映画『沈黙ーサイレンスー』塚本晋也インタビュー「信者として、全霊、無心で捧げました」

塚本晋也

塚本晋也

「ほんとうにこの上なくありがたいことだと思います」

塚本晋也は、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙―サイレンス―』への出演についてそう語る。
監督として世界的に知られるシンヤ・ツカモトだが、俳優としてスコセッシ作品に参加することはとてもスペシャルなことだった。

「最初のオーディションのとき、僕が来るということをスコセッシ監督、知らなかったみたいで。シンヤ・ツカモトは、同姓同名の違う人だと思っていたと。え? じゃ、僕の映画、観てくれているんですか? と言ったら『鉄男』『六月の蛇』、好きだよ、と。そこから気持ちが打ち解けて。オーディションもすごく楽な気持ちでできたんです。俳優がやりやすいように気を遣ってくれる。(本編の撮影中も)終始、そういう感じでした。とにかく自由にやらせてくれる。良かった場合には『エクセレント!』と表現してくれるんですね。俳優って常に不安になっているものなので、それを聞くと、よかった……と思えるんですよね。きっと(スコセッシ作品の常連ロバート・)デ・ニーロさんも『エクセレント!』と言われてたんでしょうね」

(c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

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ほんとうにうれしそうに、しみじみ振り返る。

「スコセッシ監督の作品はキャスティングが非常に大事。キャスティングで決まるところがあると思うんです。最初にデ・ニーロさんと一緒におやりになったことで、デ・ニーロさんのいいアイデアが活かされていったと思います。もちろんただ(俳優の)言いなりになるのではなく、優しいキャラのお顔をしてらっしゃいますが、全部いいアイデアを獰猛に取って、自分の血肉にする。いいアイデアは採り入れ、それが効果的になるように、うまーく周りを整えるんですね。理想的なやり方だと思います」

脚本を読み、あるシーンは自ら「歌いたい」と申し出た。歌える自信はなかったが、作品のためにそうするべきだと考え、監督がOKすれば、すぐに練習したかったそうだ。「きっとデ・ニーロさんなら、こういうこと言ったんじゃないか? なんて思ったんですよ」と言う。スコセッシは「獰猛に」塚本のアイデアを採り入れた。

「優しさと、獰猛さ。そして、映画をよくするためには、耳をダンボのようにしてアンテナを張っている。役者が何をするか。それが大きな比重を占めている現場ですよね。僕も監督としてそうしてはいるつもりですが、もっと役者に対して開いてもいいんじゃないかと思わせられましたね。現場全体に対してのOKだけでなく、俳優のところに行って『エクセレント!』と言う。あれはすごく大事なことだなと」

(c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

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キリシタンが弾圧される17世紀の日本、長崎。そこを訪れた若きポルトガル人宣教師の目線で語られる苦難の物語。塚本は敬虔な信者、モキチを演じた。全身全霊で。

「スコセッシ教の信者ですから。自分に特定の信仰がない以上、そこ(スコセッシへの信心)を(映画のテーマに)すり合わせるようにしてましたね。17歳のときに『タクシードライバー』を観た最初から、信者として始まってたかもしれないですね。何度観ても発見があります。あれは監督が34歳のときに作られた映画ですが、僕自身、34歳を通り越してもまだまだ、いつまでも発見がある。他の映画も素晴らしいですし、スコセッシ監督の部品になれる。そのチャンスがあるかもしれないってだけで、これは全霊を注ごうと。最初のオーディションでは、もしかしたらスコセッシ監督と同じ部屋で同じ空気吸えるかもしれないと。それだけで行きましたから。受かるなんて、望みが高すぎるので」

塚本の言葉は、まさに信者のそれだ。

「(スコセッシへの)信仰は厚くなるばかり。ドリーム・カム・トゥルー。頂点と言ってもいいくらいの夢の実現ですよね。(現場では)夢の中にいるようでした。(人生で)ここがいちばん頑張るところ、と。まざまざと意識しながらやってましたけどね」

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モキチは、重要なパートだ。

「前半のモキチの信者としての、熱狂的なまでの信心ぶりがちゃんと描かれないと、後半の説得力、緊張感がまるでなくなってしまう。とっても重要な役なんで、その分のことをしなくちゃいけない。その責任は感じていました。もう、全霊としか言いようがありません」

無心。まさに、その言葉がふさわしい。

「(ロケ撮影で)台湾に長いこといましたけど、台湾で観光などのエンジョイは一切しませんでした。いつもホテルの中で練習しかしてませんでした。ほんとうに無心で捧げることができたと思います」

監督として。俳優として。「神様」の撮影現場を体験して得たことは、普遍的な真実だった。

「規模は違うけど、現場の中心となる映画の作り方も志も、日本とおんなじ。それが自分にとって非常に励みになった。(日本の)スタッフの人たちに「おんなじだぜ!」と言ってあげたいくらい。非常にいい気持ちのお土産ができたんです。これから映画を作っていく上で。他人(ひと)の現場に(俳優として)行くといつも思うんですよね。映画の作り方として特別なことは何もない。でも、その監督の映画になる。どこか違うところで、監督の怨霊や念が入るんです」

(c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

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(取材・文:相田冬二)


映画『沈黙-サイレンス-』
2017年1月21日(土) 全国ロードショー

原作:遠藤周作『沈黙』(新潮文庫)
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ジェイ・コックス
撮影:ロドリゴ・プリエト
美術:ダンテ・フェレッティ
編集:セルマ・スクーンメイカー
出演:アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバー、窪塚洋介、浅野忠信
イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ
配給:KADOKAWA

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