タナカカツキが選ぶ「映像そのものを楽しむための映画」10本

映像作家としても活躍するマンガ家、タナカカツキさんが選ぶのは、映像エンターテインメントに徹した作品。まだ見ぬ世界へと連れて行ってくれる珠玉の映像にどっぷり浸ろう。

※ピックアップ作品は、2011年末に発行された『シネマハンドブック2012』掲載のものとなります。ご了承ください。


タナカカツキが選ぶ「映像そのものを楽しむための映画」10本

ジャーニー・オブ・マン

世界トップレベルのパフォーマンス集団、シルク・ドゥ・ソレイユ。人間が成長していく段階を6つのステージに分け、バハマの海やセコイヤの森など世界各地の大自然を舞台にパフォーマンスを披露する。

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東京オリンピック

市川崑監督が総監督を務め、1964年に開催された東京オリンピックの全貌を撮影した長編記録映画。103台のカメラと高性能マイクを駆使して、人間としての選手を捉えた異色ドキュメンタリーとなった。

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夢

今もなお全世界の映画人に影響を与えつづける巨匠、黒澤明監督が自身が見た夢をもとに撮った全8話からなるオムニバス。彼を師と仰ぐスティーブン・スピルバーグが製作総指揮として協力した。

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アイズ ワイド シャット

スタンリー・キューブリックの遺作であり、当時夫婦だったトム・クルーズ&ニコール・キッドマンが共演したミステリアスな心理劇。妻の性的欲望を知った男が妄想に取りつかれながら夜の街をさまよう。

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銀河鉄道の夜

宮沢賢治の原作を漫画化したますむらひろしの作品を原案に採用したファンタジー。登場人物は猫に置き換えられている。少年ジョバンニと親友カムパネルラが銀河鉄道に乗り、幻想的な冒険の旅に出る。

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惑星ソラリス

ロシアの巨匠アンドレイ・タルコフスキーによる名作SF。謎の惑星ソラリスがもたらす不可思議な現象に直面する科学者の苦悩と暴走を描き、第25回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。

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SAYURI

世界的ベストセラーを『NINE』のロブ・マーシャル監督が映画化。9歳で花街の置屋に売られた千代は会長と呼ばれる紳士に心惹かれる。やがて一流の芸者“さゆり”となった彼女は会長と再会する。

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ぼくは怖くない

70年代後半、イタリア南部の村。10歳の少年が不思議な洞窟に監禁された同世代の少年と心を通わせながら大人になっていく姿がノスタルジックな映像とともに紡がれる。イタリアはもちろん、日本でもヒットした。

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CHRONOS クロノス

『コヤニスカッティ』の撮影マン、ロン・フリックによるIMAXシステムを採用した一大映像叙事詩。微速度撮影で記録された世界各地の古代遺跡や大都市は圧巻。

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オランダの光

フェルメールやレンブラントの絵画に影響を与えたと言われるオランダの光の謎を、関係者へのインタビューや世界各地で採取した光の映像とともに探る。

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『ジャーニー・オブ・マン』―人間のフォルムの美しさと自然の美しさが同じだと感じさせてくれる

『ジャーニー・オブ・マン』

『ジャーニー・オブ・マン』

シルク・ドゥ・ソレイユのDVDって大体がライブ版。ライブを映像で観ても十分面白いんだけど、この『ジャーニー~』は映像でしかできないことを追求しています。観ると、人間の鍛えられたフォルムの美しさと自然の美しさが同じものなんだと感じるんです。そして人間の体と自然、すべて美しいもので画面を構成したらどうなるか、そんなアプローチをした作品って観たことがない。映画って絵とストーリーに分けられると思うんですが、今はほとんどストーリーに牛耳られたものが多い中、絵だけでいくぜっていう意気込みをダイナミックに表現した作品です。

『東京オリンピック』―この映画は、数字的なことではなく“本当の記録”なんです

『東京オリンピック』

『東京オリンピック』

僕たちがスポーツ選手を見るときって常にナレーションが入っていて、彼らの肉体だけを見るというのはなかなかないですよね。でも『東京オリンピック』を観ると、実は競技場の選手の周りってとても静かだということがわかるんです。しかも東京オリンピックを体験していない僕たちにとっては、これから力を発揮する人間が緊張していたり集中していたりと数秒前に感じている空気が十分記録として伝わってきます。当時は記録か芸術かの論争も起こりましたが、これは数字的なことではなく“本当の記録”。昔の映画だけど今観ても十分面白い作品ですね。

『夢』―映像と物語を行ったり来たりしながら楽しんでほしい

『夢』

『夢』

世界の黒澤と言われている人が、“絵を撮る”という覚悟で撮ったにもかかわらず、観る側というのはいまだに物語に引っ張られたまま映画鑑賞を続けていると思うんです。それがすごく歯がゆいし、『夢』はもっと語られてもいい作品ですよ。個人的には、もっと奔放な夢でもいいのに! と思いましたけど、あまりに本物の夢になってしまうと自分が見た夢のほうが面白いし、物語に寄りすぎてもつまらない。映像と物語を行ったり来たりしながら楽しんでほしいし、その前にまずは映像に浸る楽しさを感じてほしい。これからも布教活動していきたいですね(笑)。

『アイズ ワイド シャット』―僕らを知らない世界に連れて行ってくれるのが映画の役割

『アイズ ワイド シャット』

『アイズ ワイド シャット』

日本人って舞踏会に拒否反応あるでしょう? しかも仮面(笑)。僕たちは昔からあらゆるものを禁止されて映画を観てるんですよ。でも、いい! 行こう! 仮面舞踏会に。映画の中で体験できるから! 知らない世界に連れて行ってくれるのが映画の役割だと思うし。しかも裸の人間の撮り方がきれいで、CGのような冷たさもあり、あんな性描写観たことない。あと、クリスマスなのでずっと世界がキラキラしている中、変態とレイプが描かれるんですが、“対比”というのもキューブリックが一貫してやっていること。“ワイド シャット”という題名も対比ですね。

『銀河鉄道の夜』―宮沢賢治の文学のもつ“空気”をそのまま映し出している

『銀河鉄道の夜』

『銀河鉄道の夜』

宮沢賢治の文学のもつ“空気”をそのまま映し出したような作品。物語というより、スクリーンで起こる現象そのものを楽しむというのは、今でこそジブリがやっていますけど、当時から挑んでいたのはすごいですよね。僕も「きたでぇ!!」ってキャッキャしながら楽しみましたから。主人公たちを猫にするのも大胆だし、よく聞くと衣擦れの音も入っていたりとアニメでそこまでやるか!? というこだわりよう。精神世界のお話なので淡々としていて眠くなっちゃうんですけど、すごく気持ちいいんですよ。環境映像として部屋で付けっぱなしにしていました。

『惑星ソラリス』―単純に物語を追えず、空気ごと飲み込まれてしまう感じ

『惑星ソラリス』

『惑星ソラリス』

ディレクターズカット版を観たんですが、タルコフスキーって“空気”を大切にする監督。でも僕のような、美しい映像大好き人間でも退屈に感じる場面があるんですよ(笑)。例えば川面に揺れる水草のシーンがとにかく長い。いつまで続くねんと。タルコフスキー、ほんとすごい時間軸持ってんなっていう(笑)。これも精神世界を描いた話なので、いつもと違う時間を体験してもらうために、時間のリズムを変な方向に持って行く仕掛けがたくさんあります。単純に物語だけ追えず、空気ごと飲み込まれてしまう感じ。映像に身をゆだねちゃっていいと思いますね。

『SAYURI』―“秘密の中に秘密がある”という構造にうっとりします

『SAYURI』

『SAYURI』

芸者の世界って隠蔽されていて、なかなか近寄れない。そこに生まれる禁断の恋っていう、“秘密の世界の中に秘密がある”という構造にうっとりしますし、未知の世界に連れて行かれます。『アイズ ワイド シャット』の日本版みたいな感じだし、そう考えるとこれが日本で撮られなかったっていうのは正直どうでもいい(笑)。ただ、生きている芸術品としての芸者が最高の接待をするわけですから、所作はもちろんのこと、部屋の小物一つとっても美しくなければいけない。日本独特の風景も含め、映像美としてきれいなものを見せつづけてくれる映画です。

『ぼくは怖くない』―“秘められた感”を出すための美しい映像は物語を伝える上で重要

『ぼくは怖くない』

『ぼくは怖くない』

前半は風が吹いて稲穂が揺れる気持ちのいい映像が続き、ラストは暴風雨。雨って映像としてきれいですし、美しい絵を撮ろうとする監督の意欲が感じられます。この映画も隠された世界を描いていて、10本中一番ストーリー性がありますが、“秘められた感”を出すために美しく撮ることは物語を伝える上でとても重要。それがうまくいっている映画だなと感じました。

『CHRONOS クロノス』―僕らの世界が撮影によって別の見え方をするのが映像の醍醐味

これが'85年に撮られていたというのが驚きですよね。定点カメラが動くというアイデアが面白いし、今のバージョンを観てみたい。後半、大都市の喧噪の高速度撮影はすごいです。僕らの住んでる世界が、カメラや撮影によってまた別の見え方をするというのは映像のもっとも得意とするところ。文明を撮ったっていうのも面白い。これほど映像に浸れる作品はないし、十分エンターテインメントだと思います。

『オランダの光』―ストーリーで語られるエンターテインメント性とは違うアプローチ

オランダって独特の陰影を持つ光と曇り空が多いのが特徴。その反射効果で他の国と見える景色や美意識も違うだろうということで検証していくんですが、ほとんどストーリーで語られるエンターテインメント性からずいぶん違うアプローチで攻めています。お話自体は理屈っぽくて飽きてしまうけど(笑)、ワンシーンだけ、雲を追いかけたシーンがとてつもなくよかった。この場面を観られただけで満足でしたね。


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プロフィール

タナカカツキ

1966年大阪府生まれ。マンガ家&映像作家。著書に『バカドリル』、『オッス!トン子ちゃん』、映像作品として『SUNDAY』、『virtual drug ALTOVISION』などがある。

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アーティスト情報

タナカカツキ

生年月日1966年10月7日(53歳)
星座てんびん座
出生地大阪府東大阪市

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