映画『アーロと少年』ブッチ役・松重豊インタビュー「役とシンクロする瞬間に鳥肌が立つ」

松重豊

舞台、ドラマ、映画など幅広く活躍するベテラン俳優の松重豊さん。悪役イメージの強い松重さんだが、2012年からスタートした初の連続主演ドラマ「孤独のグルメ」シリーズでは新たな魅力で人々の心をつかみ、昨年はアニメーション映画『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』で初めて声優を経験。芸歴30年を越えても挑戦し続けている。

そして『百日紅』に続いて今年はディズニー/ピクサー作品『アーロと少年』で日本語吹き替えキャストとして名前を連ねる。演じるのは主人公アーロに“怖さを乗り越えていく大切さ”を教えるTレックス一家の父ブッチ。「大の大人が不覚にも泣いてしまう感動作だった」と映画の素晴らしさを語る。

──6500万年前、地球に隕石が接近しますが、わずかにそれて衝突はしなかった。ゆえに氷河期はおとずれることなく、恐竜は絶滅の危機を逃れて文明を持ち言葉を話すようになっていた…という“もしも”の設定がユニークですね。

恐竜の世の中になっているって、すごく面白いですよね。肉食恐竜は牛(家畜)を育て、草食恐竜は畑を耕し、恐竜よりも後に誕生したであろう人間は言葉を持たない動物と化している。最初は「子供向けの映画なのか?」と思っていましたが、とんでもなく面白い罠が仕掛けられていて、そのうえ大人の涙腺を刺激してくる。ここまで泣いてしまうのか……というくらい泣いてしまったのは驚きでした。

──本当に老若男女が楽しめる映画ですね。臆病で弱虫なアパトサウルスのアーロが父親との死別を経て、人間の男の子スポットとの旅によって成長していく。そこで描かれる“恐怖の乗り越え方”や“生きていくことの意味”は、苦難を知っている大人にこそ響くのかもしれません。松重さんの涙腺を緩ませたのはどういうところですか?

アーロにとって少年のスポットは自分の父親を死に追いやったかもしれない存在です。簡単に言えば敵ですよね。でも一緒に行動することによって心が動いていく。少しずつ動いていくその変化が涙腺を刺激する。アーロにとって、恐怖を乗り越えることが大人になることとして描かれていますが、大人の目線で言うと、大人は大人で明日を乗り越えていくために常に恐怖を抱いていて、それは死ぬまで続いていくものなんだなと。

また、恐怖に打ち勝つことだけでなく、価値観の違う者同士が認め合い、許し合い、どうやって共存していくかを真剣に考えないと地球の未来はない。そういうことも改めて教えてもらい、感動させられてしまった。大人であっても不覚にも泣いてしまう映画です。

(C)2015 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

(C)2015 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

──親子の物語はもちろん、ピクサー/ディズニー作品は友情を描くことが上手い。『トイ・ストーリー』のウッディとバズ、『モンスターズ・インク』のサリーとマイク、『ファインディング・ニモ』のマーリンとドリー…そして今回のアーロとスポット。松重さんがアニメーションのキャラクターの声を演じるのは原恵一監督の『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』に続いて2回目となりますね。

前回は葛飾北斎の役でした。絵に合わせて声をあてていく作業がすごく面白くて。その後、あまり間を空けずに『アーロと少年』の話をいただいた。『トイ・ストーリー』で唐沢寿明さんと所ジョージさんが吹き替えの声をやっていて、その時、俳優部が声優をやるのかと新鮮に感じていたんです。さらに『トイ・ストーリー』は世界初のフル CGアニメーションということでも話題でしたよね。アニメなのにリアルで、その映像の面白さにも驚いた。

そんなCGアニメに参加できること、技術的にも進歩している作品に参加できることは嬉しくもあり楽しみでもありました。僕の子供はもう成人してしまったので、子供と一緒に見に行くことはできないでしょうけれど、映画館でバイトをしている息子が『アーロと少年』を観たいって言ってくれた、面白そうだねと言ってくれた。それは嬉しかったです(笑)。

──息子さんが観たあとに語り合えそうですね。『トイ・ストーリー』から20年、『アーロと少年』はCGアニメーションの技術進歩にも驚かされる映画です。この作品が監督デビューとなるピーター・ソーンはピクサー・アニメーション・スタジオで経験を積んできた才能ある監督。彼を中心にした製作チームは松重さんの担当したTレックスをはじめ恐竜について徹底的にリサーチを行い、あのキャラクターを作り上げたそうです。リアリティあるCGについてはどんな感想をお持ちですか?

あまりにも CGアニメーションがリアルすぎると生々しすぎて引いてしまうことがあると思うんですが、この『アーロと少年』はそのギリギリを上手く表現している。恐竜の質感はリアルだけど生々しい手前で留まっている、そこが凄い。

背景も実写をどうにかして作っているのか?と思ってしまうほどリアル。自然描写がリアルであるからこそ、そこで生きる恐竜たちの生活もリアルに映って見えるのかもしれません。このアニメーションは100年経っても残っていく、そういう映画だと思います。

松重演じるブッチ(写真中央)/(C)2015 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

松重演じるブッチ(写真中央)/(C)2015 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

──声優の仕事は、出来上がった作品に命(=声)を吹き込む最後の仕上げとも言われますが、それだけ作品を絶賛しているということは、プレッシャーも大きかったのでしょうか。

責任を感じてプレッシャーに押しつぶされてしまっては元も子もない、良いことはないので、気楽にというと言い方は不適切かもしれませんが、ラフな気持ちで臨みました。誰も恐竜なんて見たことないわけですから、どんな声を出したとしても「これが恐竜の声だ!」って堂々と言ってしまえば納得してもらえるだろうと(笑)。

ブッチの口の動きに合わせて声を入れていくリップシンクは難しいかもしれない…と思っていましたが、やっていくうちに自分の声がブッチに近づいて、シンクロする瞬間に鳥肌が立つんです。実写のお芝居で、共演者と心と心がつながって「あれ、いまカメラ回ってた?」そういうときの感覚に近いのかもしれません。面白いのは、映像のなかのブッチから聞こえてくる声が自分の声ではなくブッチの声に感じたことです。僕がブッチに乗り移って、寄り添って、それがひとつの映像となって自分自身に返ってくる、飛びこんでくる、とても面白い経験でした。

(取材・文:新谷里映)


映画『アーロと少年』
2016年3月12日(土)全国ロードショー

監督:ピーター・ソーン
製作:デニス・リーム
製作総指揮:ジョン・ラセター
原題:The Good Dinosaur
全米公開:2015年11月25日
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

松重豊

生年月日1963年1月19日(56歳)
星座やぎ座
出生地福岡県

松重豊の関連作品一覧

ジョン・ラセター

生年月日1957年1月12日(62歳)
星座やぎ座
出生地アメリカ・カルフォルニア州ハリウッド

ジョン・ラセターの関連作品一覧

関連サイト

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST