可愛いヒロインにも恐怖を感じる存在にも。等しく終わりは訪れる。『夢見が丘ワンダーランド(4巻)』【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】

│可愛いヒロインも考察をさせるような謎も、恐怖を感じるような存在も。等しく迎える「最終回」にどんな結末が待っているのだろうか

突然なんでも願いが叶うようになった日々の中で過ごす誰かの物語を描いたオムニバス作品「夢見が丘ワンダーランド」最終巻が発売された。

どんなものでも最後には終わりを迎える。
この物語で描かれてきた願いが叶う世界にも、唐突に終わりを感じさせる事件が起きた。

ひとり暮らしの男子高校生たかしと、その元に「恩返しに来た」と現れた自称ツルの美少女ターニャさんとの一向に恩を返さないドタバタラブコメ同棲生活にも、この世界の謎を探る教授とその教授と結ばれるためなら何でもする闇の部分を感じさせるクレアの日々にも。大好きなアイドルのドッペルゲンガーを生み出し自分に都合のいい自分に想いを向ける彼女を作り出したストーカーにも…。

この最終巻では今までオムニバス形式で描かれてきた登場人物たちがその終わりに向かう姿が描かれている。
可愛いヒロインも考察をさせるような謎も、恐怖を感じるような存在も。
等しく迎える「最終回」にどんな結末が待っているのだろうか。

│そして最後のページは物語が結末へ向かう現実の残酷さを告げる

そんな最終巻だが、収められた1話目は「だから私は」という著者である増田英二先生の代表作「実は私は」の登場人物たちの物語のその後が見られるまさかのサービス回!
物語自体も「実は私は」で校長であった悪魔の茜を中心とし、「実は私は」を思わせるおバカな展開を楽しめるが、実はこの回はそのおバカな展開とは裏腹にこの世界の謎を解く重要回になっているのだ。全ての答え願いが叶う世界になった驚きのきっかけも語られる。
正直友情出演的な演出だと思っていたものが、こんな形で回収される伏線だったとは…。
読者も驚きを通り越してもはや笑顔になってしまう事間違いなしだ。
そしてそんなサービス&回収の展開の後で今後の展開を思わせる2つの願いが大きく描かれる。
恩を返さない自称ツルの美少女「ターニャ」と、この世界の闇を感じさせる存在であった「クレア」。この作品の2人のヒロインの会話という形で。

そして最後のページは物語が結末へ向かう現実の残酷さを告げる。

この結末はぜひ実際に作品を読み、ダイレクトにこの感情を味わっていただけたらと思う。

最期になるが、4巻には最終話のその後のオムニバスで描かれた登場人物たちが描かれている。これも連載で追いかけていた読者にとってむちゃくちゃ嬉しいものになっているので、ぜひ読んでみていただきたい。

『夢見が丘ワンダーランド』は本当に素晴らしい作品だと思いっきり語り合いたくなるようなそんな作品だった。

増田英二先生の漫画は笑いとドキドキと感動と熱量を同時に心にドカンッと送ってもらえるようで本当に大好きで、色々な方にオススメしたい。この『夢見が丘ワンダーランド』を読んで面白いと思ったらぜひ『実は私は』『さくらDISCORD』『週刊少年ハチ』『透明人間の作り方』なども読んでみていただけたら嬉しい。

次の作品を今はこの『夢見が丘ワンダーランド』を繰り返し読みつつ楽しみに待っていたいと思う。

(文:仕掛け番長)

│仕掛け番長のおすすめ本

 

夢見が丘ワンダーランド(4巻)

全4巻発売、3巻までレンタル中

著者:増田英二
出版:秋田書店

“仕掛け番長”栗俣力也

【コンシェルジュ】仕掛け番長

栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』

Twitter(@maron_rikiya)

一覧に戻る