「志穂が自分の行動が正しかったのかと葛藤する部分には、とても共感することができました」―映画『クロスロード』TAOインタビュー

TAO

フィリピンでのボランティア活動に従事する日本人の若者たちの姿を描いた青春映画『クロスロード』が11月28日より公開中だ。今回、本作でボランティア活動に従事する女性を演じた、世界的に活躍する女優のTAOに、邦画初出演の印象や、撮影中の思い出、今後の展望などについて話を聞いた。

―邦画初出演となりましたが、オファーを受ける決め手になったのは?

TAO:本作が邦画で初めて声をかけていただいた作品だったんです。脚本を読んで欲しいと言っていただいて、実際に読んで、すぐに出演したいと思いました。邦画に出演するしないというのは、計画していたわけではありませんでした。もちろん、邦画に出演したいという気持ちはありましたが、どの作品でも良いというわけではなかったんです。しかし本作は、とても良い作品だと思ったので、出演を決めましたし、本作に出会えて感謝しています。

―TAOさんはこれまでに『ウルヴァリン: SAMURAI』(13)や『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16)といったハリウッドの超大作に出演されてきましたが、本作における規模感や役柄には、戸惑いやギャップを感じませんでしたか?

TAO:私が今まで経験してきた作品は、アメリカ映画の中でも予算や規模の大きい、長期間に渡って製作するものでした。1シーンの撮影を、長くて2週間ほどかける場合もあります。本作で自分にとってチャレンジだと思ったのは、撮影のペースでした。とても速くて、日本の俳優さんは1テイク、2テイクで完全なものを作り上げているんですよね。そういったエンジンの掛け方ができるという部分を目の前で見ることができて、素晴らしいと感じましたし、そういったトレーニングは積んで来なかったので、見習わなければならないと思いました。もちろん、アメリカ映画もインディペンデント作品ではそういった形で進行していくと思うのですが、私自身はあまり経験がないことだったんです。

―志穂を演じるにあたって、役作りのために何かされましたか?それとも自然体で入られましたか?

TAO:どんな家庭に生まれ、どんな幼少期を過ごしたのか、志穂がどういったバックグラウンドがあるのかを、自分なりに想像して紙に書き出しました。それを初めての本読みの時に監督に見ていただいたんですが、「いいんじゃないですか」とドライに返されてしまったんです(笑) 後日、キャストやクルーで集まって食事をしたときにも、「昔の俳優さんは監督に『役の戸籍を考えて持ってきなさい』と言われることがあったんだけど、僕はどうかと思う」と仰ってたんです。それで、「やっちゃったな」と思っていたんですが、自分の中で志穂を解釈していくなかでは、形式ばったアプローチだったのかもしれないですが、とても役に立ちました。

―似ているものを感じたとのことですが、具体的にはどういった部分で感じたのでしょう?

TAO:サバサバしている性格だったり、自分の意見はバシッと言ってしまうところですね(笑) 劇中で沢田と羽村が喧嘩しているときに間に入っていくところは、自分に似ているなと思いました。

 

(C)2015「クロスロード」製作委員会

―ボランティアについてはリサーチしましたか?

TAO:青年海外協力隊の活動内容は、本作に出演するまで詳しくは知らなかったんです。ボランティアには色々な形があると思うんですが、アメリカに住んでいると、日本よりは進んでいるのかなと感じるものがありました。何かしらの形でチャリティーやボランティアに携わっている方は多いですし、そういった環境で暮らしていたので、東日本大震災の時には、私自身もアメリカで自分なりの形でチャリティーを行ってみたんです。でもその時、本作の劇中で沢田が言うように、「偽善や自己満足なのでは?」と私自身に問いかけていました。私は自分なりの形でしか支援することはできないけど、それを被支援者の人々が望んでいるのかということについては、不確かなままだったんです。その時は、「必ずしも被支援者が望んでいるものではなくても、ニューヨークに住んでいる人々に、少しでも震災について考えさせるようなメッセージを訴えかけることができればいい」という答えに落ち着くことができたのですが、劇中で志穂が自分の行動が正しかったのかと葛藤する部分には、とても共感することができました。

―すずきじゅんいち監督の印象は?

