細田守が選ぶ「渋い子どもを描いている映画」10本

大ヒットした『おおかみこどもの雨と雪』で子育てと子どもの自立を描いた細田守監督は、子どもが子どもじゃない瞬間を描いた作品をセレクト。アナタも“子ども映画”の見方が変わるかも!?

※ピックアップ作品は、2012年末に発行された『シネマハンドブック2013』掲載のものとなります。ご了承ください。


細田 守が選ぶ「渋い子どもを描いている映画」10本

ミツバチのささやき

40年代、スペイン内戦後の小さな村を舞台に、6歳のヒロインが体験する、現実と空想が交錯した世界を描く。監督は、スペインの名匠ビクトル・エリセ。

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リトル・ダンサー

1984年、炭坑ストライキに揺れるイギリス北部の町で、無口で武骨な父親の猛反対を受けながらも、ひたむきにバレエダンサーを目指す少年を描いた青春映画。

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台風クラブ

東京近郊の中学校に台風が接近。やり場のない憤りを感じていた中学生たちは、感情を異様に高ぶらせていく。監督は『セーラー服と機関銃』の相米慎二。

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ベルリン・天使の詩

東西統一前のドイツ。ベルリンの人々を見守り、心のつぶやきに耳を傾けていた天使ダミエルが、人間の女性に恋をするファンタジックなラブストーリー。

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ウェルカム・ドールハウス

分厚いメガネ姿にダサいファッションでいじめられている少女ドーンの日常を描いたブラックコメディ。1996年のサンダンス映画祭で審査員大賞を受賞した。

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霧の中の風景

ドイツにいる父親を捜しに夜行列車で旅に出た幼い姉弟が、さまざまな出会いと別れを通して人生を知る。監督は『旅芸人の記録』のテオ・アンゲロプロス。

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ヤンヤン 夏の想い出

エドワード・ヤン監督が、台北に住むある家族の生活を通して、都市に住む人々が抱える苦悩をみずみずしくリアルに描く。第53回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。

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ホームワーク

『友だちのうちはどこ?』で知られるアッバス・キアロスタミ監督が、宿題をテーマに、子どもや親にインタビューし、教育現場の実態に迫ったドキュメンタリー。

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セントラル・ステーション

字が書けない人を相手に代筆業を営むひねくれ者で怒ってばかりの老女ドーラと、母に先立たれ、まだ見ぬ父親を捜す少年ジョズエの旅を描くロードムービー。

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泥の河

第13回太宰治賞受賞の宮本輝の同名小説を映画化。河口の食堂に住む少年と、ある姉弟の交流を描く人間ドラマ。監督は本作がデビューとなった小栗康平。

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『ミツバチのささやき』―姉妹の成長の対比というテーマは『おおかみ~』にも通じる

『ミツバチのささやき』

『ミツバチのささやき』

僕が注目したいのは、主人公アナではなく、姉のイザベルです。アナよりも現実的で、しかも妙な色気がある。黒猫の首を締めるシーンで、彼女がネコに引っ掻かれて出た血をなめる仕草にグッときました。この子はすでに何かをつかんでいると(笑)。

ネコの首を締めることで擬似的な死を体感し、現実に斬り込むような行動を見せるイザベルは9歳にして魅力的。アナがいかにかわいらしいかが語られがちですが、実は、イザベルがいてこそのアナなんですよね。姉妹それぞれの成長の対比というテーマは、『おおかみこどもの雨と雪』にも通じる部分です。

『リトル・ダンサー』―他の作品にはない、子どもの有りようや世界の切り口がよかった

『リトル・ダンサー』

『リトル・ダンサー』

僕自身、子どもを主人公にした作品を多く作っていますけど、一般の映画における子どもって、ある種カリカチュアライズ(戯画化)されているというか、“道具”として描かれることが比較的多いと思うんです。でもこの『リトル・ダンサー』は、子どもの有りようや子ども世界の切り口が他と違ったので、おっと思いました。

主人公ビリーももちろんいいんですが、周囲の子たちも単にカワイイだけではなく、しんどい中で生きている感じがよかったです。中でも、ビリーの親友でオカマの男の子、マイケルがいい味を出しているので注目してほしいですね。

『台風クラブ』―他の監督作と比べて、子どもの狂気が爽やかなのが素晴らしい

『台風クラブ』

『台風クラブ』

80年代に青春時代を過ごした者としては重要な作品。10代って、あふれ出る何かをおさえて日々を生きていますよね。それが大雨の中、子どもたちだけの世界で隠された人間性がぐっと顔を出すっていうのは、みんなが共通してもっているものなんじゃないかな。

それと、相米慎二監督の映画って、特に初期は『翔んだカップル』『ションベン・ライダー』など子どもたちが狂気に走るものが多いんですけど、『台風クラブ』はその狂気がすごく爽やかなのが素晴らしい。まさに“台風一過”があるから、ドロドロしたものが噴出しても、後味がいいんです。

『ベルリン・天使の詩』―どんな子どもでも、大人が見られないものを見ている瞬間がある

『ベルリン・天使の詩』

『ベルリン・天使の詩』

ブルーノ・ガンツ演じる天使が無邪気でかわいいというのもあるんですが、この天使を見ることができるのは“子ども”だけなんですよね。この子たちがそれぞれいいんですよ。お母さんの自転車の前と後ろに乗っている子どもが見上げた先に天使がいるとか、部屋で動物のフィギュアを並べてる足の不自由な男の子が窓の外に天使を見るとか、あぁ、どんな子どもでも大人が決して見ることのできないものを見ている瞬間があるんだなっていうのをすごく感じました。でも同時に、大人は子どもには戻れないんだという痛切なメッセージも感じましたね。

