映画『猫なんかよんでもこない。』松岡茉優インタビュー「猫にとっての幸せはよく考えました」

松岡茉優

「小さい頃から『間が怖い病』で(笑)。それは、よくないことだって、最近思うんですけど。空白があくのがすごく怖いんですよね。家族と話してるときでも、間があかないようにしてるんです。でも『あまちゃん』では、間が面白いということを学んだんです。大人計画のみなさんの間の使い方がとても面白くて。でも、いまだに間が怖くて。全部、文字で埋めたい(笑)。言葉で空間をうめたいんです」

達者な喋りと、語彙の豊富さ。その表現力で、バラエティ番組にも引っ張りだこの女優、松岡茉優はインタビューにおいても、間断なく話しつづける。だが、彼女自身が言うように、ただ「言葉で空間をうめている」わけではない。その語りは示唆に富み、わたしたちに、物事をいま一度考える契機を授けてくれる。

人気コミックの映画化作品『猫なんかよんでもこない。』で、松岡は「ウメさん」という女の子を演じている。怪我でボクサーとしての夢を絶たれ、2匹の捨て猫と暮らすだけの主人公ミツオに、ウメさんは先輩猫飼い主として様々なアドバイスをする。控え目で、真面目。だが、絶妙な距離感をキープするウメさんの存在が、この物語の、大切な「明かり」になっている。

(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

「原作を読んでても、思うことなんですけど。ミツオとウメさんって、主人公とヒロイン、というより、お互い心を溶かし合う存在かなあと思っていて。他人(ひと)との距離感をそんなに詰められないふたりが、お互いの気持ちいい距離感で、猫と近い生活をしてた人たち、という意味で初めてピタッとネジがハマっていったのかなと。ウメさんが、ミツオのそばにいることで、ミツオに少し普段と違う表情が出たら……そこは私が頑張りたいところだなって。衣装にちょっと明るい色を入れてみたり、ウメさんって(基本的には)茶色とか黒を好んでいるんですけど、そのなかでもマフラーにピンクを入れたりとかしながら、なるべく女性らしさというものを織り込みたいなと思いました」

ウメさんは、余計なことは言わない。きちんと伝えようとするあまり、語気が強くなってしまうこともある。だが、ウメさんとミツオがいちばん「ふたりでいられる場所」である公園での語らいは、陽だまりに包まれている。そこで、ウメさんは大抵、ミツオの飼い猫を抱いている。

「動物を抱いてお芝居するってこと自体、なかなか体験がなかったので。(猫が)あったかいとどんなに(気候が)寒くても、気持ちがふわふわ出ててきたりとか、見え方も全然違うでしょうし。生きものを抱きながらお芝居をするという時間は尊かったですね。ただ、(猫のほうが)コミュニケーションとらせてくれなかったというか。猫ちゃんって自由じゃないですか(笑)。(撮影が)終わって、可愛いな、と思って抱っこしようと思っても、さーっといなくなっちゃう」

(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

そこから、松岡は猫について一気に話しはじめる。

「祖母と一緒に住んでいた頃、外猫を飼っていたんです、祖母が。(その猫は)私より人生の先輩だったので、私から出したご飯は食べなかったりだったんですけど、その印象があったので、あんまり(家の)中で猫を飼うことのイメージがなかったんですね。でも大きくなるにつれ、お友達の家に行ったら、中に猫がいたりして。あ、中で猫を飼うと、また違った雰囲気になるんだなと。今回の(映画の主人公)ミツオさんは外で飼ってるけど、中で一緒に寝たりしていて、人間と同じ生活をさせているというのにすごく衝撃があって。今回はそれが物語の主軸になってますけど。(猫は)ケンカをすることで病気をもらったりする。他の猫とかかわることは猫にとって幸せなんだろうけど(命の危険から、人間が)守ることができないという意味では、外猫と家(うち)猫、現代の猫において幸せはどっちなんだろう? とよく考えました。私が知ってる猫は外猫だったので、中に閉じ込めておくのはどうなんだろう? とも思うんですけど、守れるのは完全に中(に置いておくこと)なので。世話をしてもらうという意味においては、現代では家猫が幸せなのかなあって考えたり。猫にとっての幸せはよく考えましたね」

一方で、こんなこともさらりと口にする。

「私、犬派なんですよ(笑)。なので、人生において猫が必要と思ったことはないんですけど。犬派にとって猫って自由すぎるんですよね。『お手』もしてくれないし。『おすわり』もしてくれないし。でも、この映画で猫とかかわって、犬よりももっと、人間に近い性格を持っているのかなあとは思いました。私、よく猫っぽいと友だちからは言われるんですけど、性格、似てるなあと。さんざん遊んだオモチャを捨てるじゃないですか、ポイッて。私も、さんざん帽子集めにハマったことがあったんですが、ああ、もうやらないなーと思ったら、ばあっと妹にあげたりしちゃうので。(自分に)似てる部分は猫に見出しましたね」

(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

似ているから、猫派にはならなかったんですかね。

「その部分もあると思います。考えてることがよくわかるから、『また、それ?』って思うし(笑)」

自分を見てるような?

「かもしれませんね。(猫は、人間と)対等なんですよね。可愛いね、って愛でるより、『共に生きていく』というところが猫にはあるんじゃないのかなと思って。犬は『守ってあげるよ』って(単純に)思えるんですけど。猫は『一緒に生きようぜ』って。今回はそういう気持ちになりました。可愛いくせに、やたら、引っ掻くじゃないですか。やっぱり、人間に似てるんじゃないかなって」

深い言葉だと感じ入っていると、「私、あんまり動物に好かれないんですよ」と口にする。

犬にも?

「犬にも。吠えられたりとかする。猫には『シャーっ』ってやられるし。よっぽど、何か出してるんですかね(笑)。私みたいに猫に好かれない方は、ぜひ映画館で猫の可愛さを存分に味わっていただけたら」

(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

おー、そうきたか。さすがである。では、少々、シリアスな質問を。

大抵の場合、猫も犬も、飼い主より先に旅立ちます。動物や生きものを飼うということは、看取ることでもあると思うのですが。

「やっぱり、動物の幸せって、現代において何なんだろう? ってことですよね。食物連鎖で人間が一位に立ってしまっているこの現状で、動物園にいて動物は果たして幸せなのか? 人間同士の幸せも測れないので、動物の幸せなんてわからないんですけど。ただ、『いま、通じ合ってる』と信じるしかなくて。私も犬を飼ったことがありますけど、通じ合ってるって信じて、お散歩、好きだよね? って信じて。このご飯、美味しいよね? って信じながら食べさせてあげることしかできないので。お洋服を着せることが幸せなのか? もしかしたら毛が長い方があったかいんじゃないかと思うんですけど、やっぱり、ちょっとみすぼらしいと(ペット美容院に)切りに行っちゃうし、トリミングに行っちゃうし。だから、生きものを飼うということは、学ばせてもらうことだなと思います」

つまり、動物を飼うっていうことは……。

「動物と家族になる。人間も動物ですから。猫とか犬と家族になるということだと思うんですよ。つまり、共棲、『共に生きること』です。いつの時代も弱肉強食は変わっていないし、『ファイト!』とかかっていったら、ライオンには負けるんですけど。犬だって、土佐犬とかには勝てないので、何をもって私たち人間が上に君臨してるんだろうと思うんですけど。ビルがまったく立ってなくて、更地だったとき、森があったときに、動物の幸せが、どんなふうにあったのか知らないんですけど、私が生きてるいまはどうなんだろうなあって思いますね。トイプードルって、昔はいないし。(昔は)プードルだし。それだけ生態系が変わっているから、もう何が幸せか全然わからないんですけど。だから、目の前で美味しそうにご飯食べてたら、美味しいんだろうなって思うことがギリギリのコミュニケーションですよね」

天晴れ。松岡茉優、まだ20歳である。

(取材・文:相田冬二、スタイリスト:池田未来、ヘアメイク:宮本愛)


映画『猫なんかよんでもこない。』
2016年1月30日(土)TOHOシネマズ新宿ほか全国公開

監督・脚本:山本透
共同脚本:林民夫
出演:風間俊介、つるの剛士、松岡茉優、市川実和子

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アーティスト情報

つるの剛士

生年月日1975年5月26日(43歳)
星座ふたご座
出生地福岡県北九州市

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