窪田正孝インタビュー「どこにも当てはまらない役者になりたいなと思っています」―映画『ヒーローマニア-生活-』

窪田正孝

窪田正孝

個性もバラバラなはみ出し者たち4人が、ストリートの悪を「狩る」一風変わったヒーローになる。ユニークな一編『ヒーローマニア-生活-』で、窪田正孝が演じるのは格闘技マニアのニート、土志田誠。身体能力は高いくせに、自信満々なところは微塵もなく、誰に対しても態度は控え目。謎のヒーロー集団として世間の注目を集めるようになっても、そのありようが変わらない。実に興味深い、オリジナルなキャラクターだ。

「(出てくる)みんなコンプレックスがあって。マニアックな部分がすごくあるので、ちょっと違ったところで共鳴しあっていればいいなと思いました。誰と(一緒に)いても変わらないところは意識してましたね。ヒーローの集まりが悪をやっつけよう――ということではあるのですが(それぞれの)つながってるところがズレているので、そのズレが面白いなと思ってやっていました。おっしゃってくださったように、極力『変わらない』ように心がけていました。闘っているところとのギャップというか。そういう部分は出せたらいいなと思ってました」

(C)福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア-生活-」

(C)福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア-生活-」

その変わらなさが、土志田の強さ=芯に思える。

「ある種それが彼の軸になっている部分でもあります。唯一弱点があるとしたら、(メンバーのひとり寺沢)カオリ(小松菜奈)ちゃんだけですかね。(土志田は)異性として見てても、(カオリには異性として)見てもらえず。一緒に歩いてるシーンは、小学生と高校生みたいなイメージが出来たらいいなと勝手に思っていました。(精神年齢は)だいぶ低いんじゃないですかね」

ときに挙動不審にさえ映る、土志田のコミュニケーション力不足には共感する部分もあるという。

「(自分自身)基本的に人見知りなので。(土志田の)気持ちはわかりますね。仕事になると、一緒に作っていく方々なので慣れるんですけど、普段会うと話しかけられないし、話しかけられたくないというか。街中でちょっと知り合いとすれ違っても下向いてしまいます……別のルートを行くタイプですね。あの人っぽいな、と思ったら避けて通ります。なんとなく、プライベートでは会いたくない(苦笑)。面倒くさいわけじゃないですが、なにをしゃべっていいか、わからないんです。『どうも!』のあと、二言目が出てこない(汗)」

(C)福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア-生活-」

(C)福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア-生活-」

気どらず、誤魔化さず、静かに、正直に、そう語る窪田。たしかに、土志田の誠実さとリンクするような気がする。窪田ならではの誠実さは、たとえば次のような「人を見つめる」まなざしにあらわれている。

「センスある方だな、と思うと、すごく見ちゃいます。何に関しても。女性とか、すごく字が綺麗な方のペンの持ち方とか、たまに(紙のほうを)斜めにしながら書いてる人がいたりして。たぶんそれで上手い字が生まれるというか。真っ直ぐ書かない。そういうのを見るのがすごく好きで。アクションコーディネーターの森崎(えいじ)さんには、今回に限らず何作もお世話になってるんですけど、盗みたいなと思わせてくれるアクションを目の前でやってくれるんです。そのかたちがすごくカッコいいんです」

こうした視点が、間違いなく演技表現を進化させているのだろう。たとえば、昨年主演した連続ドラマ『デスノート』での凄まじい芝居は多くの視聴者の度肝を抜いた。『ヒーローマニア-生活-』の土志田は、彼の振幅=スケールを体感させてくれる。

「いつも与えられた役以上のものを返せるようにと極力努力をしているんですけど。ひとりの人間に演じられることには限界もあるし。見てくれを変えても、やっぱり芝居となると、個性というものが出てしまったりもします。我が出てたものをだんだんだんだん抑えないといけないなあと。観てくださる方が増えれば増えるほどイメージというものがついていって。たくさんの人に観られるということは、それだけ意見もあるし、イメージもついてくる。それを逆に壊していくという作業を今はしているところで、これから先もしていって、どこにも当てはまらない役者になりたいなと思っています。こうやって、新しい役を与えていただいてまたひとつ役の枠をこじ開けてもらって、ありがたい限りです」

