書道教授のクチコミ・レビュー

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清張とジェームス、女性観の違い。

投稿者:ぴよさん 2010年08月08日


 この小説を映像化したというのが、そもそも渋い。ジャンルとしては一応「悪女系」小説と言えるのか、清張作品としてはかなりマイナーな部類の短編だ。
 原作からはかなり脚色されている。脚本はジェームス三木。「女性に対する視線」という両作家の感覚の違いが、図らずも同じ素材の料理の仕方に表れている。 

 平凡な銀行員である川上は、ふとしたきっかけで謎めいた女性書道家の教室に通うことになる。一方、平和な夫婦生活の傍らで、クラブの女との愛人関係に溺れ、銀行の金に手をつけてしまう…。「愛人」「悪女」「業務上横領」と、いかにも清張小説っぽい要素ながら、そこに「謎の書道教室」という要素が入ってくることで、話は予想しがたい方向へ動いてゆく。(途中ふと『赤毛連盟』を連想)

 小説では「上品な初老の女性」という設定の書道教授が、ドラマでは杉本彩(笑)このキャスティングで、もう原作と同じ展開にはならないのが知れる(珍しく清楚な役ではあるが)。また船越英一郎が画面に現れるだけで、一気に二時間ドラマの匂いが漂ってくるのは、いたしかたないか。彼を食いものにしていく愛人役が、荻野目慶子。これがまた、相当タチの悪い女に描き直されている。船越ならずとも、○○してやりたくなるような。
 川上が書道教室を自分の犯罪に利用していくまでの過程がスリリングなのだが、ドラマではそのシークエンスをバッサリと切ってしまった。このへんは物語の筋立てより、人物描写に関心があるジェームス三木の仕事だなぁ。


 松本清張という作家は、周辺状況を緻密に描写することで、「こういう状況なら、この人はこう考えるのではないか」と読者自らに想像させる。直接的に「この人間はこう考えた」とは書かないことで、逆に物語に深みを作るのだ。映像化した時、役者がその緻密な設定を理解しないままに演じてしまうと、行動原理のよく分からない人物になってしまうと思う。

  …『ゼロの焦点』の○○さんの様に。









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