戸田恵梨香、父仕込みの蹴りに快感「『なんて気持ちいいんだ!』って思いました(笑)」―映画『無限の住人』ロングインタビュー

乙橘槇絵(おとのたちばなまきえ)役の戸田恵梨香

乙橘槇絵(おとのたちばなまきえ)役の戸田恵梨香

三池崇史がメガホンを取り、沙村広明による同名コミックを実写化した映画『無限の住人』が、4月29日に全国公開を迎える。不死身の用心棒・万次(木村拓哉)と、両親を殺された少女・浅野凜(杉咲花)が、凜の敵である天津影久(福士蒼汰)率いる逸刀流への復讐を繰り広げる姿を描く本作。豪華キャストの中でも特別な輝きを放つのは、天津が最も信頼を寄せる剣士・乙橘槇絵(おとのたちばなまきえ)を演じた戸田恵梨香である。去る2月某日、「蹴るっていうアクションが、昔から好きなんですよ」と笑顔で明かす戸田に、実写化作品への出演の思いや、劇中で披露したアクション、役作り、そして海外作品への意欲などについて話を聞くことができた。

>写真をもっと見る

すごくたくさんの疑問が出てきて、不安のまま現場入りしました(笑)

実写化というジャンルは、成功を収めることが難しいジャンルの一つだ。オファーを受けてからの日々について聞くと、戸田は「台本を読んで、『これは何なんだろう?』と思って、まず原作を読もうと思ったんですよ。原作を読んで、『あ~。なるほどな』って色々なことが分かってきて。実写化が難しいことと、アクションをどこまでやるのかなってこと、それから世界観がどういう風になるんだろうって、すごくたくさんの疑問が出てきて、不安のまま現場入りしました(笑)」と振り返る。

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会

その不安は、三池監督と会っても解消されなかった。「最初に三池さんにお会いした時に、『アクションはどういうイメージなんですか?』って聞いたら、『ある程度リアリティのある中でやっていきたい。だからスピードとかはいじらない』って言われて、『え、それって…槇絵としては辛くないですか?』って(笑)。すごくびっくりしたんですよ。それを聞いた瞬間に、プレッシャーにはなりましたね。殺陣はやったことがなかったですし、自分がどこまでできるのかっていうのが、さっぱり分からない状態だったので、ドキドキしました」

蹴るっていうアクションが、昔から好きなんですよ

撮影を重ねても不安を払拭することはできなかったと吐露する戸田だが、あるアクションが彼女に自信を与えてくれた。「蹴るっていうアクションが、昔から好きなんですよ。ちょっと語弊がありますけど(笑)。父が少林寺拳法の師範だったので、父と家で蹴るっていう練習をしたりとかしてて。そういう動きはすごい好きで、今回ワイヤーを使って、柱を伝って蹴るというアクションで、アクションチームの方が代役でやってくださってる万次さんに、思いっきり入ったんですよ。その時に『なんて気持ちいいんだ!これはイケる!』って思いました(笑)。だいぶ後半ですけどね(笑)」

『エンジン』以来、約10年ぶりの共演となった木村とは、細かなコミュニケーションを取りながらアクションを構築していったという。「セットが狭かったので、槇絵の武器は回してナンボの武器なのに、回せないっていう状況だったんです。それで木村さんが、『ここで回せるんじゃないか』ってアクションを考えてくれたんです。もちろんアクションチームがいたんですけど、木村さんが考えてくれて、アクションチーム、三池さんと一緒に、槇絵のアクションが出来上がったという感じですね」

とにかく前代未聞のテイクを重ねちゃったんです

そのアクションにおいて最も難しかったのは、特殊な形状の槇絵の武器と、万次が用いる刀が鍔迫り合いするシーンだったそう。「槇絵が突いて、万次さんが受けるっていう感じだったんですけど、1回目のテストをやった時に、気持ちいいくらいにハマったんです。でも、本番になった途端にハマらなくなって、30数テイク、下手したら40テイクやったのかな?とにかく前代未聞のテイクを重ねちゃったんです。テストの時は竹光でしたが、本番ではなるべくアップで撮りたいからということで、武器を本身にしたいと言われたんです。ただでさえ、筋肉痛じゃないですか(笑)。本身を持ち上げるのもしんどかったし、そこに合わせていくっていうのが、本当に…苦痛でした(笑)。『これ、本当に本身じゃないとだめですか?』みたいな(笑)」

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会

クランクインする前に、幾つかのアクション映画を見て勉強を重ねたものの、「『え、こんな動きできない!』とか、『こんな早く動けない!』とか(笑)。見るたびにプレッシャーにしか感じなくて、不安で仕方なかったです」とも明かす戸田は、自分のアクションを陰で支えてくれたスタッフに対する感謝を惜しまない。「出来上がった作品を見て、『こんなにかっこよく仕上げてくださって、本当に感謝!』って思いました(笑)」

どういう状態が美しいかを模索しながら演じていきましたね

劇中では、槇絵の衣装も見どころになっている。しかし、スリットが入った服を纏いながらアクションを行うのは至難の業だ。戸田は「アクション的にはもう少し重心を下げたほうがいいんですけど、スリットの見え方として、あまり重心を下げすぎると美しくないとか、そこのバランスはすごい難しかったですし、色々な人に助言をいただきながら、どういう状態が美しいかを模索しながら演じていきましたね」と苦労を明かしながらも、「足がスッと見えてきた時に、衣装がとってもきれいだったので、『この衣装かっこいいな、好きだな』って思いました」と楽しそうに撮影を回顧する。

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会

こだわりが強いことが伺える三池組の現場。「朝起きるたびに、筋肉痛で体が動かないっていうのが、一番辛かったです」と苦笑する戸田は、自分以外のキャストの撮影の方が過酷だったのではないかと分析する。「私は、万次さんと戦うシーンだけが過酷だったんです。普通に台本を読む限りは、『1週間もあれば終わるな』とか思ってたんですよ。そうしたら、万次さんと戦うシーンだけで1週間近くかかったんです(笑)。『アクション映画って、こんなに時間かかるんだ!』って、本当にびっくりしたんですけど、運よく木村さんと闘ったシーンはセットだったので、寒さにも苦しめられることなく、ただ芝居に集中することができました。なので、私は他の皆さんと比べると、本当に恵まれた現場だったんじゃないかと思います」

アクションをしているときに、あまり魂があるように見せたくなかったんです

繊細な感情表現でも観客を魅了する戸田。最もこだわったのは、アクションとのバランスだった。「アクションをしているときに、あまり魂があるように見せたくなかったんです。相手を見ているようで見ていないみたいな目線は、すごく意識しました。けど、実際にアクションとなると、とにかく『やらなきゃやらなきゃ!』という感じだったので、すごく難しかったですね。そこが、自分の目で見ると、やっぱり駄目だったなとか思ったりする部分はあるので、もうちょっとアクションというものに対して、心の余裕ができていけたらいいなと思ってるんです。あとは声。遊女の時と、遊女じゃなくなった時の声は意識しました」

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会

福士蒼汰演じる天津影久(あまつかげひさ)/(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会

天津によって万次を殺す命令を受けるシーンも、本作における戸田のハイライトの一つ。ただ、このシーンは想像していたものとは違った仕上がりになったという。「私、あのカットが完成した時にびっくりしたんです。大好きな影久さんに呼ばれた喜びから、万次を消せという命令を受けて、表情が曇るという感じだったんですけど、その喜びの尺が割と長く使われていて想像していたのとは違いました」

アメリカとかだったら、B級・C級映画が好きなので、そういった作品に参加したいですね

海外のファンも多い三池監督の作品なだけに、劇中で屈指の存在感を放つ戸田にも、多くのクリエイターから熱い視線が注がれることは必至だ。海外での仕事についての意欲を聞くと、「国にもよりますけど、アメリカとかだったら、B級・C級映画が好きなので、そういった作品に参加したいですね」と意外な答えが返ってきた。しかし、憧れの映画人を聞くと、アメリカが誇る巨匠の名前を挙げる。「クリント・イーストウッド監督の作品は大好きです。役者としても、とても勉強になる存在ですね」

戸田恵梨香

アクション映画については「クランクアップを迎えた瞬間に、向こう先10年はやらなくていいって断言したんです(笑)」と苦笑するも、「でも普通に考えたら、40歳くらいでここまで動くことは多分不可能なので…。そう考えると、まだ今の間に、もし良い作品のお話が来たら、ぜひやりたいなと思ってます」と前向きに語る戸田。インタビュー後には、本作が第70回カンヌ国際映画祭特別招待作品(アウト・オブ・コンペティション部門)にて公式上映されることが決定し、世界中のクリエイターやバイヤーの目に届くこととなった。果たして戸田は、本作で見せた熱演によって、世界中の映画人の心を刺激し、活躍を世界に広げていくのだろうか?その役者人生からは、今後も目が離せない。

(取材・文:岸豊)


映画『無限の住人』
2017年 4月29日(土・祝)全国ロードショー

木村拓哉
杉咲花 福士蒼汰
市原隼人 戸田恵梨香 北村一輝
栗山千明 満島真之介 金子賢 山本陽子
市川海老蔵 田中泯 / 山﨑努

原作: 沙村広明「無限の住人」(講談社『アフタヌーン』所載)
監督:三池崇史
脚本:大石哲也
音楽:遠藤浩二
制作プロダクション:OLM
制作協力:楽映舎
製作:映画「無限の住人」製作委員会
配給:ワーナー・ブラザース映画

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST