【レビュー】『パディントン』―大人も大いに楽しめる、愛と温もりに満ちた「くま映画」

© 2014 STUDIOCANAL S.A. TF1 FILMS PRODUCTION S.A.S Paddington Bear™, Paddington™ AND PB™ are trademarks of Paddington and Company Limited

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愛と温もりに満ちた「くま映画」

赤い帽子に青いトレンチコートを身につけた、人の言葉を話すクマ・パディントンと人々の触れ合いを描いたベストセラー絵本「くまのパディントン」は、1958年の出版以降、本国イギリスを始め、世界中で愛され続けてきた。その「くまのパディントン」を実写化した映画『パディントン』が1月15日より公開中だ。

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ある日のロンドンに、ペルー生まれの一匹のくまが降り立った。人の言葉を話すそのくまは、かつて故郷を訪れたという探検家を探しにロンドンへやって来たのだ。くまは礼儀正しく道行く人々に声をかけるが、誰も相手にしてくれない。途方に暮れていたところ、彼は親切なブラウン夫人(サリー・ホーキンス)に拾われて、パディントンと名付けられる。そして、ブラウン家の世話になることに。こうしてパディントンはブラウン一家と共に暮らし始め、帽子の持ち主である探検家を探すのだが、パディントンは、謎の美女ミリセント(ニコール・キッドマン)に狙われていて…

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50年以上の歴史を持つ原作を実写映画化するに際して、本作はある大胆な手法をとった。本作は、原作では丸みのある可愛らしいデザインになっているパディントンを、ハイレベルな映像表現によって、極めてリアルな熊として描いているのだ。水に濡れたとき、ドライヤーを当てている瞬間…一本一本の体毛に至るまで、極めて緻密に作り込まれたCGは圧巻だ。

また、ポップなカラーリングに包まれるロンドンも素晴らしい。興味深いのは、ほぼ全てのシーンに赤が挿入されていること。キャラクターが身に付ける衣服や、家の中のちょっとしたインテリア、街角に配置された小道具などなど、本作は赤を全面的に押し出している。このカラーリングは、赤を美しく映し出すだけでなく、赤が象徴する愛や温もりが本作のテーマになっていることを示唆してもいる。

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鮮やかな映像表現に対して、ストーリーテリングには勿体ない部分がある。というのも、本作は「世界観の確立」を十分にできていないのだ。そもそもパディントンは、「喋る熊」という極めて特異な存在だ。しかし、彼を狙うミリセント以外のロンドン市民は、彼を目にしても動揺することなく、「変な奴がいるな」程度にしか捉えていない。この淡白なリアクションは、過去において大発見として捉えられるはずだったパディントンの叔父・叔母と、現在におけるパディントンの間に不可解なギャップを生んでしまっている。つまり、劇中における「喋るくま」の価値観が揺らいでいるのだ。

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時折挿入されるファンタジー色の強いガジェットにより、本作の舞台が現実の社会とは一線を画す「別のどこか」であることが示唆されてはいるが、このガジェットは本作におけるイギリスに暮らす人間たちの振る舞いに感じる違和感を払拭することに寄与していない。原作があくまでも絵本であり、子供向けの作品である以上、こうしたリアリティの観点を持ち出すことは無粋だと考える人もいるだろうが、後述のように本作には一定のリアリティを見出すことができるので、やはりこの設定のブレは邪魔に感じる。

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とはいえ、こうした細かい部分に目をつぶれば、愛と笑いに満ちた本作は、誰もが楽しむことができる作品だ。おっちょこちょいなパディントンを中心に生まれるアクシデントやイギリスらしいジョークは、子供たちだけでなく大人も大いに楽しませることだろう。かくいう筆者も、何度も笑わせられた。そして、パディントンが明確な移民のメタファーとして表現されていることからは、移民の排除に労力を注ぐ現在のイギリス政府への疑問あるいは批判という、大人向けの政治的な文脈も読み取ることができる。ミリセントに誘拐されたパディントンを取り戻そうと奮闘するブラウン一家の活躍と、意外過ぎて爆笑必至なクライマックスも秀逸。その後に訪れる、愛と温もりに満ちた本作の素敵な結末は、冬の厳しい寒さを乗り切るパワーを与えてくれるはずだ。

(文・岸豊)


映画『パディントン』
大ヒット上映中

出演:ベン・ウィショー(声の出演)、ニコール・キッドマン、ヒュー・ボネヴィル、サリー・ホーキンス、ジュリー・ウォルターズ、ジム・ブロードベント
監督:ポール・キング
製作:デヴィッド・ハイマン『ハリー・ポッター』シリーズ
原作:マイケル・ボンド

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マイケル・ボンド

生年月日1926年1月13日(91歳)
星座やぎ座
出生地

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