【レビュー】『レヴェナント:蘇えりし者』―ゴールデンウィークに必見の、サバイバル映画の最高峰!

(C)2016 Twentieth Century Fox

映画『レヴェナント:蘇えりし者』より (C)2016 Twentieth Century Fox

文字通り、「度肝を抜く」一本

メキシコ出身のアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督は、監督デビュー作の『アモーレス・ペロス』や、『21グラム』『バベル』、そして第87回アカデミー賞で作品賞に輝いた『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡』など、人間模様を主眼に置いた作品群で評価を確立してきた。しかし、名優レオナルド・ディカプリオを主演に迎えた最新作『レヴェナント:蘇えりし者』では、苦境に立たされた主人公が繰り広げる究極的なサバイバルと復讐劇を描き、世界を驚かせた。

物語の舞台は、19世紀のアメリカに広がる未開拓の荒野。主人公のグラス(レオナルド・ディカプリオ)は、息子のホーク(フォレスト・グッドラッグ)、ヘンリー隊長(ドーナル・グリーソン)、ブリジャー(ウィル・ポールター)、フィッツジェラルド(トム・ハーディ)らと共に狩猟を行っていた。しかし、一行はインディアンの襲撃を受けて多くの人員を失い、やむなく帰還することに。

その途中、森で出くわしたグリズリーに瀕死の重傷を負わされたグラスは、フィッツジェラルドの策略によって置き去りにされた挙句、最愛の息子であるホークを殺されてしまう。窮地に陥ったグラスだったが、彼は驚異的な生命力と驚愕のサバイバル術、そして思わぬ出会いによって、何とか生き延びることに成功し、フィッツジェラルドへの復讐に乗り出す…。

(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation.  All Rights Reserved.

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本作でサバイバル映画に初挑戦となったイニャリトゥ監督だが、彼の類稀な演出力は、どうやらジャンルを問わないようだ。オープニングでは緩やかなテンポでグラスとホークの愛と信頼に満ちた親子関係を描きながらも、インディアンによる襲撃を起点として、ゴア表現とスピード感、そして、自身がその場にいるかのような臨場感に満ちた大規模な戦闘を展開させ、観客を物語へ力強く引き込む。

その後も、ゲリラ的で予期することが不可能なインディアンの追撃や、負傷したグラスを巡る紛糾などの緊張感に満ちたシーンの数々を描くのだが、それと共に、「個人を守るために全体を危険に曝すべきなのか?」という正解のない問題や、グラスの仲間たちがそれぞれの心に秘める葛藤や策略を掬い取ることによって、自身の持ち味である、人間味に溢れるドラマも展開させていくディレクションが素晴らしい。

イニャリトゥ監督と共に数々の傑作を生んできた、エマニュエル・ルベツキによる撮影も実に見事だ。グラスらが繰り広げるインディアンとの戦闘シーンでは、クローズアップによって被写体と極めて近い距離を保ちながらの長回しで、画面に生じる臨場感やアクションの連続性を効果的に演出している。

他方、生き抜こうと奮闘するグラスが歩む旅路では、パンフォーカスによって画面全体にピントを合わせて、ちっぽけで血生臭いグラスの姿と、雄大で美しい自然の間にコントラストを生じさせることで双方を強調し、さらにその間に降り注ぐ天からの光に「生命の尊さ」という普遍的で深みのあるテーマを象徴させるなど、技巧と示唆に富む撮影を見せるのは流石だ。

本作でアカデミー賞の撮影賞受賞、しかも3年連続という史上初の快挙(過去に.『ゼロ・グラビティ』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡』で受賞)を成し遂げたルベツキだが、この結果に異論を唱える余地はない。

(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation.  All Rights Reserved.

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主演を務め、アカデミー賞主演男優賞を受賞したディカプリオの熱演にも盛大な拍手を送りたい。彼が演じるグラスは、復讐を果たすための長い旅路の中で、飢えや寒さと戦うために、動物を生で喰らい、死骸の中で眠るといった驚愕のサバイバル術を披露する。

驚くべきは、ディカプリオの役者魂だ。彼は劇中の食事シーンで、とても美味とは言えないバイソンの生の肝臓(本物)を喰らったという。本作には、かつて『タイタニック』で世の女性を魅了した“レオ様”の姿はない。キャリアで生じたことがない熱気と血生臭さに満ちたディカプリオの一挙手一投足は、老若男女を問わずに見る者をくぎ付けにする。

終盤にかけては、何とか生き延びたグラスが開始する、フィッツジェラルドへの復讐が描かれる。物語の序盤でフィッツジェラルドは絶対的な拝金主義者(つまり絶対悪)として印象付けられるので、観客は自然と本作の結末を予想できているような気持ちでストーリーを見つめることとなるのだが、イニャリトゥ監督は観客が予期しうる凡庸な結末を導くのではない。

迎えたクライマックスで、復讐に燃えていたグラスは、さりげなく挿入されていた「ある要素」の介入によって、観客の予想を裏切る行動に出るのだ。第4の壁を超える演出によって、グラスの行いに対する解釈が観客に委ねられるラストシーンも味わい深い。

サバイバル映画を作る場合、多くの監督はサスペンス性やアクションを表現することに腐心して、ストーリー性を希薄化させてしまう。観客を喜ばせるためのエンターテイメント作品としては、それでいいのかもしれない。しかしイニャリトゥ監督は、自身のディレクションによって、ルベツキの撮影、ディカプリオの熱演、多層的なキャラクター描写といった物語の構成要素を融合し、観客の度肝を抜くサバイバルと重厚な人間ドラマを両立することで、本作を既存のそれとは次元を異にするサバイバル映画として立脚させ、アカデミー賞監督賞の2年連続受賞という偉業を成し遂げた。

これまで数多くの作品が作られてきたサバイバル映画というジャンルだが、本作は最高峰と称しても差し支えない。いよいよ迎えるゴールデンウィークで、本作は多くの観客を魅了することだろう。

(文:岸豊)


映画『レヴェナント:蘇えりし者』
大ヒット上映中

主演:レオナルド・ディカプリオ
音楽:坂本龍一
監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ

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