「偉大なリーダーとは、部下をインスパイアする人」―映画『ニュースの真相』ジェームズ・ヴァンダービルト監督インタビュー

 

ジェームズ・ヴァンダービルト監督

ジョージ・W・ブッシュ元米国大統領の軍歴詐称疑惑を追及したテレビ・プロデューサー、メアリー・メイプスの姿を描いた映画『ニュースの真相』が8月5日に全国公開を迎える。ジャーナリズムにおける「裏取り」の重要性を説く本作は、メディアから発信された情報を鵜呑みにしてしまいがちな現代人の胸に響く作品として、世界中で話題を呼んできた。去る6月某日、本作のメガホンを取ったジェームズ・ヴァンダービルト監督(『ゾディアック』『アメイジング・スパイダーマン』シリーズなど)に、完成に至るまでの秘話や、主演のケイト・ブランシェット、そして名優ロバート・レッドフォードとのエピソードを聞いた。

―脚本を書く上で、ロバート・レッドフォード演じるアンカーマンのダンではなく、ケイト・ブランシェット扮する番組プロデューサーのメアリーを主人公とした理由は?

大きな理由として、メアリーの本を読んでこの一件を知ったことが挙げられます。この一件についてのニュースがあったことは覚えているのですが、舞台裏で起こっていた事実は、彼女の本によって初めて知りました。そして本を読むことで、プロデューサーが、調査を重ねて探偵仕事をするような人であることが分かりました。そうして、メアリーの目から見た物語を描きたいと思ったのです。

 

(C) 2015 FEA Productions, Ltd. All Rights Reserved.

―映画化に際してメアリー本人とはお会いになりましたか? どんな話し合いを?

まず最初に、テキサスに行ってメアリーに会いました。映画化に対しては懐疑的な様子だったのですが、長いこと映画化したい理由などを話した結果、良い友達になれたんです。映画を作るにあたっては、彼女が最も大きな貢献を与えてくれましたね。メアリーに会った後、ダンに会う時にも、彼女が手伝ってくれたんです。劇中に登場する人物で、実際に会うことが可能な人には、会って、インタビューをして、正確に描くよう務めました。

―ハリウッドの現状から言うと、女性が主人公の映画は男性のそれよりも製作することが難しいと思います。映画が完成に至るまでには、どんな困難がありましたか?

それは、本作を作りたい理由の一つでした。メアリーは最高の女性で、ケイト自身も信じられないくらい素晴らしい女優です。女優が主人公を演じる映画はそれほど多くないので、興奮しましたね。メアリーという女性は、成功していて、プロフェッショナルで、業界でトップの人でした。旦那さんも協力的で、息子さんも良い子で、全てを持っていた。そんな彼女が転げ落ちていくという物語は、とても見ごたえのあるストーリーだと思いましたね。製作に際しては、良いパートナーたちに恵まれたので、女性が主人公である本作の製作が大変だったかと言うと、そうではなかったです。

 

(C) 2015 FEA Productions, Ltd. All Rights Reserved.

―本作と同じくジャーナリズムを描く『ゾディアック』でも素晴らしい脚本を執筆されていますが、ジャーナリズムを描く作品の脚本を執筆する上で特に意識していることは?

まずは、正確性です。ジャーナリズムについてのみならず、実際の出来事・人物についての映画においては、的確にストーリーを語ることが重要です。『ゾディアック』もそうですが、当時の状況を知る人々から、二重に裏が取れないと執筆しませんでした。つまり、二人の当事者の証言が一致しない限りは。また、ジャーナリズムという仕事が、いかにエキサイティングで気高い仕事であるかということを描きたかった。ジャーナリストが働くのは、仕事が好きだからです。大変な仕事ですが、彼らは情報を得ることにスリルを感じ、楽しんでいます。そんな彼らが得る興奮を見せたかったし、タフな仕事である分、ワクワクする仕事なのだということを伝えたかったのです。

―そもそも、監督がジャーナリズムに関心を持つきっかけとなったものは? 親戚のアンダーソン・クーパーさんの存在も理由の一つでしょうか?

