ケイン・コスギ×三池崇史監督インタビュー「普段とは違う快感はありました」―映画『テラフォーマーズ』

三池崇史監督とケイン・コスギ

三池崇史監督とケイン・コスギ

これは映画業界全体に一石を投じる必見作である。映画はこれまで、自ら作り上げた「こうあらねばならない」という既成概念にあまりにも縛りつけられてきたのではないか。これもあり!『テラフォーマーズ』はそう喝采を叫びたくなる、新しき王道の提示であり、そもそもの表現の自由と可能性をきわめて明快に問いかけている。

「普段とは違う快感はありましたよね。どうしても僕ら映画を作ってる人間は、(原作を)どう映画化するか。映画化するにあたって、何を表現するか。そんな余計なことを考えちゃう。それから解放されてるというか。これ、そのまんま? しかも(コミックの)1巻だけ? ですから(笑)。想いとかそういうものは役のなかに秘められていて、彼らは少し行動するだけ、自ら闘おうとするだけなんですよね。なぜそういうことになったのか。それぞれ追いつめられているわけですが、それは断片でしか見えない。普通なら、そいつらが人と関わりあって起きた物事で変わっていく中でドラマが生まれてくるんですけど、そういうものを一切拒絶している原作。このふたりのラブストーリーはどうなっていくんだろう? と思った瞬間、ボキッと(命が絶たれる)。え? っていう(笑)。普通大事だとされている物語というものを完全に瞬殺しちゃう漫画のあの感触。でも映画じゃ出しづらいだろうなとは思ってたんですけど、“映画として描く”みたいなのは余計なお世話だなと。そんなことをする余地がまったくなかった。それどころじゃない。自分としてはすごく楽しかったですね」

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

原作漫画を「映画として」解釈する……というような御託が、本作にはない。

「演じる側は大変だったと思いますよ。(闘う)相手が(撮影現場には)いないので。いるのはダミーだけだから。特に格闘シーン。立ち回りに関しては、ふたりの対決であれば、ふたりの技と技がぶつかりあってダダダン、息もあってボン! ふたりともガッと決まりました、カメラも撮りました、OK、と演じるほうにも(手応えの)感触があるわけですよ。あ、いま、イケたなという。でも、これは、相手がどうなってるか、わかんないわけですから。しかも(相手に)当たった感触がない。格闘は全部ひとりでやってる。そこは大変だったと思いますね」

つまり、キャラクターに自立性が求められる。背景などの説明はないから自立していなければいけないし、アクションも自分で自分の面倒を見る自立性が必要なのだ。「大変だった演じる側」のひとり、ケイン・コスギは語る。アメリカ出身でハリウッド産活劇にも多数出演している彼にとっても、これは難易度の高い仕事だったようだ。

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

「なかなかないですよね。相手のいないアクションのシーンって。相手が大きいので、かなり高く跳ばないと、顔を蹴れないし。なかなか面白く楽しい経験でした。ただ、いままでやった中で、衣装がいちばん重かったです。いいトレーニングしたっていうか(笑)。撮影中、あの重い衣装着てたから、その後の他の作品でのアクションはすごく楽でした(笑)」

ケインが演じるのはゴッド・リーなる元テロリスト。突飛で、かなりフィクショナルなキャラクターだけに、画面の中に立ってるだけで説得力を醸し出す必要がある。

「原作にも説明はほとんどなかったので、バックストーリーをなんとなく作って。スクリーンには出ないけど、自分の中ではいろんな理由でここにいると考えてましたね」

三池監督は言う。

「芝居がない分、俳優としてはきちんと自分たちで作るのが仕事になるというか。本能的にそうなると思いますよ。言葉がいろいろキャラクターを語ってくれるんだったら、台詞を覚えていって、それを頭に入れることで、よりどう表現するかで、それがどう見えるかということもあるんでしょうけど。そういう大事な台詞があんまりないんですよ。少なくとも自分を語ったり、というのはない。自分のキャラクターを表現するような台詞があんまりないんです。行動では見せますけどね。だから、うまくしゃべって、何か伝えるだけが俳優の仕事ではないということですよね。それを一流の人たちが表現するとこうなる。人気がある人たちは、単にアイドル的なものがあるんじゃなくて、本人に特殊な魅力があるんだなっていうことを見つけてもらえると思う。普段、映画やテレビで観ている人たちが出るんですが、(この映画では)どこか気配が違う。結局、映画は俳優を見るものだと思うし、そこから拡がっていく。そのことは演じる側もよくわかってると思うんですよ。そういう意味では、強い役をずっと演じてきたケインさんの歴史の中に当然取り込まれるわけですよね。しかも団体戦で言う『先鋒』でしょ。これは大事なところですから」

