プレスコで改めて声優の凄さをお互い実感! 劇場アニメ『BLAME!』櫻井孝宏×宮野真守インタビュー

捨造役・宮野真守と霧亥役・櫻井孝宏(撮影:杉野正和)

捨造役・宮野真守と霧亥役・櫻井孝宏(撮影:杉野正和)

現在も『月刊少年シリウス』(講談社)にて最新作『人形の国』を連載中の漫画家・弐瓶勉。その彼が『アフタヌーン』(講談社)に1997年から2003年に連載していたデビュー作『BLAME!』は、人類が「違法居住者」として駆除・抹殺される暗黒の未来、無限に増殖を続ける超巨大な「階層都市」における探索者・霧亥(キリイ)の孤独で危険な旅路を描いたSF作品。連載開始から20年の時を経て『BLAME!』が劇場アニメ化され、5月20日(土)より2週間限定で全国公開中だ。

今回、本作で霧亥を演じる櫻井孝宏と、霧亥が旅の途中で出会う「電基漁師」が住む村の若者・捨造(すてぞう)を演じる宮野真守に話を聞いた。

>写真をもっと見る

ポリゴン・ピクチュアズは、素晴らしいものを作ってくれるということは分かっていた(櫻井)

まず、この映画を観るにあたり、よくある“原作を読まなくては…”というハードルは存在しない。この映画だけで十分『BLAME!』の世界観が伝わるのだ。そんな本作を通じて、櫻井と宮野が感じ取った面白さは“日本的”な部分もあったという。

櫻井:『BLAME!』は弐瓶先生の世界観が色濃い作品ですし、“SFの王道さ”は感じます。そこに日本人のこだわりや緻密さが加わって、すごく丁寧に描かれていますよね。世界観はハードですけど、温もりを感じたり、一方で冷たい手触り・肌触りもあるという面白さがある作品だなと思いましたね。

宮野:僕はオーディションの時にこの作品を知ったのですが、いただいた資料から世界観やオリジナリティあふれる言葉使いといった魅力をすごく感じていました。(捨造たちのいる)集落の口調がすごく日本的だったりもして、SFでありながらバランス感がすごく面白いと思い、興味を惹かれました。

霧亥(キリイ)/(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

霧亥(キリイ)/(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

本作で用いられた「プレスコ(プレスコアリング)」という手法。先に声優の芝居を録りそこから絵を作っていくもので、櫻井も宮野も『亜人』などで経験済みだが、収録を経て作られた映像には信頼感も驚きもあった。

櫻井:僕らはポリゴン・ピクチュアズさんとは何度も仕事をさせていただいていたので、素晴らしいものを作ってくれるということは絶対に分かっていたんです。目に飛び込んでくる『BLAME!』の世界観というのは、ポリゴンさんの真骨頂だなと言う感じで。人間が隠れ住む巨大な階層都市に登場する霧亥という謎の男。彼は何千階層も下からやってくるんですよ? このスケール感は、僕の想像では追い付けないほど、とにかく果てしないものですし、すごい映像表現だなと思いました。

宮野:『亜人』の時は、会話劇としてのベクトルも強かったので、キャラクターの距離感など、想像しやすかった現場でもありました。この『BLAME!』ではセリフもそんなに多くなく、“行間を楽しむ”感覚もあったので、どういう映像になるんだろう…というのは、すごく興味がありましたね。そして実際見させてもらった時に、櫻井さんが仰っていたスケール感と、さらにスピード感にも圧倒されてしまって。ワクワクしながら見ていましたし、『俺らすごいな~』って単純に感動しました(笑)。あの臨場感…! ものすごいんですよ! 絵が見えていたかのようにセリフに何の違和感もなく、とても絵がない状態でやったとは思えなくて。「あ、ちゃんとこの世界観の中に生きている!」って感じて、プレスコでこうやって作れることはやっぱり凄いことなんだなと改めて感じました。

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

瀬下監督は、僕たちが創り出す“間”をできるだけ採用しようとしてくれる(宮野)

絵のない難しさとは、逆に言えば“芝居を先導することができる”ということ。そうなれば、現場ではより細かなやり取りがあったのではないだろうか?

