花沢健吾が選ぶ「愛すべきダメ男が登場する」映画10本

“非モテ”男やヘタレ青年を主人公に漫画を描いている花沢健吾さんは、魅力的なダメ男が登場する映画を厳選。 劇中でダメっぷりを発揮する男たちが“共感”や“救い”をもたらす!

※ピックアップ作品は、2012年末に発行された『シネマハンドブック2013』掲載のものとなります。ご了承ください。


花沢健吾が選ぶ「愛すべきダメ男が登場する」映画10本

アマデウス

モーツァルトの謎に満ちた生涯に迫る人間ドラマ。宮廷音楽家サリエリは、モーツァルトの才能に嫉妬して狂気を駆り立てられ、彼を精神的に追い詰めていく。

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王立宇宙軍 オネアミスの翼

庵野秀明、貞本義行、樋口真嗣らによるGAINAXの第1回制作作品。無気力な宇宙軍士官シロツグが、不思議な少女との出会いをきっかけに宇宙飛行士を志す。

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転校生

オール尾道ロケでつづる青春ファンタジー。体が入れ替わってしまった少年と少女が、戸惑いながらも絆を強めていく。小林聡美が初々しい演技を見せた。

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さんかく

自意識過剰な三十路男が、関係がマンネリ化した恋人の妹に惚れてしまう。小野恵令奈が、気まぐれな態度で姉の彼氏を誘惑する中学生をキュートに演じた。

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グエムル 漢江の怪物

ソウルを流れる川から突如現れた謎の巨大生物が人々を襲うパニック映画。売店を営む一家の娘が怪物にさらわれ、普段はヘタレな父が娘救出のために奮起する。

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ジョゼと虎と魚たち

平凡な大学生が、乳母車に乗る足の不自由な少女と恋に落ちるラブストーリー。二人の間に障害という壁が立ちはだかり、人間の弱さやずるさが浮き彫りになる。

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桐島、部活やめるってよ

学園のスター桐島が突然部活を辞め、姿を消すという“事件”が起きる。校内のヒエラルキーが崩れ始めるなか、人気者とは縁遠い映画部のオタク男子が動き出す。

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月はどっちに出ている

在日コリアンのタクシー運転手とフィリピン人ホステスのロマンスを軸に、ぎりぎりの生活のなかで、たくましく生きる人々の姿をコミカルに描いた悲喜劇。

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冷たい熱帯魚

実在する猟奇殺人事件から着想されたサスペンス。熱帯魚店を営む地味な男が、口のうまい同業者の男の事業を手伝ううち、恐ろしい所業を目の当たりにする。

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ばかのハコ船

東京で事業に失敗した冴えないカップルが、故郷で再起を図るもカラ回りするコメディ。見栄っ張りでいい加減なダメ男が、どこか憎めないキャラとして描かれる。

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『アマデウス』―才能ある新人漫画家が出てくるたびにサリエリ気分です

『存在の耐えられない軽さ』

『アマデウス』

敬虔な態度とたゆまぬ努力で道は開くという凡人(童貞)サリエリのささやかな妄想をあっさり粉砕骨折させる天才モーツァルト。よりによって才能を見抜く力だけはあるんで余計に苦しんでしまう。映像の向こうに俺がいてビックリしましたよ。才能ある新人漫画家が出てくるたびにいつもサリエリ気分ですからね。

10代20代30代と観返していますが、近年ますますサリエリに感情移入しまくりです。凡人だっていいじゃない。僕らにはサリエリ先輩がついている! これを観れば凡庸の神が我々を祝福してくださるぞ! そしてコンスタンツェのおっぱい最高!

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』―最高にダメな男たちが最高にカッコいい仕事を成し遂げる!

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』

アニメでダメな男を描くのは至難の業だ。なぜなら無駄な動きこそがダメ男の表現方法だからだ。主人公シロツグが墓場に行く時、墓石を落としてしまうシーンがあるが、ストーリーに特別必要のないシーンだ。

実写なら簡単に撮れる映像を、大変な労力をかけてコツコツと無駄な動きを描いて積み重ねる。そしてダメ男たちが無駄な動きをしながら縦横無尽に走り回る。呼吸する。そして最後に俺は感謝する。最高にダメな男たちが最高にカッコいい仕事を成し遂げてくれた。この映画を作ってくれてありがとう。そしてリイクニのおっぱい最高!

『転校生』―夏の日の匂いが思い起こされて無性に泣きたくなる作品

この映画も何度観たかわからない。ノスタルジックという言葉も感覚もこの映画で知った。ところでこの映画を今作ったら、入れ替わった女子がもともと男っぽくて、男のほうがもともと女々しくなりそうで、物語が成立しなさそうだ。自転車も最近は女子が男子を乗せているのをよく見かけますしね。

30年前とは性別の価値観もかなり変わってしまったんだろうなと感慨深いものです。そして何より映像が素晴らしい。尾道の坂道、瀬戸内海に落ちる夕日、いつかの夏の日の匂いが思い起こされて無性に泣きたくなるのです。そして斉藤一美のおっぱい最高!

『さんかく』―女性経験の少ない俺たちにとって最高の教科書!

『さんかく』

『さんかく』

いやはや、自分は仮性ロリコンを卒業できたと思っていたのですがヤラレましたよ、桃にね。いや、小野恵令奈さんだ。この舌足らずなしゃべり方と天真爛漫さに、おじさんイチコロです。だけど田畑智子さんもいいんだよね。特にラストの表情は最高。

鑑賞後、しばらく俺が主人公ならどーする妄想から抜けられませんでしたよ。主人公のダメっぷりを車で表現するのも秀逸。思春期の女子の謎な行動も、20代後半の女性の切羽詰まった行動も両方垣間見られ、女性経験の少ない俺たちには最高の教科書になるはずだ。試験に出るからよく観ておくよーに!

『グエムル 漢江の怪物』―ご飯を食べるシーンで家族の関係性が見えてくる

『グエムル 漢江の怪物』

『グエムル 漢江の怪物』

僕の持論では漫画も映画もご飯をうまそうに食べるシーンがあれば、面白い作品である可能性が高い(決して料理そのものがメインの物語ではなくね)。グエムルもまさに当てはまる。狭い売店で家族が窮屈そうに雑にメシを喰らう。これだけで家族の関係性が、セリフがなくても見えてくる。

こういうよくわかっている映像を描ける人は、当然面白い作品を作れるわけなのだ。あと怪獣映画の場合、軍隊の上層部やヘタをすると国家元首などが出てきて萎えてしまうのだが、この映画は家族目線で描かれているのも僕好みだ。そしてペ・ドゥナとコ・アソン最高!

『ジョゼと虎と魚たち』―ダメ男の初めての自己否定に胸を打たれました

『ジョゼと虎と魚たち』

『ジョゼと虎と魚たち』

これまた僕とは違う人種のダメ男が登場。そこそこモテて、そこそこ人生うまくやれそうな主人公が、車いすの少女と出会うわけで、その少女がかわいいしちょっとクセがあるから気になっちゃうわけですよ。このやろう、自分が否定されることを生まれてこの方一度も感じたことがないようなんですよ! 嗚呼、うらやましい。

そんな彼の初めての自己否定になんだか胸を打たれるわけです。そーいう自己否定なら俺も味わいたい! 少女はそんな男を尻目にどんどんたくましくなっていく。おいて行かないでー! そしてジョゼのおっぱいごちそうさまでした。

『桐島、部活やめるってよ』―自分の暗黒学生時代の供養になりました

『桐島、部活やめるってよ』

『桐島、部活やめるってよ』

鑑賞後、噂どおり語りたくなり漫画家友だちと飲みながら語りましたよ。僕は学校ヒエラルキーの下の下で、もはや透明な存在だったので映画部の連中がうらやましかった。でも今思えば上位の連中もいろんな悩みを抱えていたんだろうなと思えてきて、自分の暗黒学生時代の供養になりました。

しかし女子同士の関係性は複雑すぎてわからない。身近な女性の感想は『あんなの普通でしょ』で、女子に生まれなくてよかったと思いました。ここ最近の邦画ではベスト1の作品。年齢ごとに見方も違ってきそうなので末永く付き合える映画と出会ったと言えるでしょう

『月はどっちに出ている』―生きていていいんだなと思える映画 なんとか再販してほしい!

この映画は現在DVDが出ていないようですが無理を言って紹介させてもらうことになりました。ダメな人々総出演という感じで差別用語も卑猥な言葉もバンバン飛び交うが、根底には人間愛があって作り手の優しい眼差しが見えてくる。俺も生きていていいんだなと思える映画です。

憂歌団の『WOO CHILD』もしみるぜ。なんとか再販してほしい。傑作は世に出るべきだ! そしてコニーのおっぱい最高!

『冷たい熱帯魚』―でんでんさんの女性を落とすテクニックをぜひ試してみたい

残忍で低俗な犯罪事件をニュースで見て、犯罪者なのに自分より遥かにパワフルで人生を謳歌している気がして虚しくなる時がある。この映画の主人公もそんな気持ちだろう。本気で逃げようとしなかったのは、娘への愛情ではなく、自由に生きている犯罪者への羨望が主人公をとどまらせたんだと思う。

しかし、でんでんさんの女性を落とすテクニックが最高だったのでぜひ試してみたいものだ。元気が一番!

『ばかのハコ船』―今まで観たなかで一番、ダメな男を愛おしく描いてくれた作品

『ばかのハコ船』

『ばかのハコ船』

これだけダメな男を愛おしく描いてくれた作品があっただろうか? いやない! いや…、あるかもしれないけど、俺が観たなかでは一番だ。元彼女の妹との騒動は本当に腹を抱えて笑ってしまった。やることなすこと全部ダメで、すぐ責任転嫁する本物のクズなのに、彼をうらやましいと思ってしまうのはなぜだろう? ダメなままの人生だっていいじゃない。

山下監督、これからも俺たちの映画を作ってください! 『どんてん生活』、『リアリズムの宿』もお薦めですよ。


(C) 1984 Warner Bros. Entertainment, Inc. All Rights Reserved. (C) BANDAI VISUAL/GAINAX (C) 2010「さんかく」製作委員会 (C) 2006 Chungeorahm Film. All rights reserved. (C) 2003「ジョゼと虎と魚たち」フィルムパートナーズ (C) 2012「桐島」映画部 (C) 朝井リョウ/集英社 (C) 2002/Midnight Child Theater/PLANET sutudyo+1

プロフィール

花沢健吾

はなざわ・けんご/2004年に週刊ビッグコミックスピリッツにて『ルサンチマン』で連載デビュー。2005年から同誌にて連載された『ボーイズ・オン・ザ・ラン』は2010年映画化、2012年ドラマ化。現在、『アイアムアヒーロー』を連載中、大泉洋主演による映画も大ヒットをおさめている。

(c)花沢健吾/小学館 ビッグコミックスピリッツ連載中

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