狗飼恭子が選ぶ「男心と女心の違いを教えてくれる映画」10本

恋愛小説家の狗飼恭子さんは、女性ならではの視点で、男と女の恋愛の価値観の違いがわかるラブストーリーを厳選。女性はもちろん、特に恋がうまくいかない男性陣は必読&必見です!

※ピックアップ作品は、2011年末に発行された『シネマハンドブック2012』掲載のものとなります。ご了承ください。


狗飼恭子が選ぶ「男心と女心の違いを教えてくれる映画」10本

ブルーバレンタイン

あるカップルの出会いから結婚、そして破局までを描いた切ないラブストーリー。夢や希望にあふれていた過去と、互いに小さな不満を募らせていく現在を交錯させ、二人の愛が終わる痛みを紡ぎだす。

⇒作品詳細・レビューを見る

(500)日のサマー

グリーティングカード会社で働く青年トムは、社長秘書として入社してきたサマーにひと目ぼれ。運命の恋を信じるトムはアタックを開始するが、一方のサマーは対照的な恋愛観の持ち主だった。

⇒作品詳細・レビューを見る

恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ

うだつの上がらないピアノデュオの兄弟が美人ボーカリスト、スージーとトリオを組むことに。3人のパフォーマンスは大成功を収めるが、そのうち弟とスージーが恋に落ち、何かが狂いはじめる。

⇒作品詳細・レビューを見る

さよならみどりちゃん

南Q太の人気同名コミックを映画化したラブストーリー。みどりちゃんという彼女がいるユタカに片思い中のゆうこ。彼女はユタカに嫌われたくないからと、彼に言われるがままスナックでバイトを始める。

⇒作品詳細・レビューを見る

渇き

伝染病の人体実験によってヴァンパイアになってしまった神父が、美しい人妻と禁断の愛に落ち、やがて共謀して夫殺しを企てるスリラー。主演は『シークレット・サンシャイン』の演技派ソン・ガンホ。

⇒作品詳細・レビューを見る

ゲゲゲの女房

日本を代表する漫画家、水木しげるを支えてきた布枝夫人の自伝を映画化。お見合いから5日後に結婚した夫婦が、甘い新婚生活とは程遠い貧乏時代を経て、絆を深めていく過程がつづられる。

⇒作品詳細・レビューを見る

恋人たちのアパルトマン

人気女優ソフィー・マルソー主演のラブストーリー。パリを舞台に、愛しすぎるがゆえにプラトニックな関係を貫こうとする男と自由奔放な女が惹かれ合い、すれ違う。

⇒作品詳細・レビューを見る

シェルタリング・スカイ

ベルナルド・ベルトルッチ監督作。北アフリカへの旅行で冷えた夫婦関係を見つめ直そうとする夫婦が、やがて悲劇の運命をたどっていく姿を描いたラブストーリー。坂本龍一が音楽を手掛けたことでも話題になった。

⇒作品詳細・レビューを見る

死んでもいい

大竹しのぶ、永瀬正敏共演のエロティックなラブストーリー。気ままな旅を続けていた青年、信は、人妻の名美との許されない恋に狂い、彼女の夫を殺す計画を立てる。

⇒作品詳細・レビューを見る

秋津温泉

藤原審爾の原作を『甘い夜の果て』の吉田喜重が監督した文芸ドラマ。戦時中の山奥の温泉宿を舞台に、好きな男を待ちつづける女将と煮え切らない男がたどる悲劇。

⇒作品詳細・レビューを見る


『ブルーバレンタイン』―私の中では、この夫は“元カレ”です(笑)

『ブルーバレンタイン』

『ブルーバレンタイン』

一番印象的だったのは夫婦がモーテルに行くシーン。妻は抵抗はしていませんが、ずっと我慢していますよね。もう苦痛でしかない。でも夫はそれに気づかず、彼女の快楽につながると信じている。そこがすごくリアルでした。夫は歳をとっても魂レベルが変わらないというか、浮世離れしたまま。妻が夫婦生活で必要だと思うことに一切気づかないまま進んでしまっていることが、彼のルックスだけでもわかりますよね。エンドロールの頃には一つの重い恋愛が終わったような気分でぐったりしていました。私の中では、この夫は“元カレ”です(笑)。

『(500)日のサマー』―サマーみたいな子は決して特別じゃない。現実に山ほどいる

『(500)日のサマー』

『(500)日のサマー』

最終的にサマーはトムとはまったく違うタイプの男性を選びますが、トムはサマーとの恋愛で散々な目に遭ったのにまったく成長が見えない(笑)。それに、サマーみたいな女の子って現実に山ほどいるじゃないですか。彼女が決して特別ではないということを女たちはみんな知っているのに、なぜ男たちはこうも夢中になってしまうのかが不思議で仕方ないんです。私の周りにも「あなたとは付き合えない」って言いながら翻弄しまくっている女の子が何人もいますし…。そういうのを“小悪魔”と呼んでときめく男性陣を見ていると、地団駄踏みたくなります(笑)。

『恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』―名場面はヒロインが恋に落ちたことがわかるダンスシーン

『恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』

『恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』

最初は仲の悪かった二人が恋に落ちていくという、恋愛映画の正しい黄金律。一番好きなシーンは、ミシェル・ファイファー演じるスージーとジェフ・ブリッジス演じるジャックがホテルのテラスでダンスをする場面。踊りながらお互いに悪態をつくんですが、接近することでお互いの感情に気づいてしまう。そして彼が離れた後、スージーがよろよろと歩いて「なんてこと?」って言うんですよ。その瞬間、彼女が恋に落ちていることがわかるんです! “なんであんな男に!”という、スージーのいろんな葛藤がすべてリアルに伝わってきましたね。