『ウェルカム・ドールハウス』―主人公ドーンはいじらしいとすら思わせない硬派なダメな女の子

『ウェルカム・ドールハウス』

『ウェルカム・ドールハウス』

主人公ドーンは本当に救いがたい女の子なんだけど、ダメっぷりの心地よさがかわいいんですよね。原恵一監督の『カラフル』宮﨑あおいさんが演じたメガネ姿の唱子にも似たようなところがありましたが、表面的なかわいさではなく、何回かひっくり返ると見えてくる魅力がある。

それに、10代ってうまくいかない人たちの集まりで、そのもがいているところがいじらしかったりするじゃないですか。でもドーンはイラッとするというか(笑)、いじらしいとすら思わせない硬派なダメな女の子。だからこそ“渋さ”という点で評価したい映画ですね。

『霧の中の風景』―姉弟は、父ではなく別のものを求めてさまよっていた気がする

『霧の中の風景』

『霧の中の風景』

お父さんを捜しにドイツから旅に出る姉と弟の話ですが、国境越えする中、誰も手を差し伸べてくれないし、周囲から子ども扱いしてもらえない。“子どもが子どもでいられない世界”って、厳しいですよね。でもそんな中で、彼らはさまよい歩くことにどこか心地よさみたいなものを感じていたんじゃないかと思います。

『母をたずねて三千里』みたいにお母さんと会うために何とかしなくちゃってことではなくて、あの二人は、もっと別のものを求めてさまよっていた気がします。大人ですよね。全編霧が蒸しているようなイメージが今でも残っています。

『ヤンヤン 夏の想い出』―子どもは、大人を冷静にのぞき見ては批判してる気がする

『ヤンヤン 夏の想い出』

『ヤンヤン 夏の想い出』

子どもって、大人たちの不器用な姿を冷静にのぞき見てはいろいろ批判してるんじゃないかなという気がしますよね。この映画における末っ子のヤンヤンも、神視点というのかな、何か特別な存在として描かれていて、家族の世代ごとの事件を冷静に眺めています。

それと、大人を描きながら最後は子どもで映画を閉じる、という語り口がいいなと思いましたし、さまざまな世代の物語を通して、一つの人生を通過したような感覚になりました。一代記を映画で描くことって難しいですが、こういう方法もあるんだとハッとさせられた作品でもあります。

『ホームワーク』―半泣きになった子どもたちが本音を吐露するおっさんに見える

アッバス・キアロスタミ監督が子どもたちに宿題についてインタビューするんですが、サングラスをかけて脅すように尋問していて、とにかく怖い。子どもたちもだんだん半泣きになっていくんですけど、それがみんなおっさんぽいんですよ。おっさんが本音を吐露している、みたいな(笑)。おっさんに見えるほど人間性があぶり出されているというか、子どものあんな表情をとらえたドキュメンタリーは珍しいと思います。

『セントラル・ステーション』―“子どもが子どもじゃない瞬間”を描いているのが面白い

『セントラル・ステーション』

『セントラル・ステーション』

一般的には変わった子どもの映画だと思うけど、このラインナップの中だと違和感ないし、むしろ普通ですね(笑)。他の作品同様、“子どもが子どもじゃない瞬間”を描いていて、最後、ジョズエは異母兄たちと出会いますが、彼らとなら絶対幸せになるだろうという確固たるものがある。一緒に旅をしてきたドーラと離れがたい…ではなく、彼女がいなくても大丈夫だろうと思わせる描写が、何とも切ない映画でしたね。文句なく泣ける作品だと思います。

『泥の河』―この姉弟には子どもの生命観と真逆の魅力がある

舟に住む姉弟が渋くて、特にお姉ちゃんが神秘的。売春をするお母さんの仕事もわかっているし、背筋がのびた美しさがありました。弟も弟で、友達への精一杯のおもてなしとして宝物の蟹に火をつけるんですが、見る方は全然うれしくないっていう(笑)。そのすれ違いみたいなものがいいんですよ。白黒の画面もあいまって、子どもの生命観と真逆の魅力がある。これをアニメーションで表現するのは難しいですね。


(C) 1972 Elias Querejeta-2008 Mercury Films,S.A. All rights reserved. 写真:AFLO (C) ディレクターズ・カンパニー (C) 1987 REVERSE ANGLE LIBRARY GMBH and ARGOS FILMS S.A. 写真:Photofest/アフロ (C) TH.ANGELOPOULOS O.E, PARADIS FILMS, GREEK FILM CENTRE, ET 1, GENERALE D'IMAGE, LA S.E.P.T. 1988 (C)2000, 1+2 Seisaku Iinkai 写真:Album/アフロ

プロフィール

細田 守

1967年富山県出身。アニメーション映画監督。代表作は『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』など。'11年、自身のアニメーション映画制作会社「スタジオ地図」設立。

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アーティスト情報

細田守

生年月日1967年9月19日(51歳)
星座おとめ座
出生地富山県中新川郡上市町

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