ホラー好きとして、韓国作品がもはや1つのジャンルとして確立しているのではないかと思う今日この頃。ゾンビやサイコ作品がとても印象的ですが、アニメーションでも面白いホラー作品があります。
物語は「私は愛されたかっただけ…」というナレーションとともに始まります。
主人公はイェジという、芸能界でメイクさんとして働く女性。彼女は小さい頃から自分の外見に自信がなく、ずっと頑張っていたバレエの世界を諦めてしまったという経験があります。
今日もテレビ番組に出演する女優さんのメイクをするため控え室にいますが「こんな醜い女、部屋に入れないで!」と追い出されてしまいました(こんなに気の強いのもどうなんだという気がしますが)。
落ち込んだ気持ちの中、番組の収録中に「ちょっとだけしか映らないから出演してほしい」というお願いをされてしまい、渋々受けることに。すると、その番組の放送後「何このキモいやつ」「ブサイク」などの誹謗中傷が自分の写真と共にアップされていることを知り、イェジはどん底に落ちてしまうのでした。
それから1ヶ月以上経ったある日のこと。仕事にもいけず、部屋に引きこもるイェジの元に突然知らないアドレスからメールが届きました。メールを開いてみると、そこには「整形水」の文字が。整形できる? 水で? 疑問に思い、特にリアクションはしていなかったはずなのに、気づけば家に整形水が入った段ボールが届くのでした。
ここからのイェジの決断が早かった。迷いなど一切なく、説明動画をみた後すぐに顔の整形を決行します。やり方はとっても簡単。整形水の原液を洗面器などに入れ水で薄めた後、ホースなどを口にくわえて呼吸できるようにしたら20分間顔をつけるだけ。あれ? 20分経っても顔がそのままですか? いえいえ、ほっぺの辺りが垂れてきていますね、それではそこをちぎっていきましょう〜…
あっという間にイェジの顔も、心も変わってしまいます。
(C)2020 SS Animent Inc. & Studio Animal &SBA. All rights reserved.
アニメーションならではのホラー要素
外を歩けば誰もが振り向く美人、ソレとして生まれ変わったイェジは、それまでできなかった男の人とのデートや水着姿になるなど人目を集めることをひたすらやっていきます。
外見を悪く言われながら生きる人生を歩んでいたイェジにとって、見た目が変わるだけで周りの態度が変わるのがおかしくって仕方がありません。それまでの憂さ晴らしをするかのように贅沢三昧、わがまま三昧の生活に変わってしまうのでした。
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ここまでのストーリーを読んでいくと「なるほど、整形したことによって反対にどんどん落ちぶれちゃった話ね」と思う方もいるかもしれません。ところがそんなにシンプルなものではないのです、なぜならこの作品のジャンルは「整形サイコホラー」なのですから。
私が思うこの作品のホラーポイントとして「不気味の谷現象」があります。この現象は絵やCG、ロボットなど何でもいいのですが、人間の見た目に寄せた像を作り上げるときに、最初はぎこちないものがどんどん精巧に人間の見た目に似ていくという過程がありますよね。その中で、突然起こるのがこの不気味の谷現象です。人間にとても似ているのに違和感や薄気味悪さ、恐怖感を生じさせる何かがあると本物の人間から見ると感じてしまう瞬間が発生してしまうのだとか。
この作品のすごくリアルに作り込んでいるのに絶妙に気持ち悪いCGアニメーションのせいで、整形後の顔の不自然さがこの不気味の谷現象を起こさせます。
可愛いはずなのにどこか違和感…という不思議な気持ちを抱きながらホラー展開に落ちていってしまいます。
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物語の終盤で何度も問われる質問があります、「あんたは愛されてる?」
愛されるって何でしょう?外見を褒められてチヤホヤされることでしょうか、違いますよね。ではイェジは愛されていたのでしょうか。その様子はぜひ最後まで観ていただければと思います。
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製作年:2020年
監督:チョ・ギョンフン
声の出演:ムン・ナムスク、チャン・ミンヒョク、チョ・ヒョンジョン、キム・ボヨン ほか