岩井俊二と行定勲―師弟とも言える2人がお互いの新作を語る!

(左から)岩井俊二監督と行定勲監督

(左から)岩井俊二監督と行定勲監督

2016年1月9日(土)より全国にて公開され、大ヒットを記録している『ピンクとグレー』の行定勲監督と、この3月26日より新作『リップヴァンウィンクルの花嫁』の公開を控える岩井俊二監督。行定監督は助監督時代に岩井監督の『Love Letter』『スワロウテイル』に参加していたこともあり、師弟関係ともいえる間柄。その2人がApple Store Ginzaに登場、お互いの作品や映画に対する思いを語り合った。

行定勲=一番監督デビューしてほしくない片腕

岩井監督にとって行定氏は「一番監督デビューしてほしくない片腕」だったという。「特にキャスティングの才能が抜群で。それが彼の作品に反映されていると思う」と当時を振り返ると、行定監督は最初に助監督として仕事をした『ゴーストスープ』の打ち上げの場で「行定はいつかは映画監督になるだろうから。それまではウチでやってよ」と他に助監督がいる中で岩井監督に言われた言葉が支えになっていたと話す。

そしてその通りデビューをした行定監督を岩井監督はどう見つめていたのか。「実は作家性のきつい男で。上手くやれるんだろうかという心配はあったし、彼が描きたいものは、エンタメの王道では難しいと思った。こだわり続けるところはこだわって。特に“不在の主人公を探して”っていうのは永遠のテーマとして追い続けているような感じがあって。今回の『ピンクとグレー』は一つの到達点かなと思うし、先輩として見ながらちょっと感無量ですね」

では、逆に行定監督はデビュー後、岩井監督の作品の見え方は変わったのだろうか?「一番衝撃的だったのは『リリイ・シュシュのすべて』を観た時。コレが“岩井美学”かと、みんなが衝撃を受けている感じがわかった。スクリーンからはみ出るくらいの圧を感じるんだけど、その部分が心地いいし、マジックですね。映画はある種のマジックだと思うけど、今回の作品を見ていてもそう。マネをしようとしている人はいたとしてもこの感じにはならない」

岩井俊二監督

岩井俊二監督

『リップヴァンウィンクルの花嫁』の誕生まで

岩井監督の最新作『リップヴァンウィンクルの花嫁』は3.11後、どう生きていくのか? ということを考えさせられる作品だという。それについては「3.11以前の10年位は、自分の中では“失われた日本の10年”のような気がしていた。そのころロスにも住んでいて、日本をもう一回見つめなおそうという気持ちもあった」という岩井監督。

しかし、映画を撮りたい前向きな気持ちがある反面、作品を提示しても環境が変わらない状況にも苦しみ悩んでいたと告白。そんな時に観た映画『毎日かあさん』が衝撃的だったんだとか。「世田谷あたりの優良な住宅地に異邦人が入ってくるんだけど、衝撃だったのは、彼が自滅して死んでいって、環境も元に戻っちゃう。結果何も変わらない」。

そんな時に起きたのが3.11だった―。「ある意味“前に進まない”状況が壊れて、やっと描ける状況が生まれたので戻ってきたけど、また何が描けるか? ともがいている時に見つけたのがこの物語かなと」と続ける。

そんな岩井監督の新作を行定監督はどう観たのか?「自分が何を持って真実といえるのかということを考えてしまう。騙され続けても幸せにはなれるんだっていう―。絶望の先に幸せがないと思っていたら、意外とあるというところに胸を打たれました。綾野剛がいいんですよ。この人がやっていることが。ある意味悪いやつなんですけど、でもいいやつなんです。岩井さんが作る偏見というのは“そうだと思わない?”“そうだよね?”―ってそれがだんだん核心めいていく。2回目に観た時のほうが爽快感が増していた。何かが隠されていますよ」

「世の中のことについて、SNSで表に向かって言えるようになってしまった」と時代の変化を恐ろしくもあると話す岩井監督。「何が正義か悪かというよりは、もうちょっと違うアングルから観て、人って素敵だよねとか、共感できることあるよねとか、そういうのがあるから物語が成立する。作品としての豊かさをどう守るかは、意外と死活問題。防波堤作っておかないといつやられるかわからないのがSNS時代の恐ろしいところだと思うんで、ぼんやりとでなく、本気で際際まで考えないと世論に太刀打ち出来なくなってきているし、そこは戦国時代になってきているなど」

行定監督自ら『ピンクとグレー』は「やっちまった」?

行定監督の最新作『ピンクとグレー』では、宣伝文句の通り62分後に衝撃の展開が待っているのだが、「ヒットしたから言えるけど、やっちまった感があった」と思わぬ言葉から話し始めた行定監督。「設定でわかりきった事がある中、それをいかに飽きさせずに見せるか。観客に構造的に見せてあげることで、映画の自由さを感じて欲しかった。ないことをやるには、ある程度覚悟してやらないと。それはこの原作じゃないと出来ないし、やっておきたいという思いでした」

(C) 2016「ピンクとグレー」製作委員会

(C) 2016「ピンクとグレー」製作委員会

映画の感想を夜中に行定監督へメールしたという岩井監督は「ちょっと驚きました。何が起きたんだろうって。仕切りなおしとか途中でやめちゃうとか、前例でいうと、そういうカテゴリーかなと思っていたけどそうじゃなかった。観たことがなかったし、あまりにも良く出来たトリックだった。映画の後半戦は、行定じゃなきゃできないと思っていたテイスト感。ヨーロピアン的な風格というか、その耽美性を堪能するしかない。前半の甘酸っぱい感じが、アルコールにはちみつを落として飲むような感じビター&スイートな世界に入る感じ。役者もガラッと変わる。まだ見てない人は見たほうがいいですよ」とべた褒め。

これを聞いていた行定監督は「すごく宣伝してくれましたね(笑)。自分の映画を語るより、人の映画だとすごく立体的で」と岩井監督へツッコミ。これには岩井監督も「作っている側だとわからないよね」と“あるある”だとコメント。

最近みんな冒険していない

また「映画は新しい物を作っていくもの。最近みんな冒険していない」とも語る行定監督。「昔は破綻している映画なんていっぱいあったし、それが面白かったりもする」と続けると、岩井監督も「破綻させてくれないよね。本当そう思う」と同意。しかし、その岩井監督へ向けて「『リップヴァンウィンクルの花嫁』だって、最初聞いたら3時間って。またやらかしてんなって。でも意味のある3時間があるし、そうじゃないとここまで純度の高いものは出来ない。丁寧だと思うけど、がつっと掴んでいるようにも感じる不思議な映画。圧巻でしたね」と再び最新作について触れた。

行定勲監督

行定勲監督

これを受けた岩井監督は「作ったばかりなので、自分でもまだよくわかっていない。これからゆっくり検証しようかと思っている段階」と作品をまだ客観的に観れていないことを告白。また、「『ピンクとグレー』とのつながりで言うと、どこか同じテーマだという気がする。“嘘”っていうこともあるし、今は昔よりはるかに嘘の質が問われているっていうか。誠であればいいというわけでもない現代があって。どう折り合いをつけていくか。それは一つ大きなテーマなのかなって」とも話し、気がつけばあっと言う間の1時間となった。


映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』
3月26日(土)公開

2016年、東京、ひとりの女性、そして、精一杯生きるということ。主演に黒木華を迎え、岩井俊二監督 待望の実写長編作が遂に完成。日本に先駆け、アジア先行公開が決定した事も話題となっている。

監督・脚本:岩井俊二
出演:黒木華、綾野剛、Cocco、原日出子、地曵豪、和田聰宏、毬谷友子、佐生有語、夏目ナナ、金田明夫、りりィ
原作:岩井俊二『リップヴァンウィンクルの花嫁』(文藝春秋刊)絶賛発売中
制作プロダクション:ロックウェルアイズ

映画『ピンクとグレー』
全国大ヒット公開中

芸能界の嘘とリアルを現役アイドル加藤シゲアキが描いた問題作を、「GO」「世界の中心で愛をさけぶ」の行定勲が、映画初出演・中島裕翔を抜擢し、映画化。幕開けから62分後の衝撃。ピンクからグレーに世界が変わる“ある仕掛け”に、あなたは心奪われる―。

出演:中島裕翔、菅田将暉、夏帆、岸井ゆきの、宮崎美子/柳楽優弥
監督:行定勲
脚本:蓬莱竜太・行定勲
原作:加藤シゲアキ「ピンクとグレー」(角川文庫)
音楽:半野喜弘
主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION
製作:「ピンクとグレー」製作委員会
配給:アスミック・エース

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アーティスト情報

岩井俊二

生年月日1963年1月24日(56歳)
星座みずがめ座
出生地宮城県仙台市

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綾野剛

生年月日1982年1月26日(37歳)
星座みずがめ座
出生地岐阜県

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