宮野:瀬下監督は、僕たちが創り出す“間”をできるだけ採用しようとしてくれるというか、それがあるからこそキャラクターの心情や人物像をよりリアルに感じていたんだろうな、という感覚はありましたね。実は(取材前に)櫻井さんがポロっと言ってくれたことがすごく嬉しくて。おやっさん(演:山路和弘)と捨造がじりじり下がりながら、おやっさんが捨造に命令して、それに対して捨造が「へい」って返事をする場面で、「へい」を言うまでの間がすごくいいって。それは僕らの芝居の間をそのまま使って映像にしてくれていたので、必然的な“間”だったと思うんですよね。おやっさんの台詞の後にすぐ返すんじゃなくて。

(左から)づる、おやっさん、捨造/(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

(左から)づる、おやっさん、捨造/(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

櫻井:本当はそうなるんだよね。「油断すんじゃねーぞ」(間を開けずに)「へい」っていうのが多分アニメーション的なセオリーというか、表現なんですけども。この台詞を言うのは捨造たちがピンチの時なんだけど、彼らはそれを経験してるし、打開できるたくましさがある。この状況の中、捨造は警戒心を一切解かない空気感の中で「…へい」って答えるんですけど、ここが単純に言うとカッコよかったですよね(笑)。すごく痺れたし、ここの2人のやりとりは僕は作中でも1、2を争う好きなシーンですね。ここだけ何度も観ましたし、アニメ史に残る「へい」だと(笑)。

宮野:嬉しいですね(笑)

櫻井:本当に素敵で。さっき宮野君にはちょっと話したんですけど、プレスコでは特にト書きが大事で。例えば“逃げる”描写があったとして、「どれくらいの距離を走ろうか?」となった時に、キャストたちが「じゃあ、10秒くらい走って、止まって、振り向いて…」といったようなやりとりをその場でしていくんですよね。時には瀬下監督から細かい状況説明が入りながら。そうやって、いざぴったり息があったときには、(宮野たちの収録を)見ていてすごく気持ちがいいですよね。

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

捨造たち集落の面々とは違い、霧亥というキャラクターはほとんど台詞がないが、勝手の分かる現場だからこそできることもある。

櫻井:霧亥はスタンドアローンというか、他者と交わるような、交わっていないような感じで。なので、僕は出番が終わると収録の様子を結構楽しんで外から見ていましたし、ポリゴンさんの作品に何度も出させていただいているので、勝手が多少わかるんでよね。現場では僕らから提案出来たりもしましたし、初参加の人たちもさほど戸惑うことはなかったと思います。

宮野:こちらから「ここはどういう状況ですか?」といった確認を積極的にできるという感じですかね。役者陣が共通認識できるように、経験者の僕たちが積極的に監督に聞くことで、初めて参加する人にも自然と伝わったというか、多少のイニシアチブは取れたのかなと。あとこれは本当に細かいことになってしまうんですけど、基本、セリフがかぶらないように録るんですよ。その中でも「ここは被ってもいいですか?」と提案をしてみたり、結果「ここでは同じような距離感にいるので大丈夫です」という時もあれば、「被らないでください」という時もあって。より臨場感が出るやり方も、こちらからも提案したりはしましたね。

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

声優界において、世界において、櫻井さんにしかできない技(宮野)

そんな、演技面ではチームワークによる絶妙な空気感による“間”が作られ、スピード感と相まって唯一無二な世界観を演出している本作だが、自身のキャラクターにおける魅力はどんなところにあると考えているのか?

櫻井:霧亥はめちゃくちゃ強い上に、なんなら食料までくれる。けど、とてつもなく怪しいという…この絶妙なブレンドですよね(笑)。意思疎通が明瞭にできるわけでもないんですけど、それでも通じ合える何かがあって…多分いい人なんだろうなと(笑)。村の外で霧亥と接触するづる(演:雨宮天)は、彼を許容するじゃないですか。「づるがそうなら…」と村のみんなが思う部分もあったりするので。でも捨造は、立場も相まって霧亥に対して警戒を解かないですし。そしてストーリーが進むにつれて人間模様も見えてきて、はじめこそ「ネット端末遺伝子を探している」と一点張りだった霧亥が、集落の人たちと関係性が生まれているような行動を取っているように見えるところもあって、そんな部分に心惹かれるものはあるな、と思いますね。あと、霧亥は可愛く見えるところもあるんですよね。シボ(演:花澤香菜)を見つけてガンガンにぶつけたり(笑)、ともするとちょっとコメディぽくも見える…捉え方次第だとは思うんですけど、こういうところで急に人間味のような、温度とか体温を感じましたね。

シボ/(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

シボ/(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

宮野:捨造はこの世界の常識で生まれ育った集落の若者なので、起こることに素直に反応していきましたね。生きていかなきゃいけない、でもいつまで生きていられるかわからない…そんな状況が続いている中で、どんどん仲間も減っていくし、若衆の中ではリーダー的な存在になっていきますし、一方では意中の女の子に想いを寄せるような描写もあって。そこに突然“異分子”が入ってきたので、もちろん警戒はするんですが、生きていくために何が必要か、という判断もしなくてはいけない。物語に身を任せて、彼の人間らしい部分や素直な行動原理を表現していきましたね。

先にも少し触れたように、台詞の少ない霧亥と絡みの多い捨造。もちろんプレスコだということもあるが、果たしてどちらが演じやすいのだろう?

