映画『ファインディング・ドリー』上川隆也×中村アン インタビュー 「前作を観て続編を想像していると、気持ちよく裏切ってもらえる作品」

デスティニー役の中村アンとハンク役の上川隆也

デスティニー役の中村アンとハンク役の上川隆也

公開当時社会現象を巻き起こした『ファインディング・ニモ』(03)。息子のニモを探すマーリン(日本語吹替版の声:木梨憲武)と共に旅をする忘れんぼうのドリー(声:室井滋)を覚えているだろうか。そのドリーを主人公にした続編が、7月16日(土)に公開される『ファインディング・ドリー』。ドリーと共に旅をするイケメンキャラで7本足のタコ・ハンクと、お茶目で憎めないチャーミングなジンベエザメのデスティニーの声を担当した上川隆也、中村アンに制作秘話や作品への思いを聞いた。

――オファーを受けてのご感想は?

上川:オーディションのお話を頂けただけで、うれしかったですね。『ファインディング・ドリー』の候補として挙げて頂いたことだけで、もう光栄でした。。

中村:私はディズニーが大好きで、マネージャーさんにもよく言っていたので、『ファインディング・ニモ』の続編が完成して、チャンスがあるかもしれないと聞いた時はうれしくて。ものすごく緊張しましたけれど、とにかくやりたいという思いをオーディションにぶつけました。

――ディズニーやピクサーの映画は、キャラクターの声、本国の俳優さんの声のイメージと吹替版が合っているかをとても大切にされますよね。

上川:なので、最初は本国の俳優さんの声に寄せようと試していたんですよ。そうしたら、何回やってもOKをもらえないんです。だんだん地声に近いお芝居になっていくに連れ、OKがスムーズに頂けるようになって。最初から自分の声でいけばよかったんだなと。準備していたことが、却って時間のかかる結果となりました(笑)

中村:私は声のお仕事はビギナーなので、どんな風にやろうとかでなく、とにかく元気で明るいデスティニーをやろうと思いました。思い切りやることだけで精一杯でしたね。口や目の動きをよく観察して、字幕版のデスティニーのテンションの高さに合わせました。日本語がヘンだねっていう時は、皆さんで相談して変えたり、お子さんから大人まで伝わりやすいように会話をナチュラルにしたり、そういう作業でした。

(C)2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

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――デスティニーは「クジラ語」を話しますね。歌うように話すのが、すごくお上手でした。

中村:ありがとうございます。すごく難しかったです。クジラって本当に「コー、コー」って高い声で鳴くんですよ。本物のクジラの映像も見せてもらって、監督さんから声の出し方を習って、室井(滋)さんのドリーに合わせました。あとは恥じらいを消すのが難しかったです。

上川:(笑)

中村:声を入れるのは4日間だったのですが、そのうちの後半2日間にクジラ語の場面をとっておいて、慣れた頃に撮ったんです。でも、クジラ語をやってから、むしろ声が出るようになったので、序盤に録音した場面を録り直したりしました。そこで、ちょっと開けた感じはしました。山を乗り越えた感じというか。高い声から急に低くなったり、ドスの効いた感じを意識したり、こぶしを握ってと言われたり。最後は歌いながら、高低差のすごいジェットコースターみたいでした。もうよく覚えていないです(笑)。

上川:すごいのが、デスティニーの声を中村アンさんがやっていらっしゃるということを、映画を観ていて忘れられるんです。そこが何よりも声の仕事の妙だと思います。姿を晒すことなくお芝居しているから、キャラクターと声が純粋にマッチしていくことが醍醐味になる。映画を観ている間は、声をやっている俳優さんの顔を忘れていて、エンドクレジットを見て、そうだ、この人がやっていたんだって気づくのがまた楽しい。それを中村さんのお芝居に感じることができました。

中村:ありがとうございます。でも、皆さん、普通に話しているトーンと違いますよね。上川さんは低い声でしたよね。

上川:あれは本国で声をやっていらっしゃる俳優さんへのリスペクトが残った、その結果です。オリジナルはもっと低い……というか、ハスキーな声なんです。多少、のどを絞ってやってみようかなといろいろ試行錯誤したんですが、何度も録り直すうちに、自分の声に近づいていきましたね(笑)でも、声のトーンはオリジナルに習って演じた方が、ハンクらしいかなと思っていました。

中村:ハンクは登場がかっこいいですよね。あそこで急に景色が変わりますし。さすがだなと思いました。

(C)2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

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――何度もやり直しがあると。何テイクも録られるそうですね。

上川:はい、OKを頂くまで、何度もやらせて頂いて。

中村:他のメンバーの声も、その場で映像に入れて頂けるんです。すごいですよね。

上川:ラッシュ(ざっと編集したもの)みたいなものです。

中村:お待ちくださいって言われて、声を映像に入れてもらって、それを見て何かが違ったら、また声を録り直して。

――その過程で声がしっくり行くのですね。贅沢な作り方ですね。

中村:最新技術ですよね。

上川:ちゃんと役者にオーダーを出して、役者がそれに応えて、それが是か非かという……本当に単純な作業ですけれど、それを繰り返しながら、作品の中にマッチするものを探っていけるというのは、地道ですが着実に前進できる作り方だと思います。

――そこを探っていくのは面白そうですね。

上川:追い詰められる方はたまったものではないですけれど(笑)ならば次はどうすればいいんだろうっていうところまで追い詰められますから。

中村:完成してくると面白いですけれど、最初は皆さん、きっと大丈夫かなって思っていらっしゃると思うし。本当に皆さんで一緒に作っていく感じですね。場面によって、台詞によっても違ってきますし。

上川:本当にそう思います。本国の俳優さんが吹きこまれた台詞があるから、キャラクターはもともと確立していて、僕らが目指すのは、そのキャラクターにちゃんと寄り添えているかなんです。だから、何度もやり直しが必要だし、ぱっと1回やってOKとは絶対にならないんです。

(C)2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

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――素敵な場面がたくさんありますが、お二人がお好きなシーンは?

中村:私はデスティニーの初登場シーンですね。序盤に撮ったので、最後に録り直したんですけれど、自分ではどちらがよかったのか、いまだにわからないです。完成した映画を観て、私ってこんな声なんだなと。まだ観客としては見られなかったので、もう一度、普通に映画館で楽しんでみたいです。他には、今回、新キャラクターが登場するんですけれど、最後の方で、そういうキャラクターが勢揃いする場面があるんです。あそこは好きですね。

上川:僕も好きです。

中村:まさか、あんな感じで皆が揃うとは(笑)。作品全体を通して、音楽もここでこれが掛かるんだ!という面白さがありましたね。

上川:ハンク絡みでいうと、ドリーとハンクが初めて寄り添うシーンがあるんです。あそこがとても好きです。そこまでハンクはかたくなに心を閉ざしていたのですが、二人の関係が変わる瞬間が訪れるんです。全体を通して好きなのは、まだベビー・ドリーだった頃にドリーが歌う歌があるのですが、その歌がちゃんと『ファインディング・ニモ』でも使われているんです。その辺りが、さすがだなと(笑)。

――ドリーとハンクの関係も素敵ですね。友情のようでも、ちょっと恋のようでもあります。

中村:ね、ちょっとわからないですよね。

上川:室井さんは、ドリーはハンクが好きと言って下さっているんですけど。

中村:女の人と男の人で、見方が違いそうですよね。ハンクはそう見ていないけど、ドリーになって考えてみると……自然と寄り添う感じが、自然すぎるけれど、あんなに密着するのって……

――ずっと一緒だし。

中村:あんなに近い魚は他にいないですよね(笑)。あったらいいなって感じです、ドリーの恋。

上川:そこ、女子は語りますね(笑)。

(C)2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

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――ハンクもデスティニーも愛すべきキャラクターですが、これまでのディズニーやピクサーの映画には、主役以外にも魅力的なキャラクターが数々登場します。お好きなキャラクターはいますか?

中村:『アラジン』のアブーとか。あのスパイス加減が好きですね。『モンスターズ・インク』も……本当に魅力的なキャラクターがいっぱいいますよね。デスティニーも、名前を覚えて頂けたらうれしいなと思います。

上川:僕はピクサー作品の中では、いちばん好きな作品の1本が『ウォーリー(WALL・E)』なんですけれど、その中に『小さいヤツ』が出てくるじゃないですか。たいがい毛嫌いされる存在を摸して作られているキャラクターなのに、最後はちゃんと相棒に見えてくる。そこがいいなぁと思います。名前はわからないのですが……ヤツです(笑)

中村:ハンクは常にドリーといるから、影響力があると思います。見た目のインパクトもありますし(笑)。

上川:そうですね。とてもいい位置に座らせて頂いたと思います(笑)。

――ハンクはミズダコで、いろいろなものに擬態化しますよね。あれ、可笑しかったです。

上川:アロエにもなっていました。

中村:うまいことして。

上川:ええ、あれにああして、アロエになるんです(笑)。

中村:擬態化して赤ちゃんになるところもありましたよね(笑)。映画館でだいぶ笑いが起きていました。

(C)2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

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――ところで、今回の作品では、それぞれのキャラクターに課題や目的がありますね。お二人は何かそういった課題がありますか?よろしければ教えてください。

中村:私は人見知りでした。

上川:ええーっ?

中村:でも、このお仕事していると、人見知りはソンだなと思って。人見知りなのでって社会人になって言っているのは言い訳みたいだなと思い始めて。例えば、エライ人と会うと、気おくれしちゃうじゃないですか。でも、そこで自分をアピールしたり、仲良くなったりすることで、後につながるかもしれないんだなと思って。やらしいと思われるかもしれないけれど、雑誌の表紙とかも、「いつか出して下さいよ(笑)」みたいなテンションでアピールしたら、この子はこういうことがしたいんだとわかってもらえるから。それを学んでから、人見知りがなくなりました。自分の中で持っている思いは話さないと伝わらないんだなと思って。自分次第で少し変えていけるかもしれないなと思いました。

上川:わかります。僕も人見知りでしたから。

中村:そうですか? あ、でも血液型A型ですか。

上川:そうです。わかりやすいでしょ(笑)僕の課題はですね、小学校の夏休みの宿題から今まで、延々と締切効果だけに頼ってやってきた事かなと(笑)。それ一本で、これまでの人生を乗り切ってきた感があります。

中村:意外です。すごく前もってやっていそうですよね。

上川:全然(笑)。『明日がある』と思ってしまう性質(たち)です。もっとあらかじめ行動できるようになりたいです。いい大人なのだから(笑)

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――気のせいか、今日は追い込まれる話が多いですね(笑)

上川:好きで、追い込んでいるわけでは(笑)。追い込まれるのが嫌いだからこそ、効果があるんでしょうけれど……単純に腰が重いんです(笑)

中村:集中力がすごいんですね。

上川:いい解釈です(笑)。ありがとうございます。

――ドリーは「私、何でもすぐ忘れちゃうの」が口癖で、本当に何でもすぐに忘れてしまいます。けれど、それゆえに過去にとらわれず、瞬時に今の本能で動ける。一見、子ども向けの作品に見えるけれど、大人にも通じるメッセージだなと思いました。

中村:そうですね。ドリーがあっけらかんと本能で動いているところは素敵だし、室井さんも朝からすごくお元気で、素敵な方なんです。かわいらしい大人って言ったら失礼かもしれないですけれど、私もドリーみたいになりたいなと思います。

上川:うーん、僕は……うまく言えないのですが……。

中村:女性的なんでしょうか。

上川:ある種、そうだと思います。男性がなかなか持てない行動力などには、感心してしまいます。でもそういうドリーもこの映画の中で考え方を段々変えていくじゃないですか。こんな時、誰々ならどうするだろうって、思慮を広げていく。あそこが僕はとても好きですね。ドリーが単なる好き嫌いだけで動いているお気楽さんではないところが、いいなと思います。

(C)2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

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――今回、海のシーンの美しさも前作より進化していますし、キャラクターどうしの関係もさらに豊かになって、続編として魅力が増しているなと思いました。

中村:映像がすごく進化しているし、八代亜紀さんが素敵なんですよね。

上川:素敵です。

中村:ラストの歌も素敵ですし。前作より、ちょっと大人な印象があります。一見、お子さん向けに見えるかもしれないけれど、幅広いお客さんに見て頂きたいなと思います。

上川:前作の『ファインディング・ニモ』は水の中の生き物たちの冒険として舞台が設定されていましたが、今回はそれを踏襲しつつ、さらに違う場所で冒険させてみようという試みがあるんです。ハンクはそのために登場したキャラクターかなという気もしていて。そういうストーリーに絡んだキャラクターの配置が本当に上手だなと思います。タコの習性を巧みに使ってさらに冒険のフィールドを広げて見せるところはまさにそう。だからこそ、『ファインディング・ニモ』から圧倒的に絵作りも変わっていて新鮮に見られますし、前作を観て続編を想像していると、気持ちよく裏切ってもらえる作品だと思います。同時に誰かを想う思いがとても伝わって来る作品ですから、今、中村さんがおっしゃったみたいに、すべての年齢の方に劇場でご覧になって頂きたいと思います。

ピクサーならではの映像の美しさと、大人には大人の、子どもたちには子どもたちの、それぞれの深さで受け取ることのできる、楽しいけれど実はちょっと深いストーリー。上川さんもおっしゃるとおり、ドリーの冒険は意外な場所を舞台にします。どうぞお楽しみに!

(取材・文:多賀谷浩子、上川隆也 衣装協力:撫松庵、Losguapos For Stylist)


映画『ファインディング・ドリー』
7月16日(土)全国ロードショー!

監督:アンドリュー・スタントン
共同監督:アンガス・マックレーン
製作総指揮:ジョン・ラセター
日本語版声優:木梨憲武(マーリン役)、室井滋(ドリー役)
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

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