漫画家・永井豪インタビュー「あ、これ、パクられたなあ、と思うことは山ほどありますよ(笑)」

永井豪先生

永井豪先生

ムービープラスの人気番組『この映画が観たい』に出演(7月4日初回放送)、オールタイム・ベストを披露した永井豪。日本を代表する漫画家のひとりである彼が、自身と映画の関わりを率直に語る。

「ひとつの作品の影響だけで作ってしまうと盗作になってしまうんですけど(笑)、(映画は)毎日浴びるように観てますから、自分でもどの映画の影響で出来たのかわからないまま、自分の作品を描くんです。自分のなかで観た映画を一回ごちゃごちゃにして、自分というフィルターを通して作品が生まれると思っています。作品を描き続ける以上は(映画を)観ないということはありえない、という感じ。特にいまは、ムービープラスのようなチャンネルで、見逃していた映画がすぐ観れますからね」

映画メディアは、永井にとって、特別なカルチャーだという。

「もちろん、小説も読むわけですが、映画は漫画にいちばん近い。映像(ビジュアル)で伝える、という意味では近いと思います。漫画は音響が出せなくて書き文字になっちゃうし、音楽もつかないんですけど。ひとの行動を演出で描いて見せる、ということでは漫画と映画は共通している。戦後、手塚(治虫)先生が映画の影響で漫画を描き始めて、その影響で漫画家(たち)は育ってますから。映画と漫画というのはもう親戚みたいなものだと思うんですよね」

かつて赤塚不二夫に取材したとき、彼はこう言っていた。「漫画を描くなら、漫画だけ読んでちゃダメだ。他の文化にも触れなくちゃ。特に映画は観てなきゃいけない」と手塚治虫は、若い漫画家たちに語っていたという。日本において、漫画と映画は切っても切れない深い絆で結ばれているのだ。

「なんでも観ますね。最近では『6才のボクが、大人になるまで。』を観て感動したんですが、面白い視点のあるものはなんでも観ます。監督が描きたいもの、見せたいものは、何なのか。それを感じながら観るんです。監督それぞれに作品に対する思い入れや、映画はこうあるべきだという考えがあって、生み出していると思う。そういうものをできるだけキャッチしようと思ってますね」

『6才のボクが、大人になるまで。』/Film (C) 2014 Boyhood Inc./IFC Productions, L.L.C. All Rights Reserved. Artwork and Packaging Design (C)2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

『6才のボクが、大人になるまで。』/Film (C) 2014 Boyhood Inc./IFC Productions, L.L.C. All Rights Reserved. Artwork and Packaging Design (C)2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

つまり、映画を観るということは、クリエイターとしての視点を鍛えることでもあるのだろう。

ジャンルは問わない。だが、アニメーションは、永井にとって別な領域にあるものらしい。

「自分が作品を作るときはリアル志向なんで、アニメも感動はするけれど、どうしても自分(の志向)とは違うもののように思ってるかもしれません。とはいえ、自分の(原作の)アニメは納得して見ているんですけど(笑)。たとえば宮崎(駿)さんの『となりのトトロ』とかも好きですけど、基本的には自分の世界とは違うと思って観ています」

つまり、漫画を描く上での脳内のイメージは実写なのだ。

「頭の中では実写でイメージしてしまうんです。漫画を描く前に、映画のフィルムみたいにわーっと映像が動いていく。それが見えちゃうんです。それを(漫画として)どうやってコマを割ろうかなと。そのシーンをどうしたら迫力のあるコマ割りになるかなと。そのイメージを「翻訳」しながら、いつも描いているような気持ちです」

それはまさに映画のディレクションである。

「ああいう演出は漫画では無理だなあ。どうしようかな。そんな感じです(笑)。(イメージに)どうにか近づけようとしているんです」

(C)GAINAX・カラー/Project Eva.

(C)GAINAX・カラー/Project Eva.

ところで、永井の漫画は多くのクリエイターたちに影響を与えている。たとえば、『新世紀エヴァンゲリオン』は様々な面で、『デビルマン』からインスパイアされたものがあると言われている。

「僕は『エヴァンゲリオン』を観たとき、特にそうは思わなかったんだけど、庵野(秀明)さんには直接言われました(笑)。エヴァンゲリオンのあのスタイルはデビルマンですから、と。あ、そうなの?って(笑)」

それが文化だから、と永井は平然と微笑む。

「文化的なものは、(すべて)積み重ねですから。みんな、いろんな影響を受けて、いろんな作品を生んで。その次の世代がまた影響を受ける。そうやって積み重ねていくから進化できる。手塚先生がデビューした頃は、『メトロポリス』とかのドイツ表現主義の映画であるとか、いろんなものの影響を受けながら描いていたろうし。その影響を僕らはまた受けた。その都度、いろんな影響を受けて、どんどんどんどん拡がってますから。常にお互い刺激し合って進んでいくしかないんじゃないかと思います。あ、これ、パクられたなあ、と思うことは山ほどありますよ(笑)。でも、ま、それはそれでしょうがないかなと。(ジェームズ・キャメロン監督の)『ターミネーター』を観たときはパクられたと思いましたよ。中子真治(SFに造詣の深い映画評論家。1980年から6年間、ロスに在住)の案内でロジャー・コーマンのスタジオを訪問したときに、(当時の)美術部にキャメロンがいたんですね。中子にはよく漫画を送っていたので、『黒の獅士』(1978~1979)がパクられちゃったなと思いました(笑)。(サイボーグやタイムトラベルという)設定もさることながら、描写がそっくりなところがあるんです」

(C)1980 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

(C)1980 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

オールタイム・ベストの1本に、アメリカで手塚治虫と一緒に観た『シャイニング』をあげた。スタンリー・キューブリックは、永井にとって特別な監督で、ジャーナリスティックなカメラマンであったキューブリックの理性的な部分と、そうでない部分の同居に惹かれると語っている。映画を変えた男、キューブリックと、漫画を変えた男、永井豪の一致は、興味深い。なぜなら、永井の漫画もまた、パッションとクールネスが同居しているからである。

「描くときには、作品の中にのめり込む自分と、それをクールに見ている自分と、常にありますね。偉大なキューブリックと較べていただけるなんて、うれしいです」

 現代カルチャーを体現する巨匠のひとりでありながら、終始、おだやかで腰の低い永井。最後に「漫画にしかできないこと」を尋ねた。

「昔はたくさんあったと思うんです。でも、CGが出来てから、それが埋められちゃった。漫画しか出来ないことが、映画でも出来るようになったんですよ。マーベルやDC(などアメコミ原作)のものを観ると、そう思いますね。いま、ほとんどの漫画的な表現はCGで出来るのだと思います。となると、漫画はどうすればいいんでしょうかね……(笑)。映画が見つけることのできない企画の力で勝負するしかないのかもしれません。アイデアの力。こんなこと誰も考えてないよね、というところですね」

21世紀、ハリウッドでも、日本でも、映画は漫画にインスピレーションを求め続けている。かつて、漫画が映画を追いかけていたように、いま、映画が漫画を追いかけているのだ。

(取材・文:相田冬二)


「この映画が観たい#34 ~永井豪のオールタイム・ベスト~」

初回放送/7月4日(月)23:00~23:30
再放送/7月8日(金)18:30~19:00、13日(水)11:15~11:45、22日(金)18:30~19:00、28日(木)11:15~11:45

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TEL: 0120-945-844
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庵野秀明

生年月日1960年5月22日(58歳)
星座ふたご座
出生地山口県宇部市

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