櫻井:多いなら多いなりのプレッシャーや、少ないなら少ないなりの難しさはもちろんありますね。霧亥は口数は少ないんですけど、それでも目で訴えたり、後ろ姿で気持ちめいたものを感じさせたりとか。実際喋っていないところでも喋っているかのような、喋っていない部分にこそ伝えたいことが何かあるんじゃないか? と思わせるような人物だなと僕は思っていたので、そんなに台詞の量は問題ではなかったですね。実は少し長い台詞を喋っていたんですけど、それも「もうちょっとタイトにしましょう」と、どんどんどんどん口数が少なくなっていったので。このキャラクターでべらべら喋られても「え~」って感じするじゃないですか? 世界観とキャラクター性はやっぱり合致しているものなので。

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

宮野:…でもやっぱり素晴らしかった! 櫻井さんが今言ったようにどちらも難しいとは思うんですけど、口数少ない役の難しさは、いざ喋った時の説得力…(役に対して)自分の気持ちが埋まっているかとか、(脚本にない)オフの部分をどれだけ考えていられるか…これができるとできないでは、出てくる言葉の説得力が全く違うと思いますし、この世界観に存在しなきゃいけないのは変わらないので。この存在感は、櫻井さんにしか出せないですよ!

櫻井:そんなことないよ!(笑)

宮野:声優界において、世界において、櫻井さんにしかできない技だなと思いましたね。僕はそう思いながら見させていただいたので、霧亥はやっぱりカッコいい! と。それとやっぱり「ビームいいな」と思いました(笑)。

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

世界観においても、キャラクターにおいてもほとんど説明がない本作でこれほどの盛り上がり。これからが本番…とまだまだ話はつきないところだが、最後に、2人から見どころを語ってもらった。

宮野:僕はこの映画で『BLAME!』という作品に触れることが出来て本当に良かったなと思いましたね。独特な世界観で、最初に資料をいただいた時は「難しいのかな?」って思ってしまったんですが、出来上がった作品はむしろ見やすくて。初見でも全然(話が)入ってくるし、その真ん中に霧亥という超スーパー・ヒーローが居てくれるので、この世界におけるスピード感やスリリングさ、そしてカッコいい映像のド迫力アクションに引き込まれながら、あっという間に見られちゃう作品なので、是非みなさんにも楽しんでいただけたらなと思います。

櫻井:SFってやっぱりちょっと敷居が高いように思われている方が男女問わず多いと思うんですけど、作品の見方みたいなものを指し示してくれていたりする部分で、昨今アニメの功績ってあると思うんですよね。そして宮野君も言ったように、もうお膳立てしてくれているんですよ。映画館に行ってしまえば、後は身を任せていればよくて。内容がわからないことも全然ないですし、話はとてもシンプルだけどちゃんとテーマもあって。(チラシを見ながら)「生き延びろ――」という言葉はなかなか自分の生活に置き換えづらいとは思いますけど、でもここにも確かなメッセージがあって、それは観る人によって感じ方が変わるところだと思うんですね。だから、“2週間限定”というのはすごくもったいないなと思うので、この作品に少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいですし、もし興味を持ってもらえたら誰かを強引に誘ってでも一緒に観て、ああだこうだおしゃべりしてもらえたら素敵だなと思っています。あと「ドルビーアトモス」など、今回特にこだわった映画音響をじっくり楽しんでもらえればなと。


劇場アニメ『BLAME!』
5月20日より2週間限定で全国公開

【キャスト】
霧亥:櫻井孝宏/シボ:花澤香菜/づる:雨宮天/おやっさん:山路和弘/捨造:宮野真守
タエ:洲崎綾/フサタ:島﨑信長/アツジ:梶裕貴/統治局:豊崎愛生/サナカン:早見沙織

【スタッフ】
原作:弐瓶勉『BLAME!』(講談社「アフタヌーン」所載)
総監修:弐瓶勉
監督:瀬下寛之
副監督/CGスーパーバイザー:吉平"Tady"直弘
脚本:村井さだゆき
プロダクションデザイナー:田中直哉
キャラクターデザイナー:森山佑樹
ディレクター・オブ・フォトグラフィー:片塰満則
美術監督:滝口比呂志
色彩設計:野地弘納
音響監督:岩浪美和
音楽:菅野祐悟
主題歌:angela「Calling you」
音楽制作:キングレコードアニメーション
制作:ポリゴン・ピクチュアズ
配給:クロックワークス
製作:東亜重工動画制作局

このタグがついた記事をもっと見る

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

櫻井孝宏

生年月日1974年6月13日(45歳)
星座ふたご座
出生地愛知県岡崎市

櫻井孝宏の関連作品一覧

宮野真守

生年月日1983年6月8日(36歳)
星座ふたご座
出生地埼玉県

宮野真守の関連作品一覧

雨宮天

生年月日1993年8月28日(26歳)
星座おとめ座
出生地東京都

雨宮天の関連作品一覧

関連サイト

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST