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人として生きるか、植物として散っていくか。人生における重大な選択を迫られたら、どう生きる?――『フールナイト』

フールナイト

新人とは思えない作風&画力で心の奥底に訴えかけてくる

悲観的な世界観を打ち出した作品に、うまく言語化することが難しいのだが、何とも言えない“甘美さ”のようなものを感じ、不思議と心引かれてしまうのはなぜだろうか。今回取り上げる『フールナイト』もまた、厚い雲に覆われて太陽の光が差さなくなり、植物が枯れ酸素も薄くなった遥か未来の地球を舞台に、人を植物に変える技術“転花”により生き延びる中、「人として生きるか」「植物として生きる」という選択を迫られる…。何とも言えない、希望と絶望がない交ぜになったようなテイストにふるえてしまう。

人生に切望したとき、「消えてしまいたい…」「植物にでもなりたい…」といった考えが、ふと頭をよぎることもあるかもしれない。本作では“転花”することで植物として生まれ変わることができ、しかも酸素不足に悩む人類の役に立てるという。こうなると、心理的ハードルは下がりそうだし、人として希望を見いだせないならせめて…という思いにかられることも想像に難くない。

そうした中、主人公・神谷十四郎は生きる意味を失い“転花”を希望するのだが、届け出を提出し担当職員となったのが幼なじみだったという、数奇な運命がまた過酷でドラマティックなストーリーを紡ぎ出していき、どんどん物語世界へとのめり込ませてくれる。

“転花”を受けた人間は“霊花”と呼ばれ、完全体になるまで2年の時間が必要に。そして他の“霊花”の声を聞けるようになることから、物語は新たな局面を迎え、読み始めたときはテイストの異なるスリリングでサスペンスフルな展開を見せるのも見応えが抜群だ。重厚で考えさせられる人間ドラマも抜群だが、スペクタクルな要素を織り交ぜることで、エンタメ作品としての幅の広がりと訴求力のアップがあることは間違いないだろう。多方面から引き込むテイストは圧巻だ。

未来を舞台に現実には存在しない技術があるなど現実とは離れた位置にある物語であるものの、先が見えず絶望が近しいという意味において、痛すぎるほどのリアリティーも。主人公と世界の行き着く先には、いったい何が待ち受けているのだろうか。


フールナイト

著者:安田佳澄/ 出版社:小学館

フールナイト

4巻まで発売、3巻までレンタル中

【フリーライター】遠藤政樹

【フリーライター】遠藤政樹

映画やドラマ、アニメにマンガ、ゲーム、音楽などエンタメを中心にインタビューやスチール撮影ありのイベント取材、コラム、レビューを執筆。IT系や企業案件もこなせるフリーの編集・ライター。お仕事も随時、募集中。

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