新作映画『トッド・ソロンズの子犬物語』を観るべき3つの理由――不謹慎? 後味悪い? これぞ現代アメリカのリアルかも…

『トッド・ソロンズの子犬物語』(C)2015WHIFFLE BALLER,LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

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『トッド・ソロンズの子犬物語』ってどんな映画?

生後間もなく、飼い主に手放されたダックスフントがやって来たのは、豪邸に暮らす一見幸せそうな家族。しかし、独善的で傲慢な夫と神経質な妻、ガンを患う9歳の息子の関係はギクシャクしており、かわいいダックスフントが彼らの絆を深めることはなかった。いたずらを繰り返した挙句、家を追い出されたダックスフントはその後、薄幸な獣医助手、落ちぶれた映画脚本家、偏屈な老婆とさまざまな飼い主を転々としながら、全米をさまよう。

観るべき理由:1――心温まるワンちゃんの大冒険…ではありません

愛くるしいダックスフントが主人公の本作。ただし、最初に断言しなければいけないのは、「ワンちゃんが安住の地を求めて、大冒険を繰り広げるハートウォーミングな感動作」では決してないということ。むしろ、ダックスフントは行く先々で災難に巻き込まれてしまう。その原因は現代アメリカの“負”を背負ったような、クセがすごい飼い主たちの存在だ。

金で幸せは買えないが、貧しければ希望も見いだせない…。そんな格差や貧困、さらに麻薬中毒やセレブ信仰といったリアルな社会問題を次々とあぶり出すダックスフントの“放浪”は、ちょっと不謹慎で、すこぶる後味が悪い。同時に他人の不幸をつい喜んでしまう人間(観客)の本性もえぐり、「結局、幸せって何だろ?」と深~く考えさせられてしまう!

観るべき理由:2――なぜか(笑)豪華キャストが集結し、迷演?

映画のポイントとなるのが、ダックスフントの飼い主たちを演じるキャスト陣。決して、多額の製作費が投じられた大作ではないのに、なぜか(笑)豪華な顔ぶれが揃っており、バツグンの演技力を発揮し、とことんヘンテキな人物を演じているのだ。

幼い子どもに「犬に避妊手術を受けさせる意味」を説くため、グロテスクな作り話を披露する母親を演じるのは、『ビフォア・ミッドナイト』のジュリー・デルピー。また、映画監督としても活躍するダニー・デヴィート(『ツインズ』)、アカデミー賞主演女優賞に輝いた経歴をもつエレン・バースティンらの迷演(!?)に注目したい。

観るべき理由:3――ようこそ、ブラックな“ソロンズ・ワールド”に

そんな豪華キャストを集められてしまうのは、『ハピネス』『ストーリーテリング』などで知られる奇才トッド・ソロンズ監督だからこそ。常にタブーを恐れず、軽やかに笑い飛ばしながら、人間が隠し持つ愚かさや醜さ、滑稽さに鋭く切り込むブラックな作風で“インディペンデント映画の雄”として長年、コアなファンに絶大な支持を得ている存在なのだ。

SNSの普及などで、ちょっとした風刺さえ「不謹慎だ」と非難されてしまう現代だからこそ、ソロンズ監督のような挑発的な(でも、的を射ている)問題提起は、表現の自由を保つ上で絶対不可欠だし、彼が生み出すキテレツ過ぎる(だけど、どこか共感できる)キャラクター像はとても魅力的。今の映画に少し退屈さを感じているなら、ぜひ体験してほしい一作だ。

(文・内田涼)


『トッド・ソロンズの子犬物語』
2017年1月14日(土) ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー

監督・脚本:トッド・ソロンズ
出演:ダニー・デヴィート、エレン・バースティン、ジュリー・デルピー、グレタ・ガーウィグ、キーラン・カルキンほか
配給:ファントム・フィルム
2015/アメリカ/アメリカン・ビスタ/88分
原題:Wiener-Dog

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アーティスト情報

トッド・ソロンズ

生年月日1959年10月15日(59歳)
星座てんびん座
出生地米・ニュージャージー・ニューアーク

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