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

アクションスター、ケイン・コスギにとっては間違いなく初めての役どころだ。

「いちばん最初、このお話をいただいたときは海外にいまして。でも即、『どんな役でも、三池監督だったら』と。いろんな役に挑戦してみたいですからね」(ケイン)
「(映画の)アタマで(ゴッド・リーは)虫、食べてるんだけど、あんまり不自然じゃない(笑)。この人、普段から食べてんのかなと(笑)」(三池)
「いや、そんなことはないです(笑)」(ケイン)
「どちらかと言えば、虫は大嫌いみたいで(笑)」(三池)
「いちばんの弱点ですね、虫は」(ケイン)

三池監督は、ポール・ヴァーホーベンの『スターシップ・トゥルーパーズ』(原作ロバート・A・ハインライン)をフェイバリット・ムービーに挙げている。火星を舞台に、人型に進化したある生物と、地球の荒くれ者たちが闘う本作は当初、あのようなバイオレントかつ反権力的な映画になるのかと筆者は考えていた。ところが出来上がった映画は、そうした予想をはるかに超え、たとえばデヴィッド・リンチが『デューン/砂の惑星』(原作フランク・ハーバード)で挑んだような、途方もないイマジネーションが炸裂している。

「後半はね、正確に言うと実写化じゃないんですよね。3Dの中に人間が合成されている。実写、ここだけじゃん! みたいな(笑)。人間をアニメ化するというか。いや、アニメというより漫画の世界に入っていく。ある瞬間、人間ごとデジタルになる。その一体感って、俺らも漫画になれるんだ、というか。そういう逆転の要素があるんだなと」

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

映画における、新しい瞬間の誕生である。

「感触的には初めてですね。感覚的に何かが麻痺する。これまでこだわっていたことが、大した問題ではなかったんだなと。面白いか、面白くないか。楽しめるか、楽しめないか。その可能性はもっと違うところにあるんだなと。映画なので、どこかで奇跡は起こってほしいわけですよね。子供たちが観れば、いい意味か悪い意味かわからないけど、なんだこれは? 見たことないぞこれは……となると思う。少年たちにとっては、ちょっとした奇跡になる。それが起これば、世界中の若いヤツらにも気に入ってもらえる。映画は単独で、いままでのことをひっくり返すことができる。それが映画なんだ、ということが起こってほしい」

そう、奇跡もまた、自立した出来事なのである。

三池崇史監督とケイン・コスギ

(取材・文:相田冬二)


映画『テラフォーマーズ』
4月29日(祝・金)全国ロードショー!

監督:三池崇史
出演:伊藤英明、武井咲、山下智久、山田孝之、ケイン・コスギ、菊地凛子、加藤雅也、小池栄子、篠田麻里子、滝藤賢一、太田莉菜、福島リラ、小栗旬
原作:「テラフォーマーズ」作:貴家悠/画:橘賢一(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
配給:ワーナー・ブラザース映画

劇場版の前日譚を描く、dTVオリジナル「テラフォーマーズ/新たなる希望」

(C)BeeTV

(C)BeeTV

dTVオリジナル「テラフォーマーズ/新たなる希望」
4月24日(日)より配信中

原作:作・貴家 悠 画・橘 賢一 (集英社「週刊ヤングジャンプ」連載中)
監修:三池崇史
監督:山口義高
出演:伊藤英明、武井咲
篠田麻里子、太田莉菜、渋川清彦、的場浩司、青木健、黒石高大
菊地凛子、加藤雅也、林遣都、菅谷哲也、藤井武美、団時朗、高岡早紀

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三池崇史

生年月日1960年8月24日(58歳)
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