濱田岳×佐津川愛美インタビュー/映画『ヒメアノ~ル』にある「夢」と「リアル」

劇中でカップル役の濱田と佐津川

劇中でカップル役の濱田と佐津川

古谷実の漫画を吉田恵輔監督が映画化した『ヒメアノ~ル』は、観客の想像をことごとく乗り越えていく作品である。共に1988年生まれ。恋人役を演じた濱田岳と佐津川愛美のふたりに、語ってもらった。

濱田:こういう作品に僕はあまり出たことがないので、どうなっていくんだろう? という期待を持ちながら撮影をしていました。(出来上がった映画で)それが一個一個回収できた気がして、とても満足いく作品だったなあと思います。観終わった後、劇場を出たら、突然誰かに刺されるんじゃないかという恐怖すらおぼえるリアリティだったので、とてもいい映画に出演させていただいたなあと思いました。

佐津川:私は監督とご一緒してみたかったので、今回出演させていただけると聞いたとき、うれしくて。現場に入るのを楽しみにしてました。『可愛く見えるように』とは言われていたので、ちょっと痩せようって(笑)準備は頑張りましたね。普通の女の子なんだけど、可愛く見えるラインを探っていました。姿勢とかは気をつけていましたね。出来上がったものを観たときに、監督がおっしゃっていたことが全部、結果としていいバランスで出ているなあっていうのを感じました。

(C)2016「ヒメアノ~ル」製作委員会

(C)2016「ヒメアノ~ル」製作委員会

濱田演じるバイト青年、岡田は、同僚の安藤が恋しているユカに近づいたことから、想いもかけない幸福に遭遇することになる。

濱田:岡田は夢も希望もないと自分でも言ってますが、いわゆる『いまの若者は……』と言われる代表みたいなところがあります。だから個性はいらないというか、無色透明で、男の人なら自分に置き換えて、3Dゲームの中にいるような感覚で観てくれたらいいなあと思いました。周りが個性的だけど自然なんですよね。(ムロツヨシ演じる)安藤も突飛だけど、いそうと言えばいそうだし。(佐津川扮する)ユカちゃんも、男目線からすると――僕、男子校だったんですけど――もう、男の夢の集合体みたいな人じゃないですか。(シチュエーションとして)可愛い子から逆に告白されて。男子校はみんな、自分から告白する術がないので、必ず向こうから言いよられる……というところから妄想が始まる。(この映画は)一見、ウブな女の子から(ベッドの)手ほどきを受ける、という願ったり叶ったりの状況で。ある意味、中3、高1のヤツらの夢を一身に背負ってる気負いもありましたし(笑)。あのシーンについてはムロ君がとてもうれしい褒め言葉をくれて。『お前、さては童貞だな。あれはリアルすぎるだろ』と(笑)。ああ、やってよかったなと思いました。(僕も)人の子なので、ああいう行為を人様に見せるのは抵抗があるし、不安もあったんですけど、あのシーンにはすごく重要な意味があって、ほんとうにやってよかったなと思う作りにしてくださったので、非常に満足いってます。

ふたりが初めて結ばれた後、ベッドで交わす会話がとにかくリアルだ。経験のない岡田と、それなりに経験のあるユカ。ユカに根掘り葉掘り訊いた挙句、自分勝手に傷ついてしまう男心。あれは、あまりにバレバレでヤバい。オトコってこんなもんよ。という意味でも、特に女性のみなさんに観ていただきたい名シーンである。

(C)2016「ヒメアノ~ル」製作委員会

(C)2016「ヒメアノ~ル」製作委員会

佐津川:ユカちゃんは監督の演出で、とにかく『可愛く』と。もう『可愛く』というワードを何百回言われたかわかんないくらい。すごく細かく(笑)。監督の理想の『可愛く』があるんですよ。ほんのちょっとした手の動きでも、『こっちより、こっちのほうが可愛いかな?』とか。私はそれを一生懸命真似する。監督の理想がユカちゃんで、観た男のひとたちも、岳君みたいに『理想の女の子』って言ってくれたので、そういうふうに映されたのはすごく嬉しいなと思ったんですけど。まあ、言葉ひとつにしちゃうと、ユカちゃんって肉食女子みたいな。でも本人はそんなことを計算しているわけではなくて。たぶん、普通に生きてきて、普通に恋愛してきたことが、岡田君にとって『経験人数が多い』ということになり、それがいちばん傷つくことだった。わざとそうしているのではなく、素直に生きてきた結果、傷つけてしまう……そこはちゃんと表現していかなきゃなあと。余計なことは考えずに、いまの恋愛を楽しもう、という感覚で私は演じていました。(映画が)出来上がったとき、そのやり方がうまくいってたんじゃないかなと思えて嬉しかったですね。ただ、ユカちゃんは映画を観た女子に『小悪魔ですよね』とも言われる(笑)。やはり、男性目線と女性目線って違うんだなと。それはすごく感じましたね。男子は『小悪魔』とは言わないですよね(笑)。

濱田:だって、いいんだもん。騙されても(笑)。美女だから、騙されたっていいの。

佐津川:それ、『この~小悪魔!』って思いながら、ってこと?

濱田:それが楽しくて、幸せなんだね。男のひとは。

佐津川:そっかー。なんか、そういうところも、男子と女子のリアルが両方あるんだなと思いました。

(C)2016「ヒメアノ~ル」製作委員会

(C)2016「ヒメアノ~ル」製作委員会

濱田:でも、佐津川さんがあれをピュアにやってくれたから、成立したようなもので。経験人数を訊いちゃう、言っちゃう、イジけちゃう、泣いちゃうっていう。(ある意味)地獄絵図、最悪な一幕ですけど。でも、ユカちゃんが打算のあるズルい人には映ってないから、ある種、救いにも受けとれるギャグシーンにも映るというか、いいシーンだなと思いましたね。

佐津川:ユカちゃんは、女子目線で言うと……あざとい、かもですよ(笑)。

濱田:ほんとに、中高、男子校で。ずっと、そういう妄想を友だちとしながら日々を過ごしてたんですね。だから、嘘みたいな日々でしたよ。ユカちゃんと台詞のやりとりをするのは。いかんいかん、(これは)お芝居、と思いながら(笑)。やっぱり、自然と嬉しくなっちゃいますよね。ウキウキさせてくれたのは、全然あざとくない佐津川さんのおかげです。はまり役だと思うし、監督のウキウキ具合もほんとにすごかった。監督の理想をある種、押しつけたような(笑)。かたちにするのは女優さんとして大変だったと思います。その努力の甲斐あって、男たちはメロメロでしたね。

佐津川:ちなみに、私、ユカちゃんとは全然違いますから(笑)。違うよね?

濱田:ああいうわかりやすい天使ちゃんではないかもしれない(笑)。でも天真爛漫な感じは一緒だと思うし。天真爛漫という言葉のイメージがぴったりな人だとは思いますね。ユカちゃんとはまた質が違いますけど。

(C)2016「ヒメアノ~ル」製作委員会

(C)2016「ヒメアノ~ル」製作委員会

佐津川:結構、頑張んなきゃ、って意気込んでるところが(撮影に)入る前はあって。でも、もうちょっと気楽にやっていいのかな、と思わせてくれたのが岳君とムロさん。(撮影)初日からものすごくゆるい空気でふたりがいるから。そこに入れていただくことで、ここで意気込みすぎる必要はないなと。何でも受け入れてくれる感じがあって、自由にいていいのかなって。天真爛漫と言ってくださいましたけど、しゃべれる相手がいない現場だとずっと黙ってるタイプなので。

濱田:え? そうなの?

佐津川:おふたりがそうしてくださったんだな、と思いますね。濱田さんは普段、全然岡田君っぽくなくて、ものすごく男らしいです。

というようないいムードだけでは終わらない映画である。後半の怒濤の展開に、観る者は必ずや、驚くだろう。

濱田:これは日常的に誰にでも起こりうることというか。ちょっとした後悔であったり、ちょっと懺悔したくて友だちとお酒を飲んだり。日常で誰もが経験していることであって、ものすごくいいところを衝いた題材だと思うし、胸の痛いところを衝いてくる話ですよね。観終わったときに、あ、怖い、と思ったのは、自分にもそういう負い目があるからだと思います。演じた僕らがそうなんだから、観てくださったお客さんも何か考えるところがあるかもしれない。それくらいリアルに感じました。

(C)2016「ヒメアノ~ル」製作委員会

(C)2016「ヒメアノ~ル」製作委員会

佐津川:私はちょっとのことでもものすごくネガティヴに考えるタイプなので……正直、ここで描かれていることの原因はわからないなと思ったんです。本当のところは何もわからない。でも、すごく切なくて。人間ってわからないな……って。私はいろいろ考えるタイプだけど、逆に、すべての出来事に、明確な原因があるわけでもないんじゃないかとも思うし……結局、他人(ひと)のことってわからないじゃないですか。私、自分のことすらもわからないのに。他人のことなんて、もっとわからないなって。それは普段生活してても思うところであって。かつては、もっと単純だったものが、大人になるにつれて、楽に人と接することも学ぶけども、難しくなってるところもあるんじゃないかなって思います。人としての在り方については、私もグサリと感じてしまう映画でしたね。子どもの頃の気持ち、忘れてたのかもしれないって。

どうか、映画館で、びっくりしてほしい。

(取材・文:相田冬二)


映画『ヒメアノ~ル』
5月28日、TOHOシネマズ 新宿ほか全国公開

出演/森田剛、濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシ、駒木根隆介、山田真歩、大竹まこと
原作:古谷 実「ヒメアノ~ル」(ヤングマガジンKC所載)
音楽:野村卓史
監督・脚本:吉田恵輔
製作:日活 ハピネット ジェイ・ストーム
制作プロダクション:ジャンゴフィルム
配給:日活

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アーティスト情報

濱田岳

生年月日1988年6月28日(30歳)
星座かに座
出生地東京都

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佐津川愛美

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