「激流感がある」石井組で躍動する二人の男 ― 映画『GONIN サーガ』東出昌大×桐谷健太インタビュー

東出昌大×桐谷健太

石井隆監督作品『GONIN サーガ』は、1995年に公開された同監督による群像活劇『GONIN』の正式な続編だが、同時に「新世代の『GONIN』」の趣が濃密に漂う。物語の中核に位置する男ふたりを演じた東出昌大と桐谷健太は、その世界をどのように味わったのだろうか。 

東出:フィルムとデジタルの差もありますし、(使用した)カメラ台数の差、(撮影)日数の差、等々、前作とまったく同じ世界観で撮ることは不可能です。俳優部(の顔ぶれ)も大きく変わっているし、(石井作品常連の)竹中(直人)さんが(『GONIN』とは)違う役になっていたりする。僕は続編であるということにとらわれすぎず、いまできることを精一杯やったつもりです。

桐谷:僕は前作、役者デビューさせてもらう前から観てたんです。観てるこっちがゾッとするような恐怖感もあったり、男のカッコ良さもある。いま(の時代)にはなかなかないような男のハードボイルドな部分があって。(今回は)その息子たちの世代の話ですから。出していただくことになって、見返しました。やっぱり面白い映画だなあと思って。まず、そこに溶け込んでいくだけでうれしいなと思いました。『GONIN サーガ』には激流感がありますよね。そこに揉まれる男の性を演じることができて、すごく楽しかった。そもそも雨のシーンが多いんですが、晴れのはずのシーンでも外で雨が降っていたりして。テンションがどんどんどんどん、いい感じでおかしくなってくる。雨降らし(映画のために人工的に雨が降っている場面を作り出すこと)でも、ずーっと(水に)当たってると、芝居をする、ということから離れるというか。普通の表情で台詞言えないですからね。(自分自身が)この映画のストーリーや流れにリンクしていったというか。どんどんどんどん、すごい激流に流されていった。その感覚はありますね。

(C)2015『GONIN サーガ』製作委員会

(C)2015『GONIN サーガ』製作委員会

東出:すごくテンポ感がありますよね。バイオレンスも銃撃アクションも、迷ってる隙にいろいろなことが起きていく。そして最後にダッと走り抜けていく感じが、石井監督ならではの邦画バイオレンスの疾走感だなと。最後のシーンでは「うわ。えらいもの観たな」と思いました。もちろん(演じる側には)細かいキャラクター作りはありますが、どっちかというと、1作目を観なくても、(物語上の)つながりをそこまで気にしなくても、単純な感覚だけで充分面白い映画っていうか。人物関係図を意識するより、転がっていく感じがこの映画が持ってる強みだと思う。頭で観るよりも、体感してほしい。僕自身、わけのわからない状態でやることができていたので。気がついたら、次へ、次へ。重い岩でも転がすような、まさに激流のイメージ。

まさにダイヴするような快感がある。冷水なのか熱湯なのかも判別しない液体に思いきって飛び込むような。さらに、ふたりはこう語る。

桐谷:(キャラクター)それぞれの目が印象的なんですよ。目のアップが突然入ってきたりする。そいつ(キャラクター)が出る、っていうか。石井さんが見せたい、人間の強さとか哀しさとかは、一瞬の目に出るのかなと。(今回一度きりの復帰を果たした、やはり石井作品常連の)根津(甚八)さんに対しても「目! 撮ってるよ!」って石井さん、叫んでたし。で、根津さんもぐわっと、その目でこっちを見てくる。あのパッションに、すべてが集約されてるような気もするんですよね。生きようとする、動いてるヤツらの目、というか。

東出:石井監督ならではの、銃と暴力と雨のなか。狙いかもしれないですけど、もはや、お芝居ということではないような気がします。ああしろ、こうしろ、とは言わないですから。人間って、本能的な動きになると、動物的な目や表情になると思うんです。「ほんとに殺してやろう」という気持ちになると、動物的なところが活き活きしてて。それが、極限にいる人間に見えて、良かったなって。それはなかなか近年観ないもの。でも、カッコいい。それが石井監督の映画だと思います。

(C)2015『GONIN サーガ』製作委員会

(C)2015『GONIN サーガ』製作委員会

桐谷:いま、どこを撮ってるか、わからない、ってシーンあったよね(笑)。

東出:暗いから、どこにカメラがあるかもわからない(笑)。

桐谷:ある意味、演技してるヒマがない。役者って、そこ(シーン)に入り込んでやれるときはいいですけど、やっぱり「芝居してる」という感覚のときもあると思うんですね。たとえば、「ここ撮ってます」となったときは、そこに集中してしまうじゃないですか。でも、どこ撮ってるかわからないと(全体として)そいつ(キャラクター)でないといけない。だからこそ、考えるヒマもない。すごい撮影でしたね。あ、こんなカットあったんだ。いつの間に撮ってたの? って。

劇中では兄弟分を演じたふたり。こうして話を聞いていると、何か目に見えない結びつきが感じられる。

桐谷:話し合ったりは何もしてないのに、気がつけば、クランクインと同時にふたりとも、クランクアップまで煙草を吸わないという暗黙の了解でできていて。まあ、石井さんが煙苦手、っていうのもあるんですけど(笑)。この映画(のキャラクター)って、煙草吸いそうじゃないですか。僕らふたり、吸いながら語りそうじゃないですか。でも、監督は煙草吸うシーンはほとんど入れてなかった。でも最初の顔合わせのときから、なんとなく「煙草、やめようか」というような結束力はありましたね。

東出:あと、桐谷さんが自然と兄貴キャラなので、公私ともに。役の上でも、現場の桐谷さんとしても、本当に面倒見のいい兄貴肌なので。僕も、自然に慕うことができましたね。

桐谷:ふたりでクランクアップのとき、煙草吸ったよね。『くらくらする~』って言いながら(笑)。

(C)2015『GONIN サーガ』製作委員会

(C)2015『GONIN サーガ』製作委員会

とりわけ、印象的な場面がある。ふたりが、ほんとうに久しぶりに再会するシーン。あのときのふたりの芝居からは、感覚的につながっている何かが感じられた。

東出:僕は石井監督を信じるってことでしたね。あそこはクランクイン間もなく、いよいよ雨のシーンを初めて撮ることになって。最初、ビニール傘と雨の音で、声が全然聞こえなくて。相手の言葉、わからないから、こっちもうまく(台詞を)出せなくて。雑音が、相手がしゃべったように聞こえて、こっちしゃべっちゃったりしてて。結果的に、もっと声を張るしかない、ということになったけど、でも、この(台詞の)トーンでいいのか、細かいこと、いろいろ気にしちゃうんですけど。それでも石井監督は何も言ってこない。ということは、「自由にやれ」っていうことだろうし、疑問に思ったままカメラ前にしてもしょうがないし。訊きに行っても、そんなに多くをおっしゃる監督ではないので。そういうときは、そういう演出だと思って、石井監督を信じて、その場その場でやる。それがいちばんでした。

桐谷:あの運命の流れにのっかっていく感じが大事だったんじゃないかなって。あのとき、この映画に「放り込まれた」気がしました。

まさに男同士なコメントである。

(取材・文:相田冬二)

東出昌大:ヘアメイク・遠山美和子(THYMON Inc.)、スタイリスト・檜垣健太郎(little friends)
桐谷健太:ヘアメイク・西岡達也(vitamins)、スタイリスト・岡井雄介


映画『GONIN サーガ』
9月26日(土)TOHOシネマズ 新宿他、全国ロードショー

東出昌大、桐谷健太、土屋アンナ、柄本 佑、安藤政信
テリー伊藤、井上晴美、りりィ、福島リラ、松本若菜、菅田 俊、井坂俊哉 / 根津甚八
鶴見辰吾 / 佐藤浩市(友情出演)/ 竹中直人
監督・脚本:石井 隆
音楽:安川午朗
劇中歌:「紅い花」ちあきなおみ/「ラストワルツ」森田童子
製作:『GONIN サーガ』製作委員会
制作プロダクション:ファムファタル
配給:KADOKAWA/ポニーキャニオン

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