(C)福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア-生活-」

(C)福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア-生活-」

人は変わる。人は変わらない。映画の中では、そんな論議も繰り広げられる。窪田自身は、変わったのだろうか。

「もともと、人とかかわらない仕事がしたかったんです。だから、人と極力しゃべらない仕事を、と思っていました。車やバイクが好きだったので整備士になりたくて、ずっとガソリンスタンドでバイトしていました。車を洗ったり、ガソリンを入れたりする時間が何よりの幸せでした。そんなふうに没頭できることがあるとすごく幸せに感じていました。『いらっしゃいませ』とか『ありがとうございました』と大声で言ってる時間がどんどん過ぎていってあっという間に時間が経っていて、没頭できることや夢中になれることがあるのって、すごく幸せだなあって。いまやってる仕事は、(以前の)自分が求めていたものとは真逆のものでした。3ヵ月=1クールで、スタッフさんとも『はじめまして』の方がたくさんいたりもします。でも、そうなっていくことで、ひとりで没頭するよりも、みんなで没頭できるほうがすごく楽しいなって思います。委ねられるというか、いい意味で他力本願になれる。もちろん、こっちからも出しますが、スタッフみんなで役をつくりあげれる。そういうふうに、補い合ってひとつの作品が出来ていくことの楽しさを知れましたね。でも、答えを求めれば求めるほど、逃げていくし、やっぱりこの仕事は底知れない。そんなふうに没頭できるものを見つけられたことに幸せに感じてます」

(C)福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア-生活-」

(C)福満しげゆき・講談社/映画「ヒーローマニア-生活-」

人間への興味はもともとあったのではないだろうか。前述した「人間観察」のくだりは、他人への根源的な好奇心がなければありえない。「人間観察」は演技の源でもある。

「人とかかわらない、という言い方は極端だったかもしれないですね。バイトもひとりでやってたわけではないので。教えてくれてる人とか、数少ない中とはいえ、共感できる人が一緒にいてくれたらいいなと思ってはいます。ひとりでいることに慣れてしまうと、成長がないというか。本とか読んで勉強したりするのって、知識であって、経験ではないと思っていて。人を成長させてくれるのは、やっぱり人でしかない。それはすごく思います。新しい人と出逢うと、新しい色だったり、空気感だったり、話し方に触れることができる。そのことによって、興味をそそられることが多くなったのも事実ですね」

では、一緒に仕事をする相手にとって、どんな存在になれたらいいと思うのだろうか。

窪田正孝

窪田正孝

「こいつ面白いなと思ってもらえたら、うれしいですね。こいつ変わってるな、でもなんでもいいですけど(笑)。また一緒に仕事したいなと思っていただけたら、いちばん幸せですね。今回の(豊島圭介)監督とは、以前、『古代少女ドグちゃん』というドラマでご一緒していたんですがそうやって、つながっていけたら嬉しいですし、それで人を喜ばせることができたら、本当にやりがいのある仕事だなあと思います」

取材・文:相田冬二、ヘアメイク:糟谷美紀、スタイリスト:大石裕介(DerGLANZ)


映画『ヒーローマニア-生活-』
大ヒット上映中

出演:東出昌大、窪田正孝、小松菜奈、山崎静代(南海キャンディーズ)、船越英一郎、片岡鶴太郎
原作:福満しげゆき 「生活【完全版】」(モーニングKCDX/講談社刊)
監督:豊島圭介『ソフトボーイ』『花宵道中』『マジすか学園』
脚本:継田淳『ヌイグルマーZ』『マザー』
音楽:グランドファンク 中島哲也作品、堤幸彦作品、『ホットロード』『海街diary』
主題歌:NICO Touches the Walls(Ki/oon Music)
配給:東映・日活共同配給(東映:営業 日活:宣伝)
企画・制作幹事:日活
制作:ジャンゴフィルム
製作:「ヒーローマニア–生活-」製作委員会

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アーティスト情報

窪田正孝

生年月日1988年8月6日(32歳)
星座しし座
出生地神奈川県

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