観た人
9470人
観たい人
11028人
生きづらさの中で葛藤しているそれぞれ登場人物の演技や写し方が妙にリアルだった。
最後もとても綺麗な終わり方ではないけどそれぞれの人生に希望がちらっと見えるような感じがまたリアルだし印象に残った。
通り魔殺人事件で妻を亡くした男、愛のない夫と姑と暮らす雅子様大好きな女、自信過剰なゲイの弁護士の男を中心に様々な人間を描いた群像劇。
タイトルにある意味そぐわない、どうしようもない人たちの人間ドラマ。
彼らに感情移入できなければ最後の最後まで盛り上がらなさがハマらなかったけど、最後だけは、こんな物語りなのにラストの妙な爽やかさだけが記憶に残った。
衝撃のクライマックスがあるわけでもない。
派手な演出、演技があるわけでもない。
それなのに、観た後にしばらく動けなくなる…そんな不思議な力を持った作品。
物語の登場人物たちはみな何かに苦しんでいる。何かに囚われて生きている。
そして何らかのきっかけで心がちょっとだけ変わる、感動的な曲が流れ始める。
だけど、それだけ。曲の後の無音が教えてくれるように、物事はそのまま、現実は何も変わらないままである。
心が変わったからって、すぐになりたい自分になれるわけでも、誤解が解けるわけでもない。凄腕弁護士が手を差し伸べ、裁判を勝たせてくれるわけでもない。
だけど「何か」は確実に変わるんだ。残酷な現実は変わらなくたって、心がちょっとでも前に向けば、前を向く決心がつけば。そしたら人生は、幾分か素敵なものになる。
そんな心の絶妙な感覚を、映像に、物語に染み込ませて伝えてくれた、なんとも珍しい映画でした。
当たり前の日々
タイトルのイメージとはかなりかけ離れた感じの作品で、さほど有名でもないキャスト陣ではあるがそれぞれの演技力はかなり評価できる。
登場する3人の主人公、複数のエピソードを巧く絡め合わせてストーリーが展開してゆく。
エリート弁護士、ゲイで恋人と同棲している。冒頭で依頼人の元女子アナから離婚訴訟の依頼、彼女の支離滅裂な論理には驚かされるが、ちゃんと終盤への伏線になっている。
妻を通り魔事件で失った男、橋梁点検の仕事をしているが、生活は健康保険が支払えない程苦しい。
役所でのやりとりなんか現在の格差社会の一例なのだろう。
そして自分に全く関心を示さない夫と姑と暮らしている主婦、性欲が溜まると夫が合図をして無味乾燥な性欲処理が営まれる。
そんな彼女がパート先の取引業者と親密になる。
冴えない男ではあるが今の生活から抜け出したい彼女にとっては王子様的な存在に映ったのかもしれないが、実はシャブ中毒。
ここに「美人水」なる怪しげな商品を詐欺まがいの手口で売りさばこうとしている元準ミスを自称するスナックのママも登場、今の世の中の象徴の一つかもしれない。
いろいろあったが3人の主人公は結局当たり前の日々の暮らしに戻って行く。
多分玄人受けする作品だと思う。
無名な俳優たちが見せる自然な演技に引き込まれた
橋口監督は映画の中でどこまでリアリズムを表現できるかに挑戦しているのだろうか。散らかった生活臭のする部屋のセットは、豪華絢爛なお城のセットと同じくらい再現するのが難しいのではないか。全く不自然さを感じさせないセットの中でほとんど無名な俳優たちが見せる自然な演技に引き込まれた。妻を通り魔に殺された男の絶望的な嘆きは、この世の中の不条理を改めて思い知らされ、息苦しくさえなった。
重いテーマ
一番よかったのは片腕をなくしたアツシの上司。
腕をなくした彼の、やさしい達観した思いがアツシの心を癒していった。
人間の再生を描いた作品ですが、主役の3人の役者が無名で、わきに出ていた光石研、安藤玉恵、リリーフランキーがやっぱり光ってしまった。
レビューを書いてみませんか?