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あまりの鬱展開に大きな話題になった「鬼」を含む浄土るる短編集『地獄色』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】


『浄土るる短編集 地獄色』

『地獄色』に収録されているのは鬱作品という言葉では語れない本当の精神的な不安を描いた問題作ばかりだ。

2019年、当時17歳だった浄土るる先生の「鬼」という作品が小学館新人コミック大賞で佳作を取り公開された。
公開されるやSNSを中心に大きな話題となったので、知っている方は多いのではないだろうか?
小学生の少女江田子豆を主人公とした本作は、クラスの人気者で運動とおしゃべりが大好きな普通の女の子と、彼女が自身を紹介した次の瞬間、彼女の母親が彼女の頭からビールをぶっかけているシーンが描かれる。
しかしそのコマには「お父さんはいなくて、お母さんと妹の三人暮らし♪」と楽しげな彼女自身の紹介文章が続いているのだ。
少女のかなり酷い家庭環境がこの後も描かれ続け、学校での明るい彼女と家での描写のアンバランスさが何とも言えない不安感を読者に与えてくる。
しかしこの「鬼」の中心にあるのはそんな彼女と彼女の家族の話ではない。

彼女のクラスに転校生がやってくる。
子豆とこの転校生ポンポコの物語が「鬼」なのだ。
明るい性格でないポンポコは転校すぐにクラスの虐めの対象となってしまうが、しかし子豆は気にせず彼と友達になろうと話しかけ続ける。
そして迎える結末は、誰にも想像できないようなものだったのだ。

『地獄色』は出来れば気持ちが安定している時に読んでいただきたい。
実際私は読んだときに1週間以上立ち直ることが出来ないほどのショックを受けた。

精神的に安定しない時に感じるような不安感があるが、まさにそれがこの短編集全体に漂っている。収録されているのは「猫殴り」「鬼」「神の沈黙」「こども」。
「鬼」以外の作品も、1つの例外もなく全ていわゆる“鬱作品”と言われるジャンルの作品だが、しかしどの作品も鬱作品とそんな一言で表現してしまいたくはないとも思ってしまう。
もちろん作品を紹介する上でわかりやすい言葉での表現は必須なのだが、それでもここまで深く読む者の気持ちを脅かす漫画を表現するのに、そんな言葉では足りないと思えてしまうのが正直なところなのだ。
そう考えるとタイトル『地獄色』というのはこの1冊を非常にうまく表現した言葉のように思う。

最後に。
『地獄色』は、出来れば気持ちが安定している時に読んでいただきたい作品です。
私は「鬼」を読んだときに1週間以上立ち直れませんでした。

事前に「どんでん返し」と聞いていても驚ける「どんでん返し」作品はその驚きが想像以上なのでそうなるのですが、この『地獄色』は落ち込むと聞いていてもその想像を遥かに超えたところにある絶望を感じてしまう可能性が高いです(私はそうでした)。

凄い作品なので、まだ『地獄色』を読んだ事がないという方にもぜひ読んでいただきたいのですが、読むのにいいタイミングで読んでいたければと思っています。

(文:仕掛け番長)

仕掛け番長のおすすめ本

浄土るる短編集 地獄色

浄土るる短編集 地獄色

出版年月:2020年11月
著者:浄土るる
出版:小学館

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。絶版書の復刊プロデュースを数多く仕掛け、ヒット本を発掘することで知られ、読者や出版業界関係者に「仕掛け番長」の愛称で呼ばれる本が大好きな日本男児。

仕掛け番長の記事一覧 Twitter(@maron_rikiya)

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