映画『不屈の男 アンブロークン』MIYAVIインタビュー/戦争を肯定しない、人がどう強くあれるのかという、アンジェリーナ・ジョリーのミッションに共鳴!

MIYAVI

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47日間の漂流、2年間の収容所での生活を不屈の精神で生き抜いたひとりのオリンピック選手ルイ・ザンペリーニの感動の実話を映画化した『不屈の男 アンブロークン』。

アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞などの受賞歴を誇る女優であると同時に、ボスニア戦争を描いた『最愛の大地』(’11)で映画監督デビューしたアンジェリーナ・ジョリー。監督2作目となる本作には、共同脚本の一員としてジョエル&イーサン・コーエン兄弟が名を連ね、撮影は『007 スカイフォール』(’12)のロジャー・ディーキンスなど、一流スタッフが集結した。

ルイ・ザンペリーニを演じるのは、若手英国俳優のジャック・オコンネル、ルイを虐待する日本軍捕虜収容所所長・渡辺を演じるのは、ミュージシャンとして活躍するMIYAVIだ。映画初出演にも関わらず、見事にサディスティックな役柄を熱演している。

そこで、緊急来日したMIYAVIにインタビューを敢行。本作で俳優に挑戦したその心境と、監督アンジェリーナ・ジョリーについて話を聞いた。

──アンジェリーナ・ジョリー監督からはどんなリクエストや演出がありましたか?

アンジーと初めて会った時に、監督として、また彼女自身のミッションとして、ルイ・ザンペリーニ氏の生き方、人を守るために生き抜き、そして人を許すという境地に辿り着く人間としての強さをメッセージにしたいと言われ、出演を決心しました。実際現場でも彼女は先頭に立って、スタッフや役者とコミュニケーションをはかって、本当に情熱とモチベーションを持って取り組んでいました。とくに僕が演じた日本軍の収容所長・渡辺伍長というキャラクターに対しては一辺倒な悪役というか、ただの日本人の兵隊ということではなく、人間としての脆さ…戦争という極限状態においての一人の人間の葛藤も表現したいと言われて、色々な話をして取り組みました。

──本作で俳優デビューとなりましたが、何か参考にされた戦争映画などはありますか? どのように役作りされたのか教えてください。

まず日本人としてどう役に取り組むのか。僕は普段、音楽家として活動していて、役者としての経験もないので、正直いろんなリスクがあることでした。本当にアンジーと会う前までは受け入れるつもりはなかったんですね。原作本の内容も含めて、やっぱり自分の生まれた国のネガティブなサイドを演じたくはなかったし。ただ、ひとりの人間の強さを届けるという意味で、ナショナリティを超えたメッセージを届けることに意義を感じました。ルイが長野オリンピックで聖火ランナーとして日本に帰ってきて、地元の人たち、そして子供たちと一緒に走っている。皆、笑顔なんですね。それを届けるためであればこの役を演じきるのは意味があることだと思いました。

(C)2014 UNIVERSAL STUDIOS

(C)2014 UNIVERSAL STUDIOS

──現場で何か心がけたことはありましたか?

僕は実際にルイにも会いましたし、ルイと一緒に収容所を過ごした人たちにも会いました。皆、日本が好きだと言ってくれて、収容所でも友達ができたり、後々日本人の女性と恋に落ちて家庭を築いたり、それぞれに色んなストーリーがあるんですよね。まず戦争を肯定しないということ。実在する人間を表現するにあたって、決して渡辺伍長がしたことを正当化するつもりはないですが、戦争という極限の状況において、一人の人間としての脆弱(ぜいじゃく)さ、葛藤を表現できたならば意味のあることだなと思いました。僕が演じる渡辺の存在がルイという人間の生き様を浮き彫りにできるのであれば、作品として僕が音楽で伝えようとしていることと共鳴するんじゃないかと。

オーケストラの一部のような感覚というか。その役をまっとうすることで、作品全体のメッセージが伝われば、という一心で取り組みました。また、僕自身演技の経験がない中で、“演技をしない”ということをふくめ、今回、キャスティングディレクターでもある奈良橋陽子さんに沢山のことを教えてもらいました。彼女は僕にとって役者の母親みたいなもので、撮影現場まで一緒に来てくれて。とにかく自分のリアルな感情をどこまでキャラクターに入れることができるのか一緒に取り組みました。

例えば、今まで竹刀は使ったこともなかったけれど、撮影中はオフで出かける時もずっと竹刀を持って行き、撮影現場では他の役者とは距離をおいて全く話をしませんでした。渡辺伍長の当時の描写から、他の日本軍のエキストラの人たちとも話をせず、とにかく役にずっと入り込んでいました。やっぱり苦しかったし、終わってからも抜けるのに時間がかかりましたけど。

撮影が終わってからの打ち上げで、アンジーが「MIYAVIのショーを皆に見せたい」と言ってくれて、日本のツアークルーをシドニーに呼んで演奏したり、共演したジャック(・オコンネル)とギャレット(・ヘドランド)やプロデューサー達と一緒にジャムセッションもしたり。撮影場所がオーストラリアだったんでAC/DCとか演ったりしました。だけど撮影現場では徹底的に距離を置いていましたね。

──映画初出演とは思えないほど素晴らしかったです。

ありがとうございます。アンジーは今回この役にロック・スターというか、音楽家を求めていたというか。感情の推移や戦争の状況も変わっていくある種の極限状態の中で一人の人間が崩れていくという…戦場においては皆が犠牲者だと僕は思うんですね。もう一度言いますが、彼の行いに対して正当化するつもりはないですけど、誰しもが戦争という極限の状態において、100人いれば100人のドラマがあるわけじゃないですか。なにより決して戦争を肯定しないこと、そして乗り越える人がどう強くあれるのかというメッセージに何よりもフォーカスを当てて作った作品。それを届ける為であればできることを全て捧げようと思い、挑戦しました。

(C)2014 UNIVERSAL STUDIOS

(C)2014 UNIVERSAL STUDIOS

──これまで映画で観てきた女優アンジェリーナ・ジョリーと、本作の監督アンジェリーナ・ジョリーは、接した前後でイメージは変わりましたか?

一緒です。強い女性。何より人としてすごく深くて大きな人ですね。

彼女は国連(難民高等弁務官事務所)の親善特使(HPによると2012年に特使に任命されている)をやっていて、ミッションを持って活動しています。僕も彼女の紹介で一度レバノンを訪ねたこともあります。この映画もその活動のひとつで、未来のために次の世代のためにどういうものを作るべきかを考えて行動しています。やろうとしていることはやり方が違うけど一緒だと感じました。混沌とした社会の中で、未来に希望を捨てずに、子どもたちの為にいい世界にしたいという活動のひとつとして。彼女からは今もたくさん学ばせてもらっているし、リスペクトしているアーティストのひとりです。

──映画に出演したことによって、物を伝える新しい表現方法を発見したり、音楽活動にフィードバックしたりと、何か得たものはありましたか?

すごくありました。表現者としては、音楽家も役者も一緒だなと。ステージでパフォーマンスして自分のメッセージを伝えること、こういう風に作品の一部になって表現すること、ファッションショーでプレイしたり、写真の中で被写体として表現すること、すべてに共通点というか似た部分をすごく感じました。

あとやっぱ役には、なぜそうなったのかという過程があって。渡辺伍長の場合も自分の父親との摩擦だったり、自分が期待されて求められたけどそれに応えられなかったり。その焦りの中でルイと出会って、ルイに対してある種、憎しみ・嫉妬・憧れを感じていて。冷酷な中にも人間っぽさというか。僕は実際に音楽を作る時に出口をイメージします。要するに悲しくなりたくて音楽を聴いている人はあんまりいないんですよね。悲しい音楽を聴いていても、結果悲しくなりたくて聴いているわけではないと思います。どこかに気持ちを吐き出したくて聞いてる。カタルシスというか。結局、僕らは明日にしか進めなくて。その中で未来を感じられる作品を作りたいと思っている。ただその中にも光があって影があって、昼があって夜があるように、その影だったり夜の大切さというか存在意義を今回はすごく感じました。影が深ければ深いほど光に焦点が当たる。そういう部分を今回のプロセス、経験を経て学びましたね。

(C)2014 UNIVERSAL STUDIOS

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──本作を拝見して、戦争とは本当に人生を狂わせるんだなと感じました。こういったメッセージをどう考えましたか?

戦争は何も生まない。武器とお金と憎しみ以外は。今回の映画では賛否両論の声を国内でもらったんですね。ただ、海外では全くなかったんですね。ある意味、歴史の一つとして、繰り返さないことの学びとして、僕たちは観るわけじゃないですか。『シンドラーのリスト』を観てドイツを嫌いにならないのと一緒で。結局ドイツという国がそれを乗り越えて、今のドイツという国の像を作ったということを僕たちは認識してる。日本はこれまで実際には戦争をしてこなかった。そこはもっと誇りに持っていいと思うんです。ルイも、当時収容所で過ごした人たち皆も今は日本が好きで、この作品を観て日本が嫌いになったという人に僕はひとりも会っていないんですね。戦後、完璧ではないかもしれないけれど日本がしてきたことに対して認識があるからだと思うんです。

今年は安保法案の問題や難民受け入れの問題など、世界中でも色んな問題が起こっていて、僕もそうですが、戦争を経験していない世代が、ここからどうありたいのかということにもっと意識を持った上で、物事の認識を深めていけば、違った議論ができると思います。政治的なところだけじゃなく、お互いの文化を通じて結びついていく。きれいごとかもしれないけれど、きれいごとを歌い続ける必要もあると思っています。僕らが音楽や映画を通じてその架け橋になれればいいなと思っていますし、今回の作品もそういうことを考えるひとつのきっかけになればいいなと思います。

(取材・文:クニカタマキ)


映画『不屈の男 アンブロークン』
2月6日(土)全国順次ロードショー

監督:アンジェリーナ・ジョリー
原作:ローラ・ヒレンブランド
脚本:ジョエル&イーサン・コーエン、リチャード・ラグラヴェネーズ、ウィリアム・ニコルソン
撮影:ロジャー・ディーキンス
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:ジャック・オコンネル、ドーナル・グリーソン、MIYAVI、ギャレット・ヘドランド、フィン・ウィットロック

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アーティスト情報

アンジェリーナ・ジョリー

生年月日1975年6月4日(43歳)
星座ふたご座
出生地米・カリフォルニア・ロサンゼルス

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MIYAVI

生年月日1981年9月14日(37歳)
星座おとめ座
出生地兵庫県

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