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生々しく切なさと痛みを伴う恋の話『去る者は日々に疎し』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】


『去る者は日々に疎し』

恋人に先立たれた「死の匂いを感じる事が出来る」男、辛い過去を持ち決して幸せとは言えない日常を過ごす「死んだ人のメッセージを感じる事が出来る」女の痛すぎる恋の物語

恋愛漫画は大きく分けて2種類存在する。
ひとつはドキドキや愛おしくなるような瞬間、瞬間をクローズアップした、読むと恋がしたくなるような恋愛作品。もう一つは恋のもう一つの側面を描く生々しく切なさと痛みを伴う恋愛作品だ。

今回紹介する『去る者は日々に疎し』は、まさにそんな後者の要素が強い作品である。

この作品は恋人に先立たれた「死の匂いを感じる事が出来る」男性と、辛い過去を持ち決して幸せとは言えない日常を過ごす「死んだ人のメッセージを感じる事が出来る」女性2人の出会いから始まる物語だ。

先に言いたいのは、この作品は1巻では“何か雰囲気のある不思議な作品”という印象をもつ程度で、そこまでの魅力を感じることはないと思う。むしろ登場人物の綺麗ではない部分を隠さず描くところから、読むのをやめてしまう方もいるかもしれない。
しかし、物語が動き出す2巻。
一気に作品の本質が打ち出され始めこれでもかと読者にメッセージを伝えてくる。
生々しい表現をしなければ描けない深さと切なさがこの作品には刻まれていくのだ。

この作品で最も辛い状況にいるのはヒロインである『希望』なのだ

この作品は死の匂いを感じる事が出来る男性「弓削命」、死んだ人のメッセージを感じる事が出来る女性「妻夫木希望」の2人の目線で物語がそれぞれ描かれていく。
弓削は仏壇屋として働くサラリーマンで、死に別れた元恋人の事が忘れられずに毎日を過ごしている。そんな彼は、何故か死に近い想いを持っている人間に甘い独特の匂いを感じることが出来る不思議な感覚を持っている。
そんな彼がふと感じたその匂い、その先にいたのが妻夫木希望、彼女だった。
ふと、彼女を救わないとならないという思いに駆られ行動を起こす弓削命。
手に持っていたペットボトルが危険と感じそれを叩き落とす。その行動に驚き彼に怒りをぶつける希望。しかし彼女は彼女で彼を見て「どれだけ憑いているのよ」と意味深なセリフを残しそのままそこを去っていく。

実は弓削が叩き落したペットボトルの水には毒が入っていたのだ……。

2人の“人の死に関する特別な感覚”以外この作品にファンタジーはなく、2人の過去の話も、そして「希望」彼女を取り巻く現在の状況も、重く痛みを伴うようなものになっている。
そしてそんな2人だからこそ救える命がある、理解できる想いがあるという、悲しさの中になる光がこの作品のまさに「希望」なのだと思う。

最後に伝えると、この作品で最も辛い状況にいるのはヒロインである希望だ。
しかし彼女の存在は弓削、そして読者にとってこの作品の光なのだ。

思えば光と闇は隣り合うものであるというのは、葉月京先生作品の根本にあるテーマなのかもしれない。そんな想いがひときわ強く表現されているのがこの『去る者は日々に疎し』ではないだろうか。
彼女はこの物語の中で彼女にとって唯一の光を見つける。

どうにか2人に幸せになって欲しい。
そう思わずにはいられないのは私だけではないだろう。

(文:仕掛け番長)

仕掛け番長のおすすめ本

去る者は日々に疎し

去る者は日々に疎し

出版年月:2021年11月
著者:葉月京/折笠りょこ
出版:秋田書店

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。絶版書の復刊プロデュースを数多く仕掛け、ヒット本を発掘することで知られ、読者や出版業界関係者に「仕掛け番長」の愛称で呼ばれる本が大好きな日本男児。

仕掛け番長の記事一覧 Twitter(@maron_rikiya)

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