ぜひ、ハサウェイ・ノアがどういう人物なのか、いつまでも心のなかに存在し続ける「クェス・パラヤ」とは誰なのか? そして、ガンダムとはどんなことを訴えかけたい作品なのか? これらを理解する上でも非常に重要な作品です。
1.ガンダム史上、衝撃的な「主人公の死」により決着をつけるという結末を知っておいて欲しい
単純なロボットバトルアニメではなく、正義を貫くことの難しさや私利私欲に駆られる大人たちの醜さなど、「主人公の死」に至るまでのストーリーに集中してもらいたいから。
特にハサウェイの周りにいる、ヒロイン、ライバル、そして父親の「ブライト・ノア」。彼らの表情や心の動きをぜひ注視しながら物語に浸りましょう。
また、『逆襲のシャア』と同様に劇場版と小説版が互いにパラレルワールドになっている可能性も否定できないため、結末は「果たして結末はどちらに転ぶのか?」という見方をして楽しむことができるかもしれません。
2.登場人物の言葉で語られない原作者「富野由悠季」の考えに触れることができる
機動戦士ガンダムの作者「富野由悠季」。富野氏の作品はざっくりいうと、「大人になりきれない中二病の男たち」の話。シャアなんてもう、そのままの存在ですよね。
そんな男たちの声にならない心の声をしっかりと小説の中では描かれているのです。
もちろん、映画の表現の中で表情や動きからその意図を汲み取ることもできるでしょうが、なかなか初見だと難しいと思います。
また、時に誰の言葉でもない「地の文」で第三者が小説の登場人物に語りかけているような部分がちらほらあります。
その一例がこちら。
身構えている時には、死神は来ない。それも戦場の摂理なのだ。
実はこれに酷似したセリフが映画には存在することがわかっています。
しかも、そのセリフを小説には出てこないアムロ・レイがハサウェイに向かって投げかけていることが第二弾の予告編で明らかにされました。
身構えている時には、死神は来ないものだ。
アムロからはガンダムを、シャアからは考え・イズムを受け継いだと言われるハサウェイ。
しかし、本当はアムロとシャアの思念、どちらも受け継いでおり、ゆえに葛藤し続けているということを表現しているのかもしれません。
3.ライバル・ケネスが描く未来が描かれる可能性
ハサウェイの死を受け入れたライバル「ケネス・スレッグ大佐」が小説の最後にはこう言っています。
次のマフティーをつくる用意でもするか。
シャア・アズナブルとかハサウェイ、アムロでもいいな。そんなのが復活する組織をつくってみたいな。
そう、ケネスは仕方なく地球連邦政府組織に所属しており、シャアやハサウェイのイズムに心の底では賛同していたことがわかりますよね。
そして、アムロという存在もまた、討つべき相手ではなく、手法は違え、同じ志をもつ人物であったことを認めているわけです。
そんなケネスが日本で一体何をするのか。次回作「機動戦士ガンダムUC2(仮)」の制作が決定している中、どのようにつなぐ話が表現されるのか、されないのか。
この辺りも小説を読んでいるからこそ考えを巡らせることができるわけです。
歴史が長く、シリーズも多い作品ですから、事前知識があるのとないのとでは明らかに作品の楽しみ方や満足度が変わってくる、そんな印象です。
だからこそ、ネタバレにはなりますが、小説を読んでから映画を観に行くことを強くおすすめします。
小説 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ<新装版>
出版年月:2021年4月
出版社:KADOKAWA
著者:富野由悠季
5.映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の公開情報
『閃光のハサウェイ』の小説版は本当に後味が悪いです。挿絵がない新装版を読みましたが、元々は挿絵もありさらに鬱になりそうな内容です。
その作品が映像になった場合、どんな表現がなされるのか。アニメではありませんが『ミスティック・リバー』に近いような感想を抱いてしまうのか。
CMやPVを観る限り、そういった印象はまったくありませんが、そういう作品かもしれないと思うと俄然興味が湧いてきますよね。
遂に2021年6月11日(金)に公開決定。ぜひ、みなさん劇場でご覧ください!!
■公開情報
【作品タイトル】
<あざやかな閃光 新たな世界の始まり――> 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
【公開予定日】
2021年6月11日(金)
【STORY】
第二次ネオ・ジオン戦争(シャアの反乱)から12年。
U.C.0105——。地球連邦政府の腐敗は地球の汚染を加速させ、強制的に民間人を宇宙へと連行する非人道的な政策「人狩り」も行っていた。
そんな連邦政府高官を暗殺するという苛烈な行為で抵抗を開始したのが、反地球連邦政府運動「マフティー」だ。リーダーの名は「マフティー・ナビーユ・エリン」。その正体は、一年戦争も戦った連邦軍大佐ブライト・ノアの息子「ハサウェイ」であった。
アムロ・レイとシャア・アズナブルの理念と理想、意志を宿した戦士として道を切り拓こうとするハサウェイだが、連邦軍大佐ケネス・スレッグと謎の美少女ギギ・アンダルシアとの出会いがその運命を大きく変えていく。
【キャスト】
ハサウェイ・ノア:小野賢章
ギギ・アンダルシア:上田麗奈
ケネス・スレッグ:諏訪部順一
レーン・エイム:斉藤壮馬
アムロ・レイ 古谷 徹
ガウマン・ノビル:津田健次郎
エメラルダ・ズービン:石川由依
レイモンド・ケイン:落合福嗣
イラム・マサム:武内駿輔
ミヘッシャ・ヘンス:松岡美里
ミツダ・ケンジ:沢城千春
メイス・フラゥワー:種﨑敦美
ハンドリー・ヨクサン:山寺宏一
【主題歌】
[Alexandros]「閃光」(UNIVERSAL J / RX-RECORDS)
【スタッフ】
企画・製作 サンライズ
原作 富野由悠季、矢立 肇
監督 村瀬修功
脚本 むとうやすゆき
キャラクターデザイン pablo uchida、恩田尚之、工原しげき
キャラクターデザイン原案 美樹本晴彦
メカニカルデザイン カトキハジメ、山根公利、中谷誠一、玄馬宣彦
メカニカルデザイン原案 森木靖泰
色彩設計 すずきたかこ
CGディレクター 増尾隆幸、藤江智洋
編集 今井大介
音響演出 笠松広司
録音演出 木村絵理子
音楽 澤野弘之
配給 松竹ODS事業室