アンダーソンは素晴らしいジャーナリストだと思います。しかし、遠い親戚なので、実はあまり知らないんですよ。私は小さい頃からジャーナリズムに魅了されていたんです。ダン・ラザーの姿を見ていましたし、物書きになりたいとも思っていました。ジャーナリストとして真実を伝えるか、映画を作るかで悩んで、結局は映画に行ったわけですが、時には、今回のように事実を扱う映画を作ることで、一石二鳥を得ることができますね。

 

(C) 2015 FEA Productions, Ltd. All Rights Reserved.

―これまでにもジャーナリズムを扱う作品への出演が多いロバート・レッドフォードとは、本作についてどんな話し合いを重ねましたか?

ロバートは信じられないくらい素晴らしい俳優です。脚本と一緒に手紙を送って、『大統領の陰謀』を素晴らしい映画だと書いたのですが、同作はジャーナリズムが勝利する映画である一方、本作は敗北を描く映画なので、良い対になったと思います。アメリカでは、ダン・ラザーもそうですが、ロバートはアイコンであり、私たちの世代は彼の姿を見て育ちました。彼との会話は素晴らしかったですよ。というのも、彼の人生そのものが驚くべきものだからです。ハリウッドでのキャリアのみならず、若い映画製作者のために環境を整えていたり、俳優以外の面でも素晴らしい人なのです。そんな彼が出演してくれて、光栄でしたし、最高の経験でした。俳優としてだけでなく、一個人として知り合えたことも。

―ケイト・ブランシェットは、かつて『ヴェロニカ・ゲリン』という作品でも敗北するジャーナリスト役を務めました。彼女とはどんなお話を?

ケイトは、本作がメアリーの20年間を描くような自伝映画ではなく、この一件だけを描く作品であることを気に入ってくれました。これまでに、彼女は実在の人物を何度か演じてきましたが、特定の出来事についてだけを描く作品は、本作が初めてだと言っていましたね。俳優にはそれぞれのやり方があるので、どう取り組むかは彼女のスタイルに任せたのですが、彼女はメアリーとぜひ会いたいと思い、実際に何度も会って、それから毎晩のように2時間ほどスカイプで会話して、彼女の仕草や癖を真似ていました。ケイトとの仕事は素晴らしい経験でしたよ。まるで、免許を取りたてのティーンエイジャーが、フェラーリを与えられたようにね。

 

(C) 2015 FEA Productions, Ltd. All Rights Reserved.

―本作は、プロデューサーのメアリー、そしてブッシュ元大統領という、集団のリーダーにまつわる作品です。そこで、監督が考える「リーダーに必要とされるもの」を教えてください。

偉大なリーダーというのは、自分のために働いてくれる人々や部下たちを、インスパイアすることができる人です。メアリーを見ていると、彼女は自分の部下やフリーランスの人間に対して、挑戦し、勇気づけ、そして笑わせることによって、彼らが楽しめる状況を作っている。そうすることで、彼女とまた仕事がしたいと感じさせるのです。その結果として、彼女は彼らをけしかけて、もっといい仕事をさせることができます。それはダンも同じで、スタッフは彼のためなら何でもやるでしょう。なぜなら、彼らはダンのことを信じているし、自分たちの仕事が、真実を追求するという高貴な仕事であると信じているからです。そういった意味で言えば、人々をインスパイアすることができる人こそが、素晴らしいリーダーなのではないでしょうか。

(取材・文:岸豊)


映画『ニュースの真相』
8月5日TOHOシネマズ シャンテほかにて全国順次ロードショー!

出演:ケイト・ブランシェット、ロバート・レッドフォード、エリザベス・モス、トファー・グレイス、デニス・クエイド、ステイシー・キーチ 他
脚本・監督:ジェームズ・ヴァンダービルト(『ゾディアック』『ホワイトハウス・ダウン』『アメイジング・スパイダーマン』脚本)
原題:TRUTH/2015年/アメリカ・オーストラリア/125分/シネスコ/5.1ch/英語/日本語字幕:松浦美奈
配給:キノフィルムズ

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

関連サイト

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST