新作映画『はじまりへの旅』を観るべき3つの理由――文明批判に留まらない、ファミリードラマの新たな傑作

(c)2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

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『はじまりへの旅』ってどんな映画?

アメリカ北西部の大森林に暮らすベン・キャッシュと6人の子どもたち。電気やガスといったライフラインに加えて、携帯電話の電波も届かない山奥で、彼らは自給自足の生活を送り、子どもたちは父ベンによる独自の教育方法で“生きる術”を学んでいた。そんなある日、療養中だった妻レスリーの急死を知ったベンは、母の葬式に参列したいと願う子どもたちのために、改造したスクールバスに乗り込み“現代社会”へと旅立つことに…。

観るべき理由:1――家族愛ときずなを描く、新たな傑作の誕生

「家族のあり方」は恋愛や友情以上に、誰もが感情移入し、共感や問題意識を抱くテーマ。しかも、その多様性が叫ばれる現代では、映画をはじめ、さまざまなメディアで、改めて家族の形が問い直されている。そんな中、俳優としても活躍するマット・ロス監督は、自身の生い立ちをもとに脚本も手がけた『はじまりへの旅』で、一見ヘンテコな家族が繰り広げる冒険を通した、普遍的な家族愛ときずなを描き、ファミリードラマの新たな傑作を誕生させた。

文明社会に背を向ける父ベンと、両親を愛しながら、それぞれの個性を育み成長を遂げる6人の子どもたち。仏教徒だった母親の遺言を叶えようと、一丸となり、危険な誘惑に満ちた資本主義社会をサバイバルする彼らの運命は?

観るべき理由:2――指先ひとつじゃ分からない、大切なこと

長男がシカを生け捕るという衝撃的なシーンで幕開ける本作は、子どもたちをたくましく育てる父ベンの型破りな教育方針も大きな見どころ。彼らは毎日のように野山を駆けまわり、アスリート並みに体を鍛え、ナイフ1本で生き残る方法も習得。学校には通わず、古典文学や哲学書を読みこなしながら、6カ国語をマスターしてしまう。

こうして生まれた、知性を備えた自然児6人にとって、指先ひとつですべてが解決してしまう現代社会は、大自然よりもはるかに危険がいっぱい! ゲームやテレビ、ネットやスマホといった情報まみれの世界で、彼らが味わうカルチャーショックは笑いを誘うと同時に、「自分たちは普通」だと思い込んでいる現代人が、いかに物事の本質を見逃しているかを浮き彫りにしている。

観るべき理由:3――実は、ベンにとっての成長であり“はじまり”

ただし、『はじまりへの旅』は単なる文明批判の映画ではない。子どもたちにとっては完ぺきなスーパーマンに映る父ベンは、子どもたちの自立、亡き妻への自責の念、継父とのわだかまりといったパーソナルな問題に直面し、独善的だった生き方を顧みながら、改めて「父であることとは?」と自問自答を繰り返す。その不器用な姿には、一人の男としての苦悩や葛藤、弱さといった人間味がにじみ出ている。

約2,400キロに及ぶ冒険を通して、最も成長したのは、他ならぬ父ベンなのだ。父としての“はじまり”、そして家族としての“はじまり”。本作で2度目となるアカデミー主演男優賞候補となったヴィゴ・モーテンセンが、妻の死をきっかけに、本当の意味で「父になる」主人公ベン・キャッシュを好演している。

(文・内田涼)


映画『はじまりへの旅』
4月1日(土)ロードショー

監督・脚本:マット・ロス
出演:ヴィゴ・モーテンセン、ジョージ・マッケイ、フランク・ランジェラ
原題:Captain Fantastic 119分/シネスコ/英語/日本語字幕:中沢志乃
配給:松竹

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アーティスト情報

ヴィゴ・モーテンセン

生年月日1958年10月20日(60歳)
星座てんびん座
出生地米・ニューヨーク・ニューヨーク・マンハッタン

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