『ブラック・ファイル 野心の代償』シンタロウ・シモサワ監督インタビュー/大物キャスト起用だけではない衝撃のデビュー作!

若き監督の映画監督デビュー作

若き監督の映画監督デビュー作

いよいよ1月7日(土)より公開となる『ブラック・ファイル 野心の代償』は、『トランスフォーマー』シリーズのジョシュ・デュアメルを主演に迎えるサスペンス映画。彼を取り巻くのは、これが初共演となるオスカー俳優のアル・パチーノアンソニー・ホプキンス、そしてイ・ビョンホンら豪華俳優陣。なんと、監督デビュー作にしてこの大物たちをまとめ上げたのが、日系二世のシンタロウ・シモサワだ。

ホラー映画『THE JUON/呪怨』(04)では共同プロデューサーを務め、ハリウッドデビューの清水崇監督に全米No.1の快挙をもたらした他、ドラマ『クリミナル・マインド 特命捜査班レッドセル』『ザ・フォロイング』などで脚本・製作を手がけるなど、海外TVドラマ界で頭角を現した新鋭のシモサワ監督にデビューに話を聞いた。

本作がデビュー作となるシモサワ監督だが、本作についてはブライアン・デ・パルマ監督に色濃く影響を受けているそう。しかも、いわゆる“映画学校”へは通わず、表現は独学で学んでいったそう。

「僕が好きな監督はジャンルによって違うけど、数名挙げるならブライアン・デ・パルマとかマーティン・スコセッシ、クリストファー・ノーラン、ニコラス・ウィンディング・レフン、ロマン・ポランスキー、清水崇などですね。僕は映画学校へは行っていないので、スクリーンでの表現の仕方は映画を観ながら学んできました」

(C)2015 MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.ALL Rights Reserved.

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そんな監督がデビューに当たって心がけたこととは何だろう?

「初監督なので、まず意識しなければいけなかったのは、どういったビジュアルでシーンを始めて、どういったビジュアルでシーンを終わらせるか、ということ。台本に『このセリフでこのシーンはカットだよな』と書き込んでも、その見た目をどうするかを考えなければならなかったんだ。それと、僕は今までずっと脚本などを書いて来たけど、どう演出するのかは一苦労あった。例えば画面に対する俳優の配置とか…本当は学校で習うかもしれないことが、僕は人の映画を観てしか学んでいないので、そういう記憶を辿りながらやっていったね」

シモサワ監督は、デビュー作にしてアル・パチーノやアンソニー・ホプキンスはじめとした豪華なキャストを揃えた。大物ばかりの中、そのバランス感はどのように考えられたものなのだろう?

「非常に役者として顔がたっている人たちなので、キャラクターが俳優に負けないようにしないといけない。なので、彼らが登場する最初のシーンなどはそれなりに工夫をしているよ。例えば、アンソニー・ホプキンス(アーサー・デニング役)が最初に登場するシーンでは、マリン・アッカーマン(エミリー・ハインズ役)と歩いているけど、いまいち二人の関係がわからない。でも、この2人が付き合っているな、というのはわかるんだ。ちょっと謎めいた、分からない感じを出しているのと、2人を後ろから追っていくショットというのは、意図があってのこと。それと、アル・パチーノ(チャールズ・エイブラムス役)に関しては、ニュー・オリンズの街並みの引きのショットで、車から出てくるところをカットしていくわけだけど、カメラを少しずつ寄せながら正面から撮っていくことで、堂々たる佇まいを撮っている。このようにキャラクターを立たせることを意識してやっているよ」

(C)2015 MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.ALL Rights Reserved.

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さらに、豪華俳優陣を集めたからこその難しさもあったという。

「主演のジョシュ・デュアメルがとても緊張してね(笑)。撮影の一日おきに緊張しているような感じで。彼と周りのバランスのとり方も難しかったよ。イ・ビョンホンに関しては、今主役級の俳優でアジアのリーディングマン。一番ジョシュも緊張したんじゃないかな」

本作の主役はあくまでジョシュ演じる若手弁護士のベン・ケイヒルだ。一般的には、アンソニー・ホプキンスとアル・パチーノが全面的に対決して物語を引っ張っていく…と思いがちだが、そうではない。こんな意外性すらごく当たり前のようにやってのけている。

「この2人の対決シーンを削ぎ落としたのは、ストーリーの都合上ということもあるけど、言ってみれば(役者として)神々の対決なんだ。神と神の一騎打ち。だから、ごく普通のシーンでは共演させていない。ただ、そのしっぺ返しがちゃんとあったというか、アンソニーの役は脚本には“イラつく”とか“怒り出す”とか書いておいたんだけど、撮影する時に、アンソニーがこれをなしにしたいと言ってきた。それはどうしてかと聞くと、『君は僕が神だと言ったじゃないか。神は感情を持っていないんだよ』と逆に言われてしまってね…思わぬ方向に行ってしまったよ(笑)。

(C)2015 MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.ALL Rights Reserved.

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野心家弁護士ベン・ケイヒルは巨大製薬会社の不正行為を暴くため、エミリー・ハインズから機密ファイルを受け取る。しかし、その出会いをきっかけに、人間達のありとあらゆる欲望が複雑に絡み合い、ケイヒルの人生は予想もつかない意外な展開に巻き込まれていく――という本作のストーリーにおいて、通常の勧善懲悪を想像しているとそれは裏切られることになる。

「残念ながらアメリカでは、色んな意味でモラルが変わり始めていて、例えば警察官が市民を暴行したり…白黒はっきりしているわけではなくて、いろんな解釈の仕方がある社会になってきている。だから本作でもそれを反映させている。典型的な“白対黒”という構図ではなく、結果“全員ワル”なんですよね、この映画って。そういうところを僕は探求したいと思っている」

(C)2015 MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.ALL Rights Reserved.

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本作では、ビジュアル的にも男性が目立っており、男性社会を表現しているかといえばそうではない。女性陣もかなり重要な役どころとして視聴者を驚かせてくれる。

「アリス・イヴ(シャーロット・ケイヒル役))とマリン・アッカーマンはふたりとも素晴らしかったのですが、特にアリスはびっくりするほど素晴らしかった。ムスッとした表情などは本当に意図的にやっていたもので、僕も編集の段階でそういう理由だと気づいたくらいだった。もちろん指示していたこともある。物語が進むに連れ、彼女は“なんとなく疲れている感じ”から綺麗になっていったりとかね」

その理由はラストで明かされるが、まるでそれは『ゴーン・ガール』のような怖さを感じることになるだろう。

「ラストカットは一番美しいところだね。それまでは地味な感じなんだけど」

(C)2015 MIKE AND MARTY PRODUCTIONS LLC.ALL Rights Reserved.

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本作は、音楽も特徴的だ。キャラクターの心情を煽る時、言葉ではなくホラー映画かと思うような演出がとても印象的なのだ。

「作曲家がクラシックのバックグラウンドを持っていたので、そのベースはあった。彼と話をした時『奇妙な音楽をお願い』と指示を出した。それはスムーズなものではなく、ちょっとショッキングで大胆で変なものを、って。そういうリクエストを出したね。もうちょっとバーナード・ハーマンっぽくしたかったという思いもあったけどね。でも相当難しい要求だし、その中でいいものを仕上げてくれたよ」

さらに、本作は全ての人間関係において、ハッキリした答えが提示されない。デビュー作にしてシモサワ監督が投げかけるそれは、視聴者に考えを委ねているのだろうか?

「もちろん意図してのこと。夫妻に関してもそうだし、イ・ビョンホンについてもそう。僕はずっとテレビをやってきて、CBSの番組を多くやってきているんだけど。“誰が何のために何をしているか”をはっきりさせないといけないのがテレビの世界。映画の面白いところは、“いまいち動機がわからないんだけど…”っていうのを描けるところ。そういういい意味で勉強になったね」

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これだけの役者でデビュー作を撮った監督だが、すでに次回作が動き出しているという。

「もうすぐ脚本が出来上がって、3月にはプリプロダクション(撮影の準備)が始まるんだ。同じくライオンズゲートの作品になるんだけど。タイトルは『The Abduction』…つまり、さらわれるという意味。とあるカップルがニュー・メキシコへ移住するんだけど、周りの人たちが奇妙な行動をする。どうやらこれは宇宙人が絡んでいるらしい…という話だけど、いわゆるSFチックなエイリアンが出たりはしない。サスペンス・スリラー的な色が強くなるよ」


映画『ブラック・ファイル 野心の代償』
2017年1月7日(土)より新宿ピカデリーほか全国公開

監督:シンタロウ・シモサワ
出演:ジョシュ・デュアメル、アンソニー・ホプキンス、アル・パチーノ、イ・ビョンホン、アリス・イヴ、マリン・アッカーマンほか
2015/アメリカ/106分/シネスコ/原題:MISCONDUCT
提供:カルチュア・パブリッシャーズ
配給:松竹メディア事業部

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