TAO:自由に演技させてくださる方で、台詞も「意味が合っていればいいですよ」と仰っていましたし、指示の仕方もカジュアルというか、リラックスしながらお芝居させてくださった、初めてのタイプの監督でした。食事など、現場以外でもコミュニケーションを取ることができたので、色々な話を通じて、より深くお互いのことを知りながら仕事をできたのは、とても良かったと思います。

―共演者にはどんな印象を持ちましたか?

TAO:黒木さんについては、海外に住んでいたので、EXILEが具体的にどれほど人気なのかが良く分かっていなかったんです。実際に初めて会った時は、とてもクールで物静かな印象でした。忙しいだろうし、「望んで本作に臨んでいるのかな?」とも思ってしまいました。でも、現地に入って数週間にわたって共に時を過ごすうちに、主演のプレッシャーと戦っていることが伝わってきて、最初の印象と180度変わりました。渡辺さんは、初めて会った気がしないほど、気のいいお兄ちゃんという感じ。どんな話題を話している時も、とても深い知識で話してくださって、楽しかったです。そして、黒木さんも私もまだ演技経験が豊富ではないので、渡辺さんに引っ張ってもらったところがありました。

―劇中でも言及があるように、かつて日本軍が侵攻したフィリピンですが、現地の人々は暖かく迎え入れてくれましたか?

TAO:日本がフィリピンを占領していたという事実は知っていましたが、具体的なことは知らないままフィリピンに入ってしまったんです。渡辺さんのシーンにあるような、高齢の戦争経験者の方と触れ合う機会はなかったんですが、私の撮影の最終日に、共演したアローディアさんのお母さまが親切に手配してくださって、ロケ地のバギオからマニラまで車で送っていただいたんです。マニラには博物館があって、そこではジオラマでフィリピンの歴史を学ぶことができるんです。スペイン、アメリカ、中国が行ったことの歴史はさほど気に病むことはなかったんですが、自分が生まれる前の話でも、日本が行ったことを見せられると、とても申し訳ない気持ちになりました。アローディアさんのお母さまのお友達に、日本人のフィリピンでの印象を伺ったら、「お年寄は日本人のことをあまり好きではない」と教えていただき、しょうがないことかもしれないけれど、私たちの世代が、本作の劇中で描かれたように、日本人の印象を変えていくことが大切だと感じました。今後、私がフィリピンという国にどれだけ貢献できるかは分かりませんが、現地の方々と触れ合ってお話ができたことは、貴重な経験になりました。本作も、フィリピンで上映していただけたらなと思っています。

―TAOさんの視点から見て、劇中で描かれたこととは別に、今のフィリピンにはボランティア、事業が必要だと思いますか?

TAO:たくさんありますが…美しい海や山といった素晴らしい自然がある一方で、車の排気ガスが大量に排出されているんです。というのも、気候の問題で飛行機が飛ばないので、交通は車が中心になっているんです。でも、排気ガスの規制はされておらず、素晴らしい自然があっても、十分にケアできていないのが勿体ないと感じました。あとは劇中で描かれているように、金を掘るために化学物質を使用しているのも問題だと思います。ただ、マニラの地下鉄では、「大手町行き」と記された日本の古い地下鉄車両が走っていたりするので、日本の企業は協力しているみたいです。

 

(C)2015「クロスロード」製作委員会

―劇中では、理想と現実のギャップに打ちのめされる若者たちの姿が描かれています。ご自身のキャリアを振り返ったとき、TAOさんにもこういった経験はありますか?

TAO:モデルを始めた時も、女優を始めた時も、自分が受け入れられているのが、悲しいことに日本ではなく海外だったんです。モデルでも、日本でうまくいかなかったから海外に飛び出したという背景がありましたし、女優業でも最初に声をかけていただいのはアメリカ映画の仕事でした。モデルとして海外で良い仕事ができたとしたとしても、日本の方々からの評価には繋がらなかったり、海外に飛び出して「こういう風になれる」と思い描いていたものと現実が一致しないということがありました。

―以前にチャリティー・バザーを主宰されたとお聞きしたんですが、本作を経た上で、今後もチャリティーやボランティア活動を行っていきたいと考えていますか?

TAO:今までは、私が発起人だったというわけではなく、周囲の力強い方々に誘っていただいたという形でした。主要人物として携わることができたものもあったのですが、周囲の方々に力を貸していただくという形が多かったんです。なので、私自身がもう少し色々なものを見て、経験することができたら、自分が発起人となって何か行動を起こすことができればと考えています。実は、すごくやってみたいと思っていることがあるんですが、まだまだ準備段階なので…(笑)。

―誘っていただいた、というお話がありましたが、ご自身が望んで女優を目指したというわけではなかったのですか?

TAO:『ウルヴァリン: SAMURAI』でオーディションを受けないかと声をかけていただいたのが最初だったんですが、当時は女優に挑戦したいと考えていなくて、お断りしていたんです。でも、2度目のオーディションの時に初めてジェームズ・マンゴールド監督にお会いした時に、お芝居とは何かを監督の考え方を通して教えていただいて、「未経験なのにセンスがある」と言っていただけたことをきっかけに、火が付いたというか、女優に挑戦してみたいと真剣に考え始めたんです。

―目標にしている女優、あるいは影響を受けた映画人は?

TAO:私を見出していただいたマンゴールド監督に、「アメリカ人の女性にはない、控えめなお芝居ができる。それが美しい」と言っていただいたんです。マンゴールド監督は小津安二郎監督の大ファンで、「君の演技は小津監督作品の女優さんを彷彿させる」と言っていただいてからは、小津監督の作品を勉強しました。小津監督の作品のような世界観には憧れがありますね。

―最近では、モデルを辞めて女優に専念する方もいらっしゃいますが、TAOさんは今後、モデルと女優を兼業していくのでしょうか?

TAO:『ウルヴァリン: SAMURAI』の時には、どちらも求められる限りは挑戦したいと兼業を宣言していました。ただ、実際に現場に入ってみると、model/actress(モデル/女優)という肩書では、どこまで私が本気なのかが(周囲に)見えてこず、中途半端に映るんじゃないかと感じ始めたんです。なので今のところは、強いリクエストをいただいたものは考えますが、モデル業からは一歩下がって、基本的には女優業に集中していきたいと思っています。

―では最後に、本作の見どころを教えてください。

TAO:3人の若者が、それぞれ信じているものと疑っているものとがある中で、経験を通じて成長していく姿ですね。何がボランティアかというわけではなく、自分だったらどうするか、自分は今の生活にどう向き合っているのか、クエスチョン・マークを抱かせる部分が本作の見どころになっていると思います。

(取材・撮影・文:岸豊)

【TAO】千葉県出身。14歳でモデルデビュー。2006年よりパリ、ミラノ、ニューヨーク、ロンドンのコレクションに参加。2013年公開のヒュー・ジャックマン主演映画『ウルヴァリン: SAMURAI』にてスクリーンデビュー。2014年に放送されたドラマ「地の轍」(WOWOW)で日本のドラマ初出演を果たす。2015年に放送の米ドラマ「ハンニバル シーズン3」、2016年3月25日に日米同時公開を迎える話題作『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』にも出演している。


映画『クロスロード』

大ヒット上映中

【監督】すずきじゅんいち 【脚本監修・脚本】福間正浩 【脚本】佐藤あい子

【エグゼクティブ・プロデューサー】吉岡逸夫

【出演】黒木啓司(EXILE) 渡辺大 TAO 長塚京三 アローディア 飯伏幸太〈DDTプロレス/新日本プロレス〉山本未來 榊原るみ 加藤雅也

(友情出演)【製作プロダクション・配給】フレッシュハーツ 【後援】国際協力機構(JICA) 【宣伝】東映エージエンシー

【製作】「クロスロード」製作委員会(青年海外協力協会/フレッシュハーツ)

(C)2015「クロスロード」製作委員会

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小津安二郎

生年月日1903年12月12日(60歳)
星座いて座
出生地東京都

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