【単独インタビュー】『あさが来た』“理想の旦那さま” 玉木宏、「和製シャーロックホームズ」をどう演じる?
2015年度下半期のNHK連続テレビ小説『あさが来た』で、ヒロインの夫・白岡新次郎を好演し、大きな話題となっている玉木宏。

玉木宏
そんな彼が、今度は映画『探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海』で、和製シャーロック・ホームズとも称される脳科学者の御手洗潔を演じる。そこで、玉木宏にインタビューを敢行し、本作の撮影秘話や朝ドラの反響、そして人生・結婚観などを聞いた。
「ミステリーが嫌いな人はいない」
──御手洗役は原作者の島田先生から「御手洗潔を演じる俳優は玉木さんしかいない」と熱望されたと聞きましたが、オファーがあった時の感想は?
嬉しいし、恐れ多いし、プレッシャーを感じましたね。プレッシャーを感じたのは、映像化にはつきものですが、やはり原作ファンが多いですからね。でも、島田さんがそうおっしゃるというのは何よりも嬉しいことですから。それならば、しっかり臨まなければいけないなという思いでした。
──御手洗は「和製シャーロック・ホームズ」とも言われていますが、何か役作りで参考にされたものはありますか?
特にありません。原作や台本から読み取って、演じました。何か参考にしてしまったらその模写になってしまったりもするので、あえてそれをする必要はないかなと思いました。
──普段ミステリー小説や映画などは好んで見ますか?
中学生の時によくテレビでリアルタイムに観ていたのは『金田一少年の事件簿』でしたね。この仕事を初めてからは、『シャーロック』とか観るようになりました。2時間ドラマもそうですが、ミステリーが嫌いな人ってなかなかいないですよね。
無機質で窮屈だった「ミタライ」
──テレビドラマ版撮影時には「窮屈だなと思いつつ演じています」と、おっしゃっていましたが、2度目の御手洗を演じるにあたり、捉え方は変化しましたか?
1度目よりも2度目のほうがもちろん体は慣れているんですけど、最初に僕がこの役を窮屈だと感じたのには理由があるんです。
こういう対話をしていて僕もそうですけど、考えながら話をするのがいわゆる普通の人だと思うんです。でも、御手洗はいわゆる天才で、人が考えつかないことを一歩も二歩も先を行くIQの持ち主だから、言葉を発し始めたらゴールに向かって一直線に行ける人で、全部頭の中で整理されているので、身振り手振りの動きが何もない人だと思うんです。
だからお芝居をする中で、僕は台詞を言いながら手を動かすことをほとんどせずに動きの制限をつけていたので、すごく窮屈だったんですね。いわゆる無機質な機械的なものを芝居に取り入れたらそう見えるんじゃないかなと思って。自分にないものだからこそ、窮屈と感じましたね。
──ご自身に似ているところは全くありませんでしたか?
あまりにもかけ離れすぎていて、全くないです。結果として、僕が意図して入れるものではなくて、僕が演じたから「御手洗っぽいよね」と言われるのは周りの人が判断するものだから。ただ、天才に、変な人に見えるようにというのに徹していたので似てないような気がしますけどね。
──御手洗は脳科学者ということで、専門用語を含んだ長台詞が多かったですが、何か意識されたことはありますか?
台詞に必要なアクションではなくて、彼の日常の動きの中で淡々と台詞を言うということに照準を置きました。
どれくらいのさじ加減で謎解きをするのかというのが台本を読んだ時から難しいなと思っていて。御手洗は「趣味が探偵」と言っているくらい謎解きをすることが楽しみな人ですから。
ただ解決するだけなら自己満足でいいと思うんですが、それを人に伝える際に発する言葉は全部説明台詞で、それを楽しそうに言うのもおかしいし、犯人を追い詰めるように言うのも彼らしくない。心理学を学んでいるが故に、犯人に対して追い込まない、優しさもあるような人だから…なんてことを全部含ませながら、臨みましたね。
広瀬アリス「すごく真面目な方」

5月に行われた完成披露イベント
──本作の相棒は、映画オリジナルキャラクターのヒロイン・小川みゆき役の広瀬アリスさんでしたが、共演の感想は?
初めてお会いしたんですけど、どんな子だろうなと思いつつ、探っていたんです。見た目の女性的なキレイさとは裏腹に、体育会系の芯のある女性でしたね。
ストイックな部分もあったり、周りに気を遣うような繊細さも持っていたり、すごく真面目な方でした。

集中した撮影のおかげで、福山観光も堪能したという玉木
──本作のメガホンを取ったのは、ドラマ・映画『相棒』シリーズの世界観を確立した和泉聖治監督ですが、現場ではどのような演出をされましたか?
和泉監督は良い意味でせっかちな方で、すぐに本番に行ってしまうんですね。だから監督のペースに対応できるように、こっちがちゃんと準備をしておく必要があって、短時間ですごく集中していないといけないという緊張はありました。
でもそれは現場にとってはいいことで、いつも巻いて早く終わるので撮影時間は短いし、その後はそれぞれ福山市で観光する時間が持てました。キャリアがある方ですから、キャストからもスタッフからも信頼される方でしたね。
──ロケ地となる広島県・福山市や瀬戸内海での撮影はどうでしたか?
撮影はすべてスムーズに進みましたね。広島には何度か行ったことがあったんですけど、福山市は初めてでしたが、サイズ感が「ちょうど良い街」でしたね。駅を降りたらすぐに福山城があって、繁華街もあって、でも海も近くて、全部手に届く範囲なのがいいなと思いました。美味しいものもたくさんありました。
11ヵ月の大阪生活~自宅でDIY
──「難しい事件でしたら、よろこんで」との自信に満ちたセリフの予告編が印象的ですが、玉木さん自身が今「よろこんで」したいものは何かありますか?
DIYですね。11ヵ月間撮影で大阪で生活していて、東京に戻って来たら、家の色んなものが壊れていて…。
もともと何か作るのが好きなので、楽しんで直したり作ったりしていますね。最近は家にあった観音開きのドアが劣化したので、サイズカットして、ドアノブも付けて、シルバーのペンキを塗りました。
──NHKの朝ドラ『あさが来た』で大阪に11ヵ月も滞在されていたんですね。ドラマ放映後の反響はいかがでしたか?
大阪で生活してずっと撮っていたものの、大阪での反響は聞こえてくるような環境ではなかったんです。

『あさが来た』は、名シーンの連続だった
日中に外にいて誰かと触れ合うことはほとんどなかったので、全部クランクアップして東京に戻ってきてから、まだオンエアが1ヵ月くらい放送されている時に、あっちこっち行っていると「あ、こんな人まで見てくれているんだな」という反響を感じましたね。
──頑張るヒロインを全力でサポートする夫・白岡新次郎を演じられて、結婚観や価値観は何か変化されましたか?
これを機に変わったということではないです。結婚願望も前からあった方だと思います。
その中で家族というところに照準を合わせたテーマで撮影をしていると、自分の将来のことも当然考えつつ、『あさが来た』のテーマは結婚というよりも、五代(才助)さん(ディーン・フジオカ)が言った言葉ですが、「後世に何を残せるか」というのがひとつのテーマでもあったので。
あさ(波留)も新次郎も加野屋や保険会社、学校を作って、そういうものを全部後世に託していくわけじゃないですか。そういうことを考えるとやっぱり子供を授かって、いつか父親になってという想像をしましたね。
父親役は初めてではなかったんですが、おじいちゃん役は初めてだったので、そこは未知の世界でしたね(笑)。
あれだけ家族みんなに良いお父さんとして看取られたのはすごく幸せな生き様だったんじゃないかなと思いますね。江戸から明治にかけての話でしたが、家族間の温かさや風通しの良さだとか、現代の日本人がきっと欲しているものがたくさんつまってたんだと思います。
──ところで、最近観た映画で印象に残っているものはありますか?

『蒲田行進曲』 (C)1982 松竹株式会社
昨年、『蒲田行進曲』(82)など古い作品を見返した時期がありまして。その当時は気付かなかったことに改めて気付きますよね。
共演させていただいた人たちがこんなに若かったんだとか、新しい発見があったり。
あと、『ジュラシック・ワールド』(15)の日本語吹替をやらせてもらったのですが、その為に『ジュラシック・パーク』(93)をもう一回見返してみたんですけど、CG界の概念を変えるような作品として成立しているし、あれはあれで色褪せてないなと思いました。
──今年36歳を迎えられましたが、20代の頃と比べて、仕事や人生についての考え方は変わりましたか?
20代の頃は早く30代になりたかったけど、結果的に何が変わったのかは30代になってみてもよく分かってないんですね。
20代は同世代のライバルが多かった時期で、30代に入ってからは自然と自分のカラーが確立してきて、すごく楽になりました。いただく役の振り幅も広くなったし、変な焦りはなくなりましたね。俳優としてやっていく中で、これから先のことを考えたら、30代は20代よりももっと大事にな基盤になる部分だと思うので、今こそ色々な役柄や作品に触れておくべき時期だと思います。
(取材・文:クニカタマキ)
『探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海』
6月4日(土)全国ロードショー
出演/玉木 宏、広瀬アリス、石田ひかり、要 潤、谷村美月、小倉久寛、吉田栄作
原作/『星籠の海』島田荘司(講談社文庫 刊)
監督/和泉聖治
(C)映画「星籠の海」製作委員会
mitarai-movie.jp
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