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不思議で怖くて優しくて、懐かしさが溢れる『ゆうやけトリップ』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】


『ゆうやけトリップ』

あえて「塗」と表現をしたくなるような一コマ一コマの描かれ方。
独特な世界観で不思議さが全体に広がるような印象を読む者に与えてくる唯一無二の作品

新聞部の心霊取材班になった蜷森茜と彼女の隣のクラスの雨村藤乃。
ふたりの少女が学校の帰り道に心霊スポットに寄り道する。
そんな日常を描いた作品が今回紹介したい『ゆうやけトリップ』だ。

「幽霊とすれ違うトンネル」
「異界に迷い込むループ怪談」
「血が垂れ落ちてくる生首神社の鳥居」

など学校の七不思議のようなよくある怪談のような謎ではなくどことなく背筋がゾッとなるようなそんな心霊スポットを毎回ふたりは寄り道していく。

ふわふわして読んでいると思わず気持ちが和んでしまうような話のテンポなど、心霊スポットものでありながら日常ものの魅力全開のふたりのキャラクター。

そんなちぐはぐにも思える心霊スポットもの×日常ものの可愛らしさをひとつの作品として成立させているのは独特なこの作品の絵柄だ。
オールカラー作品ではないのだが、あえて「塗」と表現をしたくなるような一コマ一コマの描かれ方が独特な世界観を表現し、不思議さが全体に広がるような印象を読む者に与えてくれる。

例えるならば小学生の頃、学校の帰り道にいつもとは違う知らない道を歩いてみるような怖さとワクワク感が同時に存在しているような、そんな世界観なのだ。

そんな作品である『ゆうやけトリップ』
しかしその中に1つ何とも言えない奇妙な話があるのだ。それが「異界に迷い込むループ怪談」へ散歩に行く話。
この1話は何とも言えない、考察すればするほど深みにはまるような怖さがある。

「哲学的ゾンビ」のような見えかけからはその事実は認識できない。
そんな認識できないものに対しての怖さ

「いつも明滅している二又電灯を目印として、逢魔が時に電灯が点いてから日没までの間に時計回りに四周階段を回ると、よく似ているけどどこか違和感のある異界に迷い込む事がある」という階段を実際四周回ってみようというのが第2話の内容だ。
ふたりで仲良く思わず読んでいるとニッコリしてしまうようなやり取りをしながら四周を回ったふたり。そこでみたものは?? という内容。

結論から言えばいくつかの違和感は残しつつも、いつものように何事もなくエンディングを迎えるこの話。
しかしそこが「違和感のある異界のような場所」なのか「何事もなかったのか」最後まで全く提示はされずに終わるのだが……。

実際こういった怖い話は「哲学的ゾンビ」のようなもので、見えかけからはその事実は認識できない。子供の頃はそんな認識できないものに対しての怖さに震えた方も多いのではないだろうか。

この作品はどこか全編通して懐かしさを感じる。
それはきっと今は忘れてしまった感情を呼び起こしてくれるからではないだろうか?

なかなかこういった作品に出会えることはないように思う。
ぜひ気になった方は一度手に取ってみて欲しい。

(文:仕掛け番長)

仕掛け番長のおすすめ本

ゆうやけトリップ

ゆうやけトリップ

出版年月:2021年3月
著者:ともひ
出版:芳文社

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。絶版書の復刊プロデュースを数多く仕掛け、ヒット本を発掘することで知られ、読者や出版業界関係者に「仕掛け番長」の愛称で呼ばれる本が大好きな日本男児。

仕掛け番長の記事一覧 Twitter(@maron_rikiya)

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