無い。どんなに平凡な日常を描こうが、最後まで集中させる力量というのは、やはり監督として卓越している証拠であろう。例によって、残念ながら50年代初頭のフィルム相応になのであろうが、ノイズが多くて保存状態が良くない。最新のデジタルリマスター技術で、この名作も是非よみがえらせて頂きたいものである。せっかくの不滅の大女優高峰秀子の美貌が・・と思うと恨めしいかぎりなのであった。

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