【迷ったらコレ!】『愚行録』『ラ・ラ・ランド』ほか、2月のおすすめ映画ガイド

(C)2017「愚行録」製作委員会

(C)2017「愚行録」製作委員会

映画ライター岸豊がおすすめ映画を紹介する連載の第二回。今回は2月に公開を迎える作品から4本をピックアップ。カナダの若き天才グザヴィエ・ドランの最新作から、妻夫木聡と満島ひかりの共演作として注目が集まっているミステリー、ハリウッドきっての演技派が見せる再生のドラマ、そしてアカデミー賞最有力と称される傑作ミュージカル映画まで、厳選した良作の魅力を紹介する。

『たかが世界の終わり』2月11日より公開

『マイ・マザー』『わたしはロランス』で知られるカナダの俊英グザヴィエ・ドランが、ジャン=リュック・ラガルスの戯曲『まさに世界の終わり』を基に、ギャスパー・ウリエル、マリオン・コティヤール、レア・セドゥ、ヴァンサン・カッセル、ナタリー・バイというフランスのスター俳優を結集して描く「鬱系ホームドラマ」。自分の余命を知った若き作家(ウリエル)が、長年戻っていなかった実家に帰り、妹(セドゥ)や母(バイ)、兄(カッセル)、その妻(コティヤール)に思いを打ち明けようとするのだが、彼らの間に存在する複雑な関係性がこれを邪魔してしまい、家族関係はこじれにこじれていく。これまでの作品でも「人と人が理解し合うことの難しさ」をテーマに据えてきたドラン監督だが、本作では「家族間の無理解」を一貫して描き、彼のフィルモグラフィーでも極めて強烈な人間模様を描き出した。青を中心に爽やかな色遣いを見せてきたドラン監督が、赤味の効いたライティングと深みのある影を駆使しながら構築した、寂しげな印象を与える映像にも注目してほしい。

『愚行録』2月18日より公開

妻夫木聡×満島ひかりという邦画でも屈指の演技派二人をW主演に迎え、一つの愛がきっかけに起こった悲劇を描く衝撃のミステリー。物語は、とある一家惨殺事件を追うルポライター(妻夫木)と、その妹でネグレクトにより逮捕された女(満島)を軸に展開する。特筆すべきは、妻夫木と満島の怪演。妻夫木は閉塞的な日本社会を幽霊のように漂う男を、満島は肉体と魂が辛うじて繋がっている「ギリギリ」な女を、それぞれ繊細な心理描写で体現している。メガホンを取ったのは、なんと本作が長編デビューとなった石川慶。洗練されたディレクションは、熟練した監督のそれにしか見えない…。また、向井康介による脚本では、原作に存在した「話者の情報の秘匿」が排除され、最初から誰が何について語っているのかが明示されているため、原作よりもミステリーとしてはフェアで楽しみやすくなった。ポーランド人の撮影監督ピオトル・ニエミイスキが操るカメラを通じて映し出される、緊張感と美しさが同居した映像にも引き込まれる。

『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』2月18日より公開

『ダラス・バイヤーズクラブ』『カフェ・ド・フロール -愛が起こした奇跡-』で知られるジャン=マルク・ヴァレ監督が、ハリウッドきっての演技派ジェイク・ギレンホールを主演に迎えた「再生のドラマ」。妻を自動車事故で亡くしたものの、全く悲しむことができないという主人公の設定は、西川美和監督の『永い言い訳』に似ているが、興味深いことに本作では主人公の再生が「妻との思い出の破壊」を軸に実現される。そんな風変わりな物語の主人公デイヴィスを演じたギレンホールは、愛していない妻の死によって自らの空虚に気づかされる哀れなエリートサラリーマンを、ハリウッドでも屈指の心理描写能力を用いて、時には熱く、時にはドライに体現。デイヴィスと電話を通じて交流する顧客サービス担当・カレンにふんしたナオミ・ワッツ、カレンの息子クリスにふんしたジュダ・ルイスが見せる、等身大で共感不可避な演技も素晴らしい。また、デイヴィスによる思い出の破壊を通じて描かれる、アパシーや物質主義といった現代社会が孕む問題への言及にも、深く考えさせられるものがある。

『ラ・ラ・ランド』2月24日より公開

『セッション』で大ブレイクしたデイミアン・チャゼル監督が、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンをW主演に迎えて描く「切なくも美しいミュージカル映画」。自身のフィルモグラフィーで音楽というテーマを一貫して貫いてきたチャゼル監督は、現実的なプロットと非現実的な演出を効果的に織り交ぜ、導入から結末に至るまで一切無駄がない、ドラマティックなストーリーを構築している。これにジャスティン・ハーウィッツによる音楽が溶け合った上質なストーリーは、かつてジャック・ドゥミ監督の『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』が映画ファンに感じさせたような、特別なときめきを与えてくれる。コメディエンヌとしての才能をいかんなく発揮して魅力的なヒロイン像を体現したストーン、彼女の存在を際立たせるために演技を抑えつつ、愛する女性に自己犠牲を果たす「いい男」を体現したゴズリングの演技も言うことなしだ。賞レースにはあまり意味を感じないが、本作はまず間違いなく今年のアカデミー賞を支配するだろう。

(文:岸豊)

アーティスト情報

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST