「タイトルが“アットホーム”なのに中身はそうではない皮肉さがある」―映画『at Home』竹野内豊インタビュー

竹野内豊

「演じたことのない役に挑戦したい」という言葉通り、40代を迎えてからの竹野内豊さんは骨太な戦争ものからラブコメディまでさまざまな作品に挑戦している。主演最新作『at Home アットホーム』は異色のホームドラマ。主人公・空き巣泥棒の和彦が、とある出会いを機に血のつながっていないワケありの家族の父親となっていく姿を演じた。難しい役とどう向き合い、家族について何を考えたのか──。

──この映画の主人公・和彦を演じられるのは竹野内豊さんしかいないと、蝶野監督と三宅プロデューサーの熱いオファーがあったそうですね。

竹野内:蝶野さんは『太平洋の奇跡 −フォックスと呼ばれた男−』の平山監督の右腕として現場にいらっしゃった方で、プロデューサーの三宅さんは『あの空をおぼえてる』でご一緒したことがあります。お二人とまた仕事ができるならぜひ引き受けたいと思いましたし、物語も──タイトルが“アットホーム”なのに中身はそうではない皮肉さがある。そういうところが興味深かった。同時に難しい物語だと感じました」

──たしかに。職業は泥棒、妻は結婚詐欺師、息子は偽造職人……という犯罪一家。誰ひとり血のつながりはないのにものすごく愛に満ちている複雑な設定です。そのなかで父親像をどう構築していったのでしょう。

竹野内:これまでに何度か父親役を演じたことはあっても私自身はまだ父親になったことはないので、考えてもイメージは湧いてこなくて。父親像を意識するよりも血縁関係のない特殊な設定の家族のなかの中心にいる人物として居ようと思いました。でも、難しい役を任される=必要とされていることは嬉しいことです。

(C)映画『at Home』製作委員会

(C)映画『at Home』製作委員会

──やり甲斐があったわけですね。脚本を読んだとき、この家族についてどんな感想を抱きましたか。

竹野内:特殊な家族ではあるけれど希望の持てる話であること、それが共感に繋がりました。一方で、現代は信じられないような事件が連日ニュースで流れてくる。そういう意味では現代に何かを提示する、考えるきっかけとなる作品でもあるんじゃないかと。私自身はごく普通の家庭環境で育ってきましたが、当たり前だと思ってきたことが当たり前じゃなくなっている時代だからこそ、こういう物語が映画として存在してもいい、必要だと思いました。

──そう考えるとタイトルの“at Home アットホーム”はとても深いですね。家族について、和彦を演じる前と後、考え方に変化はありましたか。

竹野内:僕も出演者もスタッフもみんなが「家族とは何か?」を考えたと思うんです。ただ、この映画の森山家のような家族も含めて家族とは何かを考えると、答えはおそらく出てこない。家族とはこういうものだと答えを出してはいけないことをこの映画は伝えている。なので、物語の本当の始まりはクライマックスの先にある。ずるい描き方かもしれないですが、観客それぞれが映画を観終わったときに感じる余韻──あの家族の行く末をどう想像するか、それが面白さでもあるんです。

(C)映画『at Home』製作委員会

(C)映画『at Home』製作委員会

──クライマックスに繋がるあの出来事、和彦が父親として決断を迫られるシーンはとても切なかったです。

竹野内:切ないですよね……。和彦は心のどこかで自分のやっていることも家族の在り方も社会的に矛盾していると感じている。そして、悲しい事件が起きてしまう。あの場所で疑似家族を終わりにすることが彼にとって家族を守ることだったのではないかと解釈しています。あのシーンは廃墟ビルを使って3日間にわたって撮影したんですけど、怒濤の3日間でした。

──今回の和彦役、竹野内さんの俳優としての新しい一面を見せてもらった気がします。自分自身でも新しさは感じたのでしょうか。

竹野内:自分では今までと何が違うのかは実はあまり分かっていなかったりするんですが、「役の幅が広がったね」「今までと何か違うね」と声をかけてもらえるのはすごく嬉しいことです。今回は泥棒役、父親役でしたが、他にもやってみたい役はたくさんあります。チャンスがあればアクション映画もやってみたかった。こう見えても中高生のときに器械体操をやっていたこともあって意外と身軽だったりするんです。あまり動かないイメージがあるみたいですけどね(笑)。

(C)映画『at Home』製作委員会

(C)映画『at Home』製作委員会

──活発に動き回るイメージはあまりない……かもしれないです(笑)。寡黙なイメージが強いです。

竹野内:ですよね(笑)。静かなイメージのおかげで、ちょっと変わったことをやるだけで凄いことをやっていると受け取られるみたいです。

──でも、竹野内さんのアクション映画、観てみたいです。

竹野内:さすがに今の年齢からアクション俳優を目指すのは難しいですが、たとえばサスペンス映画のなかにあるアクションぐらいなら挑戦できるかもしれない(笑)。そういう変化はつねに欲しくて。良い人の役とかエリートの役とか肩書きは違うけれど本質的には似たような役柄をいただくことが多いので、そこから脱出して、違うところに飛びこんでみたい気持ちはあります。

──今後、どんな役に挑戦してみたいですか。

竹野内:具体的にというよりも──俳優としてはまだまだ駆け出しの頃、親戚のおじさんに「いつか悪役ができるようになったら一人前だな」と言われたことがあります。もちろんやってみたいですが、自分から率先して「こういう役をやりたい」というのはあまり好きではなくて。よきタイミングで「今の竹野内豊に悪役をやってほしい」と、何か理由があってこそ成立すると思うので。安易な気持ちではやりたくない。今回の和彦にも言えることですが、彼にとって自分を必要としてくれたのがあの家族だった、生きている証として自分に存在価値を与えてくれたのがあの家族だったんです。俳優も同じ。求められる、必要とされる、それがないと自分の価値って計れないですから。求められる俳優、必要とされる俳優でありたいです。

(取材・文/新谷里映)


映画『at Home』
8月22日(土)全国ロードショー

出演:竹野内豊、松雪泰子、坂口健太郎、黒島結菜、池田優斗、村本大輔、千原せいじ、板尾創路/國村隼
監督:蝶野博
原作:本多孝好『at Home』(角川文庫刊)
脚本:安倍照雄
音楽:村松崇継
製作総指揮:奥山和由
製作:中村直史、野崎研一郎
プロデューサー:神夏磯秀、三宅はるえ

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