『さよならみどりちゃん』―西島秀俊さん演じるユタカのダメ男ぶりに身悶えした

『さよならみどりちゃん』

『さよならみどりちゃん』

西島秀俊さん演じるユタカが、これまた絵に描いたようなダメ男なんですよ。星野真里ちゃん演じる主人公ゆうこに思いを寄せている男の子から怒られる場面で、「こえぇー」って言うんですけど、そのトーンとニヤニヤ感があまりにダメすぎて身悶えしました(笑)。奇跡のダメ男映画だと思います。それとラスト、ゆうこがカラオケを歌うのですが、そのヘタさが『ベスト・フレンズ・ウェディング』キャメロン・ディアスみたいでものすごくかわいかった。いろいろあったけど“彼女はこれから新しい恋に向かうんだな”と思わせてくれる、すてきなエンディングでした。

『渇き』―男友達と意見が割れたラストにはいろいろ考えさせられた

『渇き』

『渇き』

悪女の周りでじたばたする不幸な男たちの物語として観ました。主人公もいいんですが、ガンウのダメさにも注目です。彼は妻を愛しているのですが、母親にするようにしか女と接することができないから、それが妻にとっては苦痛でしかないんですよね。それから、私の周りの男友達はみんな「あのラストは好きじゃない」って怒っていて。なぜだろうって考えた答えが、女性は男性に一緒に死んでもらいたい、でも男性は女性に看取ってもらいたいからなんじゃなかろうかと。違いますかね…? いずれにしてもいろいろ考えさせられるラストシーンでしたね。

『ゲゲゲの女房』―生活を重ねてきた夫婦にしか共有できない景色がある

『ゲゲゲの女房』

『ゲゲゲの女房』

夫である茂は自分の好きな漫画しか描かず、お金を一切稼ぐ気がない。一方、妻の布枝は毎日お金の心配をしています。二人の結婚生活は最初から最後まで辛いのですが、ラストシーン、二人が同じ方向を向いて同じものを目撃するんです。生活を重ねてきた夫婦にしか共有できない景色なんだろうなと、すごく感動しました。二人の間の距離感はずっといっしょなんですよ。重なったりすることがない。他の作品と比べると“恋愛映画”とは言えないかも知れませんが、恋愛の最終型はこの「わかり合うことを求めなくてもいい」関係のような気がします。

『恋人たちのアパルトマン』―永遠の愛にまつわる男女のズレ方が印象的だった

好きなのが、アレクサンドルがファンファンに思いを伝えようとバスを追いかけるシーン。彼はバスに追いつくんだけど、結局乗らない。「今、君に触れたら5年後には触れなくなる」と言って“永遠に好き”でいることを選ぶんです。でも彼女はプラトニックなんていや。そのズレ方のおかしみと悲しみが印象的でした。私も観た当時は“永遠の愛”の存在について本気で考えていたので(笑)、彼の気持ちには共鳴しました。

『シェルタリング・スカイ』―場所がどこであっても人は同じことを営んで生きていく

『シェルタリング・スカイ』

『シェルタリング・スカイ』

サハラ砂漠を舞台にした三角関係が展開しますが、場所が大きかろうが小さかろうが、どこであっても人って同じことを営みながら生きていくんだなと感じましたね。夫婦で旅をしている途中、妻が別の男性と一夜を共にするのですが、それでも妻の気持ちは夫にちゃんと向いている。それなのに夫は嫉妬心から妻を連れて奥地へと逃げていき、その結果、体を壊し、彼女を孤独にさせてしまうんです。本当の妻を見ていないんですよ。女心がわかってないなぁって思いましたね。今回のテーマに限らず、好きな映画ベスト10には必ず入る映画です。

『死んでもいい』―行灯に蛾が引き寄せられる場面が二人の関係性を象徴

石井隆監督の“名美”シリーズが好きなんですが、恋愛映画としてあげるならコレ。名美と信が旅館で会う場面で、行灯に蛾がバチバチあたっている描写が印象的で。名美が“火”であり、危険でもそこに引き寄せられてしまう信、という二人の関係性を象徴している名場面。名美は男にとって理想のファムファタル像ですが、女の私から見ても彼女のたたずまいにはあこがれますね。

『秋津温泉』―男性視点で描かれた“女性の絶望”に思わずハッとさせられる

これも男がダメで、「俺、死ぬ」とかすぐ思っちゃう。なのに女が心中してくれって言うと断る。その肝の小ささが気持ちいいですね(笑)。女の人って、歳を重ねていくにつれ若いころの魅力が減っていき、毎朝老いという小さな絶望を感じるわけですが、この映画ではそれが男性の視点で描かれているので、突然大きな絶望を見せつけられたような気持ちになって、ハッとさせられました。


(C)2010 HAMILTON FILM PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED (C) 2010 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved. (C)1989 Gladden Entertainment Corp. All Rights Reserved. Licensed by Granada International Media Ltd. (C) 「さよならみどりちゃん」製作委員会 (C) 2009 CJ ENTERTAINMENT INC., FOCUS FEATURES INTERNATIONAL & MOHO FILM. ALLRIGHTS RESERVED (C) 2010水木プロダクション/『ゲゲゲの女房』製作委員会 写真:Album/アフロ

プロフィール

狗飼恭子

1974年生まれ。小説やエッセイなど、一貫して恋愛をテーマにした執筆活動を続けており、『ストロベリーショートケイクス』、『スイートリトルライズ』、『百瀬、こっちをむいて。』などの映画脚本も担当。脚本を手掛ける『Amy said』が2017年秋に公開予定。

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

狗飼恭子

生年月日1974年7月9日(45歳)
星座かに座
出生地埼玉県

狗飼恭子の関連作品一覧

関